最近よくペロブスカイト太陽電池がニースになっているけど、どんな太陽電池なの?
結晶構造をもった化合物の「ペロブスカイト」を使った薄い太陽光パネルのことだよ♪
ペロブスカイト太陽電池は、どうして「次世代太陽電池」なのかしら?
ここからはペロブスカイト太陽電池とは何かや、メリットとデメリットを説明していくわね。
ペロブスカイト太陽電池とは
ペロブスカイト太陽電池は、鉱物のペロブスカイトを原料にした半導体から作られるフィルムタイプの太陽電池です。
現在主流となっているシリコン系太陽光パネルと比較すると、軽く、施工しやすい素材になっています。
このため今までは太陽光パネルを設置できなかった、ビルの外壁や耐積載量がなかった工場の屋根などにも太陽光発電設備を設置できるようになります。
2030年までの温室効果ガス46%削減、2050年までのカーボンニュートラルに向けて、ペロブスカイト太陽電池の実用化に今後ますます期待が高まっていくと予想できるでしょう。
ペロブスカイト太陽電池のデメリット
ペロブスカイト太陽電池を実用化するためには、劣化しやすいなどの課題をクリアする必要があります。
どのような点がペロブスカイト太陽電池のデメリットなのか、詳細を説明します。
劣化しやすい
耐久性が低く劣化しやすい点が、ペロブスカイト太陽電池のデメリットです。
開発され始めた当初、ペロブスカイト太陽電池には光や水に弱い性質があり、寿命も5年程度とシリコン系の太陽電池と比較すると短めでした。
このデメリットを解消するため、屋外ペロブスカイト太陽電池を設置して、耐久性を確認するための曝露(ばくろ)試験が実施されています。
これからの実用化を目指しているペロブスカイト太陽電池のため、耐久性については企業の研究開発で改善されていく見込みです。
光エネルギーの変換効率が高くない
実用化を目指してペロブスカイト太陽電池の開発が開始された当初は、ほかの太陽電池と比較すると発電効率が低いというデメリットがありました。
国立研究開発法人産業技術総合研究所の資料によると、ペロブスカイト太陽電池の発電効率は2019年時点で25%まで向上しています。
複数の波長の太陽光を吸収できるタンデム型ペロブスカイト太陽電池の開発が進めば、発電効率30%以上も実現可能です。
実際に世界中でタンデム型太陽電池が開発されており、サウジアラビアの研究チームがペロブスカイトとシリコンを組み合わせて33.2%の発電効率の開発に成功しています。
日本においてもペロブスカイト太陽電池が実用化される頃には、発電効率が30%を超えているでしょう。
少量ながら鉛が使用される
ペロブスカイト太陽電池は材料に「鉛」が使用されている点が、デメリットです。
鉛はバッテリーの電極に使われる化学物質ですが、土壌汚染や健康被害を引き起こす可能性があり、鉛中毒になると以下のような症状が発生します。
- 胃腸障害
- 腎臓障害
- 神経障害
- 集中力低下
- 記憶力低下など
比較的加工しやすいため、鉛はガソリンや顔料など身近なものに使用されてきましたが、毒性の強さを懸念し、鉛を使用しない製造方法が開発されているのが現状です。
現在は、鉛フリーなペロブスカイト太陽電池の開発が進められています。
ペロブスカイト太陽電池のメリット
軽量で製造コストがかからない点などが、ペロブスカイト太陽電池の特徴です。
ペロブスカイト太陽電池の特徴が、どのようなメリットをもたらすか、詳しく見ていきましょう。
軽量で薄いので設置の幅が広い
ペロブスカイトは小さな結晶の集合体で、発電層の周りに薄膜ができて歪みにも強く、薄さ約1mmと太陽電池の軽量化が実現しています。
シリコン系太陽光パネルは、シリコンが割れやすい性質を持っているため、強化ガラスでの補強が必要です。
従来のパネルは、ある程度の重さと厚みがあるため、設置場所が制限されていました。
シリコン系と比較すると、重さが約1,000分の1になるペロブスカイト太陽電池は、壁面や曲面に取り付け可能で、設置場所の形状を選びません。
設置の幅が広がる点が、ペロブスカイト太陽電池のメリットです。
製造コストが比較的低い
少ない設備とプロセスで製造できるペロブスカイト太陽電池は、製造コストが低いメリットがあります。
ペロブスカイト太陽電池の製造工程はシンプルなシステムで、プラスチックフィルムなどのロールに液状の材料を印刷技術で塗布し、乾燥させるのみです。
製造コストが低ければ、実用化した際にペロブスカイト太陽電池の製品価格が安価になると予想でき、太陽光発電導入のハードルが下がると言えるでしょう。
原材料が不足しにくい
ペロブスカイト太陽電池の主原料はヨウ素で、日本は世界第2位の埋蔵量があります。
CIS系太陽電池に使われている希少金属のレアメタルは、ほとんどを輸入しており価格が変動しやすい点がデメリットです。
ヨウ素は地下500~2,000mの地層に存在し、「地下かん水」と呼ばれる古代の海水に含まれています。
原材料の価格変動や不足の不安がなく、安定供給される点がペロブスカイト太陽電池のメリットです。
ペロブスカイト太陽電池のよくある質問
ペロブスカイト太陽電池はメーカーが研究開発を進めている段階の、次世代の太陽光パネルとして注目されています。
しかし、まだ実用化されていないため、不明点も多いです。
以下ではペロブスカイト太陽電池についてのよくある質問と、その回答をまとめました。
ペロブスカイト太陽電池の発明者は?
ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学(とういんよこはまだいがく)特任教授の宮坂力(みやさかつとむ)さんの研究で、2009年に発明されました。
宮坂力さんは有機無機ペロブスカイトを用いた光エネルギーによる発電技術の研究や、JAXAと宇宙環境に向けたペロブスカイト太陽電池の開発などを推進し、論文も発表されています。
ペロブスカイト太陽電池の特許は取られている?
ペロブスカイト太陽電池発明者の宮坂力さんが大学発ベンチャーで取得したのは国内特許のみで、海外特許は取得していません。
日本でペロブスカイト太陽電池の研究開発を行っている、複数の国内メーカーも特許を申請しています。
経済産業省資源エネルギー庁によると、日本は耐久性に関する特許でリードしている状況です。
しかし中国企業の特許申請数が多く、特許については中国が有利ではないかとの意見もあります。
材料は何?
ペロブスカイト太陽電池の材料は、ヨウ素との化合物であるヨウ化鉛やヨウ化メチルアンモニウムなどです。
レアメタルと呼ばれる希少金属を使用しないため、原材料が比較的入手しやすく原価が抑えられるメリットがあります。
ペロブスカイト太陽電池のデメリットは変換効率の低さ
メーカー各社が量産体制を整えて実用化するべく、2024年現在もペロブスカイト太陽電池の研究開発を進めています。
どれだけエネルギー変換効率を高くできるかは、ペロブスカイト太陽電池開発の課題です。
技術開発が進んでペロブスカイト太陽電池が販売される時期には、大幅に性能が向上し高い変換効率になっていることが期待されます。