陸屋根に太陽光発電設備を付けたいんだけど、気をつけることはあるかな?
屋根の強度と費用には気をつけよう!防水の状態やモジュール同士に影をチェックする必要があるよ!
陸屋根とは?太陽光発電との相性を解説
「太陽光発電」という言葉は分かっても、「陸屋根」という言葉には馴染みが無い方がいらっしゃるかもしれません。ここでは、陸屋根が何を表しているのか、太陽光発電との相性は良いか、について解説していきます。
陸屋根の形状
陸屋根(りくやね・ろくやね)は、マンションのように屋根面が平らで屋上利用が可能なフラットな形状を指します。
建築用語では「陸」が水平の意味です。その他、「平屋根(ひらやね)」や「フラット屋根」といった名称でも呼ばれる場合もあります。また、水平が取れていない場合の呼び方は「不陸」です。
陸屋根を採用した建物は、外観がキューブ状のデザインになっていることが特徴で、スタイリッシュな洋風建築に見えるため人気があります。
また、基本的に他の屋根形状とは異なり、屋上部分を有効活用できる点がメリットとして評価されています。このため、屋上を活用した施設やイベントが行われることも多く、陸屋根の建物は利便性が高いと言えるでしょう。
陸屋根と太陽光発電の相性
陸屋根(平屋根)は、地面に対して水平に設置された1面の屋根です。傾斜がないため、ひび割れや劣化が原因で雨漏りが起こりやすい形状とされています。太陽光パネルを設置する際には、防水処理が重要です。
しかし、発電効率の点で考えると、陸屋根は太陽光発電に適した屋根と言えます。傾斜がないため、日光がよく当たる南向きに設置しやすく、発電効率が数%~10%高くなる場合があります。また、真南の方角に30度の角度で太陽電池モジュールを固定することで、最も効率的な発電が可能です。
陸屋根に太陽電池モジュールを設置する方法は特殊ではなく、通常の工事で使用される架台を使って固定します。ただし、傾斜がある屋根に比べて、陸屋根への設置には架台が多く必要となります。そのため、費用は若干高くなるのです。
陸屋根への太陽光発電設置は費用面でデメリットがあるものの、発電効率が高く設置しやすいという利点もあります。このように、陸屋根には太陽光発電設置に関して良い面と悪い面が存在します。
陸屋根に太陽光パネルを設置する工法
陸屋根に太陽光パネルを設置する方法は、1つではありません。近年では、新たな工法も開発されています。ここでは、4種類の工法についてご説明します。
工法名 | 施工方法 |
---|---|
重石工法 | コンクリート製の重いブロックを太陽光発電の下に敷き、金属を取り付けて設置する。耐風対策としても機能する。 |
アンカー工法(基礎工法) | 高度な防水処理が必要。施工業者の選定が重要とされる。 |
置き基礎工法 | 重石でパネルを押さえる。屋根へのダメージが懸念される。 |
ソーラーベース工法 | 屋根に穴を開けないため万能架台とされている。高さが低いため雪や雨、ゴミに弱いところが欠点。 |
重石工法
重石工法は、陸屋根に穴を開けずに太陽光発電を設置する新しい施工法です。
この方法では、コンクリート製のブロックを太陽光発電設備の下に敷き、金属を取り付けて設置します。置くだけと言っても過言ではありませんが、一つのブロックは150kgもあるため、耐風対策としても十分機能するのです。
従来の陸屋根への施工期間が2週間かかっていたのに対し、重石工法では1〜2日で済むため、費用も抑えられるでしょう。
しかしながら、実績が不十分であることや、台風や突風への対応が不安視されています。また、地面と太陽光発電の間にスペースが生じるため、風が舞い込む可能性があります。それでも、これまで陸屋根に太陽光発電を設置できなかった家庭にとっては、1つの選択肢となるでしょう。
アンカー工法(基礎工法)
アンカー工法(基礎工法)は高度な防水処理が必要で、施工業者の選定が重要です。
ちなみに、工法ではありませんが近年は「アンカーレス架台」が開発されています。こちらは基礎不要で雨漏りの心配もなく、陸屋根に適したアンカー不要の架台です。
置き基礎工法
置き基礎工法は重石でパネルを押さえるため、木造住宅のような強度に不安のある屋根の場合、ダメージを受けることが懸念されています。
ソーラーベース工法
ソーラーベース工法は屋根に穴を開けないため万能架台とされていますが、高さが低いため雪や雨、ゴミに弱いところが欠点です。
陸屋根に太陽光パネルを設置するデメリット
一見、発電効率が良さそうな陸屋根への太陽光発電の設置ですが、懸念すべきポイントはあるのでしょうか。ここでは、以下の3つのデメリットをご紹介します。
- 屋根への重りによる負荷が大きい
- 費用が高くなりやすい
- 高温で発電効率が落ちる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
屋根への重りによる負荷が大きい
陸屋根設置において最も懸念されるのは、基礎部分の穴からの浸水や雨漏りです。
雨漏りに対する防水対策として、基礎部分に穴を開けずに済む「置き基礎」を利用した設置方法が増えています。一見すると、雨漏り対策として最適な方法に思えます。
しかし、固定のためにパネルごとに数十キロの重りが必要であり、屋根面や建物にかかる負担が大きくなるため、主に産業用(マンションの屋根等)での採用が多いのです。
この方法では重りを多く付ける割に風圧耐性が低く、設置角度を10度以上にすることが難しい場合があります。設置角度が10度でも発電量に大きな差はないとされていますが、北海道などの一部地域では年間最適設置角度が40度以上になる場合があります。そのため、採算性を知るために事前に条件を確認した上でシミュレーションを行い、慎重に選択することが望ましいです。
費用が高くなりやすい
注意すべき点として、ハウスメーカーの正規店からの提案が挙げられます。
例えばセキスイハイムなど陸屋根商品が多いメーカーでは、純正金具を使った正規施工を推奨しているケースがありました。「正規施工でなければ保証が無効になる」という言い方がされるケースもあります。
確かに正規金具や正規架台は安全性や製品との互換性などに関しては充分に考慮されていますが、見積もりの金額が高くなる傾向があるでしょう。屋根の状況によっては、安価で経験豊富な太陽光施工店が独自のソリューションを提供している場合もあります。住宅の保証が一部無くなることを理解した上で、外部施工店を選ぶ人も中には存在します。
正規店の価格を鵜呑みにせず、2〜3社、できればそれ以上の企業から見積もりを取りましょう。これにより、適切な価格で質の高い太陽光発電システムを導入することが可能になります。
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高温で発電効率が落ちる
ビルや工場の屋根は鉄筋コンクリートでできており、日光が反射して太陽光パネルの裏面が熱くなる場合があります。特に真夏には、非常に高い熱が頻繁に発生するため注意が必要です。
太陽光パネルは、気温が25度を超えると発電効率が低下する特性があります。陸屋根の発電設備は屋上の照り返しなどの影響によって、真夏の発電量が野立て設置に比べて少し低くなる可能性があります。
しかしながら、投資効果を評価する際には1年間の総合的な視点で判断することが重要であり、事前のシミュレーションの正確さが大切です。
太陽光パネル設置の効果を最大限に引き出すためにも、適切な計画と設置方法の検討が求められます。屋根設置型太陽光発電システムの性能向上や効率化を図ることで、より持続可能なエネルギー供給が可能となり、環境への貢献も期待できるでしょう。
陸屋根に太陽光パネルを設置するメリット
陸屋根に太陽光発電設備の導入を検討されている方にとって、最も気になるのはそのメリットでしょう。ここでは、以下の2つのメリットをご紹介します。
- 傾斜がないので工事がしやすい
- 足場が不要でメンテナンス費用が安くなる
それぞれ確認していきましょう。
傾斜がないので工事がしやすい
陸屋根は傾斜がなく平らで安定しているため、作業員が安全に働けます。これにより、段取りが容易で多人数での作業が可能であり、タイトなスケジュールでも短期間での完成が実現できます。
太陽光発電設備を陸屋根に設置する際、造成工事は不要です。初期費用の中で土地の造成費用が大きな割合を占めるため、これにより初期費用の抑制が可能です。
また、屋根面の方位という概念が無く、太陽電池モジュールの架台によっては南向きにも設置できます。最近では切妻屋根型の架台も販売されており、設置の選択肢が広がっています。
足場が不要でメンテナンス費用が安くなる
屋根工事で必須だった足場費用が不要となるため、工事ごとに約15万~20万円の節約が可能です。さらに住人自身が屋根の掃除や簡単な補修を行えます。
また、施工速度が速いことが施工費にも良い方向に影響し、大がかりな基礎工事が不要な場合は、野立ての発電設備と比べて3~4割程度コストが抑えられるでしょう。施工のしやすさと同じく、点検やメンテナンスも容易に行えます。
一般的な陸屋根設置では構造上パネルの高さが低くなり視認性が高くなるため、細かい部分を隅々まで確認できるところが利点です。これらのメリットから、陸屋根は省コストで安全性やメンテナンス性が高く、住人が自ら作業ができるなどの利点があると言えます。
陸屋根に太陽光パネルを設置する注意点
いざ太陽光発電設備を陸屋根に導入しようと考えた場合、注意すべきはあるのでしょうか。ここでは、以下の2つについてご紹介します。
- 防水と排水の状態をチェックする
- モジュール同士で影が発生しないかチェックする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
防水と排水の状態をチェックする
陸屋根には特殊な防水加工が施されており、雨水がコンクリートに浸透しないようになっています。しかし、経年劣化によりその効果は失われるため、特に築年数が長い建物であれば、事前に調査が重要です。また、陸屋根設置時にはパネルが低い位置に設置されるため、後から防水修繕が難しくなることがあります。
パネルが設置されると、屋根を保護し劣化を抑える効果が期待できます。排水設備の点検も忘れずに行い、雨水用の排水口が詰まっていないか、豪雨に対応できるか確認しましょう。陸屋根に溜まった雨水がパネルやケーブルに浸水すると、漏電や感電の事故が起こる可能性があります。
軽量気泡コンクリートパネルのALCボードを使用した陸屋根は、吸水性が高く雨漏りのリスクがあるため注意が必要です。ALCボードに設置する場合、ひび割れなどの劣化状況を確認した上で太陽光発電を設置しましょう。
モジュール同士で影が発生しないかチェックする
斜めの屋根に太陽光発電モジュールを取り付ける場合、屋根の傾斜に合わせて設置されるため、モジュール間の影ができることはあまりありません。しかし、陸屋根の場合、他のモジュールが影響を受けないように、一定の間隔を取って設置することが必要です。
影による影響を考慮しないと、発電量が低下する可能性があります。モジュール同士が近すぎると、一部が影になってしまい、効率的な発電ができなくなります。そのため、設置時には適切な間隔を取ることが大切です。
以上の点を踏まえて陸屋根に太陽光発電を設置することで、環境に優しい持続可能なエネルギー源を活用し、省エネルギー効果やコスト削減に繋げることが可能です。影による影響を適切に考慮し、効率的な太陽光発電システムを構築していきましょう。
陸屋根に太陽光パネルを設置する費用
陸屋根は防水工事やアンカー金具取り付けのための穴あけ工事など基礎工事が増えるため、コストが高くなりがちです。
2017年2月時点で、傾斜屋根の価格相場は28〜34万円程度であるのに対し、陸屋根では架台と基礎工事でキロワット単価が5〜10万円程度高くなることが多いです。
傾斜屋根 | 陸屋根 | |
---|---|---|
価格相場 | 28〜34万円程度 | 35~40万円程度 |
初期費用回収目標年数の目安 | 10年未満 | 10年以上 |
例えば傾斜が0〜5度程度でアンカー固定など、シンプルな内容でも35万円程度かかり、30度の傾斜がある場合、風圧耐性を高めるために40万円前後かかる場合もあります。
通常、太陽光発電の初期費用回収目標は10年未満ですが、陸屋根の場合は10年以上かかる可能性が高いです。
陸屋根は太陽光発電との相性が良い
陸屋根はデメリットもありながら、総合的には太陽光発電との相性は良いとされています。
信頼できる業者を比較検討することで、安心して導入を実現できます。まずは電話やFAX、メールなどで、気軽に相談してみましょう。
陸屋根に太陽光発電設備の導入を検討されている方は、そのメリット・デメリット、注意点や費用などを精査した上で導入を進めましょう。