これまで、昼間よりも電気代が安くなる深夜電力割引サービスを利用して、電気代を抑えていた人は多くいました。
しかし、東京電力の深夜電力割引サービスが廃止され、今後はどうすればいいのかと悩んでいるケースが少なくありません。
深夜電力割引サービスを行っている電力会社への乗り換えや、節電方法などをご紹介します。
深夜電力が廃止する理由
深夜電力割引サービスは、主にオール電化住宅や夜間蓄熱式機器(エコキュート、電気温水器など)を利用しているお客様の電気代が安くなります。
そのため、リフォームや新築のタイミングに合わせてオール電化を導入した家庭の増加とともに、深夜電力割引サービスも急激に加入者数を増やしていました。
しかし、東京電力では2019年3月31日を以て「夜得プラン」を廃止し、現在は深夜電力割引サービスの受付をしてません。
さらに2022年10月以降は深夜料金の価格を改定するなど、現在は夜に電気を使ってもおトクとはいえなくなりました。
そして、それは東京電力に留まらず、東北電力などほかの大手電力会社も同じです。
それでは、続々とナイトプランが廃止される背景には、どのような理由があるのでしょうか。
夜間電力の需要が増加
深夜電力割引サービスは本来、日中との電気使用量の差をなくし、一日の使用量を平準化する目的で作られたものです。
つまり日中に電気を多く使っている人に対して、「深夜帯のほうが安いから」と電気を使う時間帯を分散してもらうのが狙いでした。
ところが、夜間電力を利用して安く給湯するエコキュートの登場により、夜間電力の使用量が大幅に増えました。
2001年に製品化されたエコキュートは、一般社団法人ヒートポンプ・蓄熱センターの調査では2023年には国内累計出荷台数が900万台を突破しています。
そのため、電力会社の当初の予定よりもはるかに多くの夜間電力の使用量となり、割引にかかる負担が増えてしまいました。
太陽光発電が普及
太陽光発電協会(JPEA)の資料によると、2020年における住宅用太陽光発電(10kW未満)の太陽光発電システム導入数(累計)は276万件。日本の10%の世帯に、太陽光発電が設置されています。
太陽光発電の設置はこれまで、FIT制度を利用した売電が主でした。
しかし、近年は電気代高騰を受け、売電ではなく自家消費によって電気代を抑制する動きが出てきました。
昼は太陽光が発電した電気を使えば、電気代は大幅へに減らせます。
一方で、電力会社は買電需要が下がった昼の電気代を値下げし、電気使用量が増えた深夜電力を値上げして収支のバランスをとる必要があり、結果として深夜電力サービスの廃止へとつながっています。
東京電力の深夜電力が廃止!どうすればいい?
東京電力では、サービス終了となった「夜得プラン」の加入者に対し、通知を行って手続きをとるようにお願いしています。
「夜得プラン」終了後の選択肢として、以下の2つがあります。
東京電力の別プランへ移行
東京電力のグループ会社である「PinTでんき」に移行し、「夜得プラン」と同等の電気料金となるプランへの加入を行います。
こちらは、必ず移行手続きが必要であり、手続きを行わないと契約が解除となるので注意してください。
別の電力会社へ切り替え手続き
「PinT」に移行すると、「夜得プラン」と同じ割引が受けられるなら、そのまま移行するのが良いだろうと考える人は多いでしょう。
しかし、せっかくの機会ですから、他社の電力会社の料金プランと比較をして、より安いプランへ切り替えてみるのもおすすめです。
深夜電力プランがある電力会社|関東対応
これまでは電気を使う場合は住んでいる地域の電力会社しか選べませんでしたが、2016年の電力自由化により小売電気事業者に登録された事業者(新電力会社)から、購入ができるようになりました。
東京電力が管轄する関東エリアでも、数多くの新電力会社があります。
以下に、深夜電力割引サービスを新規で受け付けている新電力会社をご紹介しますので、検討時の参考としてご利用ください。
CDエナジーダイレクト
CDエナジーダイレクトは、中部電力と大阪ガスが共同出資して設立した会社。
深夜電力割引サービスを受けたいけれど、よく分からない会社だと不安という方でも安心して加入できる新電力会社です。
CDエナジーダイレクトの深夜電力割引サービス「スマートでんき」は、通常プランと比べて従量料金が安くなります。
30Aの例を表にまとめました。
項目 | 通常プラン | スマートでんきB |
---|---|---|
時間帯 | 24時間 | 午前1時~午前6時 |
基本料金 | 830.70円 | 885.72円 |
従量料金 | 35.59円 | 28.06円 |
このほか、CDエナジーダイレクトでは次のお得サービスも実施しています。
- 「カテエネ」に会員登録すると、電気料金100円につき1ポイントプレゼント
- 家族(2親等以内)がCDエナジ・中部電力・大阪ガスと契約している場合、年間1,200ポイントをプレゼント
- 結婚や進学、新居購入、誕生日などの記念日にポイントをプレゼント
idemitsuでんき
石油精製、電子材料などの販売、開発を行う出光興産が親会社の新電力。
深夜帯の電力料金が安くなるオール電化プランの利用で、大手電力会社よりも電気代が節約できます。
東京在住の場合、東京電力からの乗り換えで基本料金が毎月110円安くなり(10kVA契約の場合)、さらにガソリン・軽油が2円引き(上限給油量は100ℓ/月)、EV車は電気料金を毎月200円割引になります。
また、idemitsuでんきは市場価格調達単価を導入していないため、急激に単価が上がっても電気代に反映されません。
安心して電気を使いたい人におすすめです。
Looopでんき
株式会社Looopが販売するLooopでんきは、2011年の東日本大震災のボランティアで太陽光発電の設置を行ったことをきっかけに設立された新電力会社。
経済産業省が発表した電力需要実績では、新電力で1位を獲得しています。
Looopでんきの家庭向け電気料金「スマートONE(電灯)」は基本料金が0円。
30分ごとに変動する料金単価に、固定料金単価×電力使用量、再生可能エネルギー発電促進賦課金が電気代として請求されます。
「スマートONE(電灯)」は厳密には深夜電力割引サービスではありませんが、電気使用量のピーク時間を避けることでお得に電気を利用できます。
深夜電力の料金が高いときの節電対策
大手電力会社は電気料金の値上げ申請を政府に出しており、もはや電気料金の安いプランへの乗り換えだけでは、高騰し続ける今の状況に上手く対応できません。
電気代を少しでも抑えるには、日ごろから節電意識を持つ必要があるでしょう。
家電の使い方を見直し
資源エネルギー庁の調査では、消費電力量が高い家電はエアコン、冷蔵庫、照明設備の3つであり、これらで全体の5割を占めています。
言い方を変えると、エアコン、冷蔵庫、照明器具の使い方を見直せば、電気代は今よりも安くなる可能性があるということ。
それぞれの節電方法を表にまとめましたので、参考にしてください。
項目 | エアコン | 冷蔵庫 | 照明器具 |
---|---|---|---|
節電方法 |
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家電は通電していると待機電力として消費電力が発生するため、長期間使わないものはコンセントから抜いておくなどの対策もおすすめです。
省エネ家電への買い換え
総務省のホームページには、10年前に購入した冷蔵庫の買い替えで約37~43%も省エネ効果があるとしています。
家電はつい「壊れるまで使い続ける」のがお得に感じてしまいますが、毎日の電気代は新製品のほうがはるかに安くなります。
たとえば炊飯器は主流のマイコンタイプとIHタイプがありますが、IHタイプのほうが効率が良く、かつ電気代が安い機種も。
購入には初期投資が必要ですが、使用年数が10年を超える家電については、一度買い替えを検討してみるのが良いでしょう。
太陽光発電・蓄電池の導入
太陽光発電や蓄電池は初期費用が高いものの、電気代の請求書を見て震える現状を踏まえると、「太陽光発電や蓄電池導入して、電気代に一喜一憂しない生活を手に入れるのもアリなのでは?」と考える人が増えています。
実際に電気代が跳ね上がったときも、太陽光発電を設置していた人は慌てることはありませんでした。
固定価格買取制度における買取価格は年々下がっていますが、余剰電力が売電できる仕組みは今も変わりませんし、蓄電池に貯めて夜間も自家消費できれば電気代を0円に近づけるのも可能です。
また、太陽光発電と蓄電池があると、万が一の災害のときも電気が止まらずに生活ができます。
東京電力の深夜電力が廃止でどうすればいいか迷ったら新電力も検討
東京電力の深夜電力割引サービスの廃止に伴い、他社の深夜電力割引サービスを検討するときは、割引開始が何時からなのか確認してください。
いつから安くなるとお得になるかは、それぞれのライフスタイルによって違うからです。
また、電気料金には、電力使用量(1kWhあたり)によって算出される燃料費調整単価が含まれますが、燃料費は電力会社によって異なります。
新電力会社を選ぶときは、夜の電気代が安いからだけではなく、こうした部分もしっかりと説明をしてくれる担当者が親切でしょう。
複数の電力会社からどこを選べば良いのか迷う場合は、料金比較サイトの利用もおすすめです。必要事項を入力したらクリックするだけで、電気代が安くなる電力会社が分かります。
なお、東京電力のオール電化向けプラン「スマートライフ」は、午前1時~6時までの5時間の電力量料金 (1kWh)が28.06円。
容量や設備状況などに応じて適用プランは東京電力が決定しますが、この点を踏まえた上で新電力会社と比較してみるのが大切です。
金額が変わらないのであれば、そのまま継続して現行の電力会社を利用するのもひとつの方法です。