新築住宅で太陽熱温水器を使うか迷っているので、メリットとデメリットを知りたいな♪
太陽熱温水器は太陽熱でお湯を沸かすためのシンプルな給湯システムだけど、当然ながらメリットだけではなくデメリットもあるわ。
どんなデメリットがあるのかを知らないと、購入した後で後悔してしまいそう。
太陽熱温水器のデメリットを解説していくので、購入を検討されている方は参考にしてくださいね。
太陽熱温水器のデメリット
太陽熱温水器は太陽の熱を利用してお湯を沸かす装置で、光熱費の節約もできる点が魅力ですが、デメリットに感じるポイントもあります。
ここでは太陽熱温水器にどのようなデメリットがあるのか、マイナスに感じる理由を詳しく説明します。
屋根に負担がかかる
太陽熱温水器は住宅の屋根に設置するタイプが主流で、メーカーや貯湯量で差があるものの100~150キロ程度の重量があり、屋根に負荷がかかる点がデメリットです。
屋根の積載荷重が1平方メートルあたり約91キロに対して、貯湯槽が200リットルの太陽熱温水器の場合、1平方メートルあたり約70~80キロの負荷がかかります。
タンクが満水になるとさらに重量が増えるため、屋根の強度など太陽熱温水器の設置に耐えられる構造かを事前に業者に調査してもらいましょう。
シャワーには使えないことが多い
太陽熱温水器の浴槽へのお湯の供給方式によっては、太陽熱で温めたお湯をシャワーに利用できません。
お湯の供給方式の種類によるシャワーの利用可否は、以下の表のとおりです。
温水の供給方式 | シャワーの利用可否 |
---|---|
自然落下式 | 不可 |
水道直結式 | 可能 |
シャワーでも太陽熱温水器のお湯を利用したい場合に、設置する機種を間違えるとシャワーには利用できない可能性がある点がデメリットになります。
どのように太陽熱温水器を利用したいのかを業者に伝えて、希望を叶えられる機器を選ぶのがおすすめです。
季節や天候によって水温が左右される
太陽熱温水器の設置条件や天候、季節によって、できあがるお湯の温度が変わる点もデメリットの1つです。
一般的に言われている、季節での給湯温度の違いを表で比較しました。
季節 | 夏 | 冬(晴天の場合) |
---|---|---|
お湯の温度 | 60~70度前後 | 40~50度前後 |
寒い季節にお湯が40度前後だと熱い風呂が好みの方には物足りず、追い炊きまたは差し湯が必要な可能性があります。
環境に左右されずに温度が高いお湯を確保したい場合は、集熱器が魔法瓶のような造りの真空管タイプの太陽熱温水器を選ぶと良いでしょう。
水漏れのリスクがある
太陽熱温水器設備の経年劣化などが原因で、水漏れ発生の懸念があります。
屋外に製品を設置して、自然環境にさらした状態で太陽熱温水器を利用するため、劣化が早く進むことが予想できます。
特にタンクとホースの接合部に使用するパッキンや、ホース自体に不具合が起きやすいです。
普段よりも水道料金が高い月でほかに思い当たる原因がない場合は、太陽熱温水器から水漏れしている可能性があるため、業者に点検を依頼しましょう。
太陽光発電と面積の奪い合いになる
太陽熱温水器と太陽光発電の両方を自宅に導入する場合、屋根の面積に限りがあるためどちらかが必要な容量を確保できないデメリットがあります。
メーカーによってさまざまですが、太陽光パネル1枚あたり畳1枚分程度の寸法の製品が多いです。
集熱板を利用する太陽熱温水器の場合、タンクの容量に合わせたサイズが必要になり、集熱板だけで3~4平方メートルの面積が必要になります。
屋根への負荷も考慮しながら両方導入するか、どちらかのみにするか検討が必要です。
売電はできない
エコなシステムで給湯器の役割を果たすのが太陽熱温水器の活用方法のため、集熱器があっても発電できず、電気の売電もできません。
太陽光発電のように自家消費や余剰電力を売電したいとお考えの方には、発電の機能がない太陽熱温水器の導入はデメリットが大きいです。
反対に、ガス代や電気代などを削減しながら省エネで効率良くお湯を沸かしたいとご希望の方には、太陽熱温水器の利用が向いていると言えます。
太陽熱温水器のメリット
太陽熱温水器を導入することで得られるメリットは、環境負荷の軽減やコストに関連するものです。
この章では、太陽熱温水器にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
ガス代を削減できる
お湯を沸かすのに必要なガス代の削減に繋がる点が、太陽熱温水器を利用するメリットです。
一般家庭のガス代のうち、約80%が風呂のお湯の給湯に使われています。
東京都に住まいがある4人世帯の1ヶ月あたりのガス代平均は、約8,800円です。太陽熱温水器を導入すれば、月々のガス代を7,000円前後節約できる計算になります。
冬に寒い地域では追い炊きなどが必要な可能性がありますが、単純計算で年間84,000円前後も節約できるのはメリットが大きいと言えるでしょう。
太陽光発電より導入費用が安いケースもある
太陽熱温水器の導入にかかる初期費用は、安価なケースが多い点がメリットです。
家庭用の太陽熱温水器と太陽熱温水器の初期費用の相場を、以下の表にまとめました。
機器 | 初期費用相場 |
---|---|
太陽熱温水器 | 30~60万円 |
太陽光発電(容量4kWの場合) | 約104.4万円 |
高性能なシステムの太陽熱温水器を導入する場合でも、価格は60万円前後です。
一方で、住宅用太陽光発電に多い設置容量は4~5kWで、施工費を含めて100万円以上の費用がかかります。
発電量を増やすためには容量を増やす必要があり、さらに金額が高くなります。
太陽光発電よりも安い費用で導入できる太陽熱温水器は、支出を抑えてエコな生活がしたいとお考えの方におすすめです。
環境にやさしい
太陽熱温水器は二酸化炭素を排出しない給湯システムのため、環境に負荷をかけないメリットがあります。
太陽光発電の電気を動力とせずに利用する給湯器の場合、使う電気が作られるときに温室効果ガスの二酸化炭素が発生している可能性が高いです。
二酸化炭素を排出する電気を使わずに太陽熱のエネルギーだけでお湯を沸かせる太陽熱温水器は、環境にやさしい給湯方法と言えます。
太陽熱温水器の寿命
太陽熱温水器は故障が少なく寿命が長い、と言われています。
ここでは、なぜ太陽熱温水器の寿命が長い理由や、長持ちさせる方法を紹介します。
故障が少なく寿命も長め
太陽熱温水器は適切にメンテナンスをしていれば、故障も少なくて15~20年程度使い続けられる機器です。
以下のような仕組みで複雑な回路が必要な太陽光発電と比較すると、太陽熱温水器はお湯を沸かす機能だけのシンプルな機器になっています。
太陽光発電の仕組み | 太陽熱温水器の仕組み |
---|---|
|
集熱器に太陽熱を集めてお湯を沸かす |
一般的に構造がシンプルな機器は、故障が少なく万が一故障しても修理しやすいため、長持ちすると言われています。
点検と部品交換で長持ちさせよう
太陽熱温水器は定期点検と消耗しやすい部品の交換を意識すれば、長持ちさせられます。
2年に1回を目安に定期点検を業者に依頼して以下の項目を確認し、必要に応じたメンテナンスの実施がおすすめです。
- 太陽熱温水器本体の動作が正常か
- 水漏れが発生していないか
- タンク内の汚れ具合に問題ないか
- 破損している部品がないか
- 架台など施工状態に不具合がないか
給水ホースや、ホースとタンクを接続するゴムパッキンなどが消耗しやすい部品で、長く太陽熱温水器を使うためにはこまめな交換が重要になります。
購入した太陽熱温水器を長く使い続けたいとお考えの方は特に、定期点検と部品交換によるメンテナンスを継続するようにしましょう。
太陽熱温水器とエコキュートの違い
太陽熱温水器と同じようにエコな仕組みで給湯できるエコキュートとの大きな違いは、お湯を沸かす方法です。
電気代やガス代が発生するかなどを含めて、両者の違いを表にまとめました。
比較項目 | 太陽熱温水器 | エコキュート |
---|---|---|
お湯を沸かす方法 | 太陽熱で沸かす | 空気中の熱で沸かす |
お湯を沸かすときの電気代 | かからない | 電気を利用する |
お湯を沸かすときのガス代 | かからない | かからない |
初期費用 | 30~60万円 | 30~70万円 |
お湯を沸かす方法のほか、太陽熱温水ではかからない電気代がエコキュートではかかる点が違っています。
太陽熱温水器の種類
太陽熱温水器の給湯方法には「自然循環・落下式」と「水道直結式」の、2種類あります。
それぞれがどのような仕組みの給湯方法なのか、詳細を見ていきましょう。
自然循環・落下式
自然循環・落下式の太陽熱温水器は、屋根の上に設置した給湯システムでお湯を沸かし、タンクから直接浴槽に給湯します。
浴槽よりも3m以上高い位置に太陽熱温水器を設置しますが、タンクから流れる水の水圧が低いためシャワーの利用には向いていません。
また冬場などお湯の温度が低い場合は、入浴前に追い炊きや差し湯などで水温の調整が必要です。
シンプルな構造のため、本体価格も工事費用も低コストである点が自然循環・落下式の太陽熱温水器を利用するメリットになります。
水道直結式
太陽熱温水器が作ったお湯を給湯器に給湯する方法が、水道直結式です。
給湯器を経由して浴槽にお湯はりするため、追い炊きが不要でシャワーにも太陽熱温水器のお湯を利用できます。
自然循環・落下式の太陽熱温水器と比較すると、構造がやや複雑になるため本体価格や施工費が高めです。
太陽熱温水器のお湯を追い炊きなしで使いたい、シャワーでも利用したいなどとお考えの方には、水道直結式が向いています。
太陽熱温水器をメーカーで比較
太陽熱温水器のメーカー比較を一覧にまとめました。
メーカー | 満水時総質量 | 貯湯量 | 種類 |
---|---|---|---|
長府製作所 | 280㎏ | 200L | 自然循環式 |
ノーリツ | 305kg | 210L | 自然循環式 |
寺田鉄工所 | メーカーにお問い合わせください | 230L | 自然循環式 |
日本エコル | メーカーにお問い合わせください | 240L | 自然循環式 |
コロナ | 306kg | 215L | 自然循環式 |
長府製作所
長府製作所の「エコワイター」は、集熱板を使用してお湯を沸かす自然循環型の太陽熱温水器で、以下の3種類があります。
- 直接加熱/スタンダードタイプ
- 直接加熱/ワイドタイプ
- 間接加熱/水道直結タイプ
太陽の熱を効率良く集め、冬場以外は追い炊き不要でガス代を節約できます。
フロート方式の貯湯タンクで、いつでも一番熱いお湯を取り出せる点が特徴です。
ノーリツ
ノーリツの太陽熱温水器「SJシリーズ」は、集熱器と貯湯タンクが一体型のモデルです。
薄型の集熱パネルを採用しており、屋根との違和感が少なくなるようにデザインされています。
集熱パネルの表面を選択吸収塗装処理しているため、集めた太陽熱を逃さず吸収できて効率良くお湯を沸かせる点が特徴です。
配管を右側に寄せた設計で、少ない手順で施工できます。
寺田鉄工所
寺田鉄工所の「SUNARTH(サナース)」は、真空二重ガラス管を集熱器に採用したタンク一体型の太陽熱温水器です。
真空二重ガラスは、ガラスとガラスの間に真空層と選択吸収膜があります。
真空層があるため断熱効果があり、選択吸収膜が太陽熱を効率良く集めます。
また真空層が持つ断熱効果で外気温に左右されにくく、冬も40度前後のお湯を安定して給湯できる点がポイントです。
日本エコル
日本エコルの「サイフォン」は、真空管でお湯を沸かす自然循環式の太陽熱温水器です。
一般的に真空管表面の塗装は2層か3層が多いですが、日本エコルの真空管は4層に塗装されています。
このため、太陽熱を効率良く吸収できます。
また電熱ヒーターを内蔵しており、自然循環・落下式の太陽熱温水器でも追い炊きが不要な点が特徴です。
コロナ
「コロナスカイヒーター」は、集熱板でお湯を沸かすタイプの自然循環式の太陽熱温水器です。
集熱板の材質に、耐食性を高めたステンレスを採用しているため腐食しにくいです。
また集熱板の表面を選択吸収塗装しているため、太陽熱を逃さず吸収して効率良く給湯できます。
フラットなデザインのタンクで、外観がスッキリしているのも嬉しいポイントです。
太陽熱温水器のよくある質問
太陽熱温水器についての、よくある質問と回答をまとめました。
導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
太陽熱温水器の元が取れるのは何年後?
太陽熱温水器を導入したら何年で元が取れるかは、初期費用と現在のガス代によって異なります。
以下のように条件を仮定して、シミュレーションしてみましょう。
初期費用 | 30万円 |
---|---|
月々のガス代 | 6,000円 |
削減できる月々のガス代 | 4,800円 |
ガス代は8割が風呂への給湯を占めているため、太陽熱温水器を導入すれば年間で57,600円のガス代を削減できる計算です。
月々のガス代が6,000円程度の家庭に初期費用30万円の太陽熱温水器を導入した場合、5年ちょっとで元が取れるシミュレーション結果になりました。
撤去費用は?
太陽熱温水器の撤去費用は、機器のタンク容量や重量、屋根の構造によって変わります。
一般的には、5~10万円が相場と言われていますが、ここに足場代が追加になります。
なるべく費用を抑えて撤去したい場合は、屋根のリフォームと同時に依頼する方法がおすすめです。
冬は使える?
太陽熱温水器を冬場も利用できるかどうかは、地域によります。
屋根の上に設置するケースが多い太陽熱温水器は、風や雪を遮るものがなく寒冷地では給水ホースが凍結して給湯できない可能性があります。
凍結が原因でホースが消耗し、春先にホースから水漏れが起きることも考えられ、寒冷地には導入自体がおすすめできません。
冬季の最高気温が氷点下を下回らない地域であれば、冬場でも晴天の日には40~50度前後のお湯を沸かして利用できます。
補助金は出る?
太陽光発電や蓄電池、エコキュートと比較すると、太陽熱温水器の導入に利用できる補助金は少ないのが現状です。
しかし太陽熱温水器は、工事費を含めても30万円程度で購入できる製品があります。
費用面での負担が少ないので、補助金で支援しなくても普及が進むと国や地方自治体が判断している可能性も考えられます。
庭に設置はアリ?
地上設置型の太陽熱温水器もあるため、広いスペースがあれば庭に設置しての利用も可能です。
集熱器に太陽熱を集められるように、太陽光を遮らない環境であることが地上設置で太陽熱温水器を利用するための前提条件になります。
庭に設置すると障害物があって効率良くお湯を沸かせない場合は、屋根に太陽熱温水器を設置する方向での検討をおすすめします。
太陽熱温水器のデメリットはあるもののガス代削減に有効
ここまで太陽熱温水器を利用するメリットとデメリット、寿命などを解説してきました。
太陽熱温水器には屋根に負荷がかかる、売電できないといったデメリットがあります。
しかし太陽熱のエネルギーを利用してお湯を沸かせる太陽熱温水器は、環境にやさしくガス代の削減にも貢献します。
エコな方法で給湯してガス代を節約したいとお考えの方は、太陽熱温水器の導入を検討されてみてはいかがでしょうか。