「HEMS(ヘムス)とは?」「HEMSについてわかりやすく解説して欲しい」と、思っている方が多そうよね。
「HEMS」と言われても、言葉からは何ができるのかが想像しにくいわね。
HEMSを使ったらどんな生活を実現できるのかしら?
HEMSの仕組みやエネルギー管理システムのメリットが分かるように解説していくので、ぜひ参考にしてください。
HEMSとは?わかりやすく解説
HEMS(ヘムス)は、住宅用のエネルギー管理システムを指す造語で、「Home Energy Management System」の頭文字を取って省略しています。
ここではHEMSがどのようなシステムなのかを、わかりやすく説明します。
エネルギーの管理システム
HEMSは、戸建て住宅で使う電気の管理ができるシステムです。
家庭内のどこでどれだけ電気が使われているかをグラフにしてモニターに表示したり、消費電力が増えすぎたりしないように自動で制御する機能があります。
経済産業省では2030年度以降に新築する全ての建物で、電気の使用量よりも太陽光発電などで作る電気量のほうが多いZEH(ゼッチ)にすることを目標にしています。
ZEH住宅は大手ハウスメーカーや住宅設備機器メーカーで商品開発されており、今後も普及が進んでいくでしょう。
欠かせないスマートメーターとは
スマートメーターはデジタルで電力使用量を測定するための、電力量計です。
もともとはアナログの電力量計が設置されていましたが、大手電力会社がスマートメーターへの交換を進めています。
電力量計をデジタルに変更することで、スマートメーターが電力使用量をデータ送信するようになり、1ヶ月に1回の検針が不要になりました。
各家庭の電力消費に関するデータが把握できるスマートメーターは、HEMSでのエネルギー管理に欠かせないアイテムです。
HEMSができること
HEMSを導入してできるようになることは、エネルギーの管理だけではありません。
どのような機能がHEMSに備わっていて、何ができるのかを紹介していきます。
電気の使用状況を見える化
電気の「見える化」が、HEMSの大きな役割の1つです。
以前まで消費した電力量は、1ヶ月分の合計しか分かりませんでした。
HEMSを設置すると、どの家電製品を使ったときにどれだけの電力を消費しているかが、モニターに表示されます。
使った電気量がリアルタイムに分かるだけで節電意識が高まり、ゲーム感覚で家電の使い方を工夫するようになったというエピソードもあります。
電気代を節約したいご家庭には、HEMSの導入がおすすめです。
スマホによる遠隔操作
HEMSに対応した家電製品と連携していれば、スマートフォンなどのインターネット接続できるデバイスで、外出先から家電を遠隔操作できます。
外出時に家電の電源をオフにしたか急に不安になった場合でも、スマートフォンで家電の利用状況を確認して遠隔操作でき、電気料金の請求額に怯える必要がありません。
遠隔操作で利用したい家電製品がHEMSに対応しているかどうかは、HEMSメーカーがまとめたホワイトリストなどで確認できます。
使用電力の自動制御
家電製品を利用する際に消費する電力量を、自動で制御して最適化する機能がHEMSに備わっています。
エアコンなど200Vのコンセントが必要な家電とほかの機器を同時に使用する際、HEMSの自動制御機能で消費電力が大きくならないようにコントロールできます。
自分でリモコンを操作してエアコンの温度や風量調節をしなくても、HEMSが自動で制御してくれるので、いつの間にか省エネになる点が自動制御の魅力です。
家電の制御・連携
HEMSと家電を連携させて、家電の動作を制御する機能が便利です。
具体的には、以下のように家電をHEMSで制御して活用します。
- 夕方の6時になったらリビングの照明をオンにする
- 室内の温度が27度になったらエアコンを自動運転に切り替える
- 電気料金が安い時間帯になったら、食器洗い乾燥機を動かしたり電気自動車を充電したりする
家電製品自体にタイマー機能が付いていなくても、HEMSと連携して電気料金が安い時間に稼働させれば電気代を削減できます。
また自宅に人がいなくても、夜に自動で明かりが付けば防犯対策になるでしょう。
HEMSのメリット
HEMSを導入するメリットは、電力会社と連携できることや家電製品を効率良く使用できることです。
なぜメリットと言えるのか、それぞれ詳細を説明します。
電力会社と節電の連携を密にできる
HEMSを便利に活用するための電気に関するデータは、電力会社が設置するスマートメーターが計測しています。
日本の全世帯の電力量計がスマートメーターに切り替われば、電力会社は電力消費に関するビックデータを得られます。
スマートメーターから電力会社に送信するデータとビックデータを組み合わせれば、電力消費の傾向を分析して、最適な電気料金プランをAIが診断することも可能になるでしょう。
帰宅に合わせて家電を効率的に使いこなせる
スマートフォンに専用のアプリをインストールしていれば、外出先でも家電を操作できる点がHEMSを利用するメリットです。
帰宅前にスマートフォンで以下のような操作をすれば、家電を効率的に使いこなせます。
- 浴槽に湯はりをする
- エアコンの電源を入れる
夏や冬にエアコンの電源を入れておけば、帰宅後すぐに快適に過ごせますし、帰宅時間に合わせて給湯すれば待ち時間なく入浴できるでしょう。
HEMSのデメリットや注意点
全ての家電製品がHEMS対応の規格ではない点や、費用がかかるなどHEMSにはデメリットもあります。
HEMSの導入にどのようなデメリットがあるか、注意点などを見ていきましょう。
対応家電がまだ少ない
販売されている全ての家電製品を、HEMSと連携できるわけではありません。
HEMSと家電を連携させるためには、「ECHONET Lite(エコーネットライト)」という通信仕様が家電側に必要です。
ECHONET Liteは、物がインターネットに接続するために必要な通信規格を指します。
以下は、HEMSでの利用に対応している機器の例です。
- 電気錠、電動窓、電動シャッター
- 給湯器、床暖房、燃料電池
- 蓄電池、蓄電システム
- テレビドアインターホン
- エアコン、空気清浄機、照明
- カーテン、ブラインド、ロールスクリーン
家電製品の中にはこの通信規格が搭載されていない場合もあるため、HEMSで利用できるか購入前の確認をおすすめします。
費用がかかる
HEMSのデメリットとして、ある程度のコストがかかる点が挙げられます。
以下は、HEMSを導入する際にコストが発生する項目の事例です。
- HEMS本体
- 分電盤
- HEMSに対応している家電
- 施工費
- HEMSシステムの月額利用料
スマートスピーカーと家電を連動させて、より便利にHEMSを使う提案をしているメーカーも多いですが、ネットワークに関する知識がないと設定が難しいです。
ご自身での初期設定が難しく、有料のサービスを利用する場合には追加で費用がかかります。
メーカーによってはHEMSシステムの利用が月額制になっていることもあるため、何にどれくらいの費用がかかるのか購入前にチェックしましょう。
HEMSの導入費用は20万円前後
一般的にHEMSをあとから設置する場合の導入費用は、本体、分電盤、工事費を含めて20万円前後と言われています。
本体の価格も工事費も、メーカーや工務店によって異なるため、実際にかかる費用は見積もりを取得しての確認が必要です。
HEMS対応の家電に買い替えが必要な場合は、さらに費用がかかるでしょう。
HEMSを導入する流れ
HEMSシステムを導入する際は、利用する家電の選定、HEMS本体導入、設置工事、連携のための初期設定というのが全体のおおまかな流れです。
以下では、工程ごとにどのような対応が必要かを説明します。
HEMSで利用する家電を選定・導入
最初にHEMSと連携させて利用したい家電を選定します。
HEMS本体と連携できる家電の個数に制限があり、家電の種類や台数が決まらないと追加部材の要否が分からず、HEMSのシステム構成も決められません。
家電を選定するだけではなく、どの家電をどの部屋で利用するかもこの段階で検討する必要があります。
HEMS本体が導入されるまでの間に、家電を購入しておきましょう。
電力測定ユニットの設置工事
スマートメーターから電力使用量の情報を受け取って一元管理するために、電力測定ユニットを分電盤に設置、またはHEMS対応の分電盤を設置します。
分電盤を設置または交換する工事は電気系統の作業に該当するため、電気工事士の資格所有者がいる業者への依頼が必要です。
既存の分電盤に電力測定ユニットを取り付ける方法は、費用を抑えたい方に向いています。
しかし今後も連携する家電を増やしたいとお考えの場合は、利便性が高いHEMS対応分電盤への交換をおすすめします。
ネットワークへ接続
分電盤、HEMS機器、家電などをインターネットに接続し、連携のための初期設定を行います。
連携させる家電の数が多いと、ネットワークに詳しい方でも数時間〜半日以上かかることもあります。
HEMSと家電の連動は初期設定がうまく進まないケースもあるため、事前に問い合わせ窓口の有無などサポート体制を確認しておきましょう。
万が一のときに問い合わせ先があると、安心です。
使用状況のチェック・管理
各設備のインターネット接続と初期設定が完了したら、最終確認を行いましょう。
設定完了後の確認では、以下のポイントを意識したチェックが必要です。
- HEMSの管理画面で電気の使用状況が確認できるか
- 連携させた家電が問題なく動作するか
- アプリのアカウント情報を控えているか
専用アプリや管理画面からスマートフォンで家電を操作する場合など、最初にアカウントを発行します。
アカウントを忘れないようにメモしておけば、設定を変更する際などに便利です。
HEMSメーカーの代表的な例
複数のメーカーが、HEMS機器を開発しています。
ここでは、代表的なメーカーのHEMSの特徴やできることなどを紹介します。
パナソニック
パナソニックのHEMSは、以下3つのポイントに注目して開発されています。
- 時短・便利
- 安心
- 自家消費
HEMS商品名 | AiSEG2(アイセグツー) |
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家電操作のツール | スマートHEMSサービスアプリ |
HEMSでできること | 家電を声で操作 家電をスマートフォンで操作 家族の帰宅を通知 電気錠の戸締り操作 空気や電気の見える化 家電を自動制御 など |
シャープ
シャープのHEMSには、AIが搭載されています。
AIを天気予報や雷注意報と連携させて、太陽光発電の発電量や蓄電池の充電量を自動的に最適化して停電に備えられる点が特徴です。
令和2年度には、新エネ大賞を受賞しています。
HEMS商品名 | COCORO ENERGY(ココロエナジー) |
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家電操作のツール | COCORO HOME(ココロホーム)アプリ |
HEMSでできること | AI 雷注意報連携 電力の見える化 外出先からスマートフォンで機器操作 見守り機能 |
三菱
三菱電機のHEMS機器は、2023年8月現在全ての機種で受注終了しています。
販売店が在庫を持っている可能性や中古品の購入も考えられるため、代表的なメーカーのHEMSとして紹介します。
HEMS商品名 | 三菱HEMS |
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家電操作のツール | 三菱HEMS専用アプリ |
HEMSでできること | 家電の遠隔操作 リビングの快適な空気を空調が届かない洗面室へシェア 家電のスケジュール運転 外出先から電気錠の施錠 外出先から電動窓シャッターを開閉 家族や室温の見守り 毎月の目標電気代を目指して自動で省エネ |
HEMSのよくある質問
HEMSについて、多くの方が疑問に思われているよくある質問を紹介します。
質問への回答を詳しく見ていきましょう。
太陽光発電とはどう関係する?
HEMSと太陽光発電を連携させると、以下のようなことができます。
- 発電量をHEMSの管理画面で確認できる
- HEMSの自動制御機能で発電量を最適化できる
- 太陽光発電の発電量が少ない状況に合わせて電力消費量を自動で制御する
太陽光発電をHEMSと組み合わせることで、効率良く発電できるように調整したり、発電量に応じて電力消費量を調整したりする作業を自動的にできるようになります。
機器は何がいる?
HEMSの利用に必要な機器は、以下のとおりです。
- スマートメーター
- HEMS本体
- HEMS対応の分電盤または電力測定ユニット
- ルーター
- HEMSと連携する家電
- スマートフォンまたはタブレット
- スマートスピーカー
スマートメーターは大手電力会社が順次機器を交換しているため、交換作業が完了していればHEMSを利用できます。
ルーターはHEMSや家電をインターネットに無線接続するために、必要な機器になります。
スマートスピーカーは家電を音声で操作したい場合のみ、用意が必要です。
補助金はある?
2024年現在、HEMS導入のみに利用できる補助金はありません。
ZEH住宅へのHEMS導入や太陽光発電とのセット導入など、条件付きで政府や地方自体が補助金事業を行っています。
補助金は募集期間が限定的で短いため、HEMSの導入に利用したい場合は常にアンテナを貼っておくようにしましょう。
また予算上限に達したら、募集期間内でも打ち切りになるため手続きに必要な資料を事前に調べておけば、スムーズに申請できます。
HEMSとはわかりやすく言うとエネルギー節約・管理システム
ここまで「HEMSとは?」という疑問について、わかりやすく解説してきました。
HEMSは、戸建て住宅で使う電気を見える化できる「エネルギー管理システム」です。
宅内の家電と連携させてHEMSの自動制御機能を使えば、人が操作しなくても自動的に節電や省エネができます。
電気の使い方を管理しながら便利に生活したいとお考えの方は、HEMSの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。