太陽光パネルは猛毒って本当?
太陽光パネルには有害物質が含まれているけど、猛毒ではないよ。
猛毒じゃないなら、太陽光発電を設置しても大丈夫だね。
太陽光パネルから有害物質を流出させないように注意したい点もあるから、詳しく解説するね。
太陽光パネルは猛毒なのか?
太陽光パネルには有害物質が含まれていますが、猛毒ということはありません。
では、なぜ太陽光パネルが猛毒と言われているのか、その理由を解説していきます。
太陽光パネルに有害物質が含まれているから
環境省が実施した太陽光パネルの含有試験において、セレン、カドミウム、鉛、アンチモン、銀、ヒ素などの有害物質が検出されたことが発表されています。
台風などの自然災害で太陽光パネルが破損してしまった場合に、これらの有害物質が流出する懸念があるため、太陽光パネルが猛毒と言われています。
万が一、パネルが破損した場合でも、適切に対処すれば有害物質の流出を防ぐことができます。
大量破棄・不法投棄で環境被害が出るから
太陽光パネルの寿命は、一般的に20年~30年です。
2012年の固定価格買取制度開始とともに太陽光発電の設置が急速に広まったため、2032以降の2030年代半ばには大量の太陽光パネルが寿命を迎えることになります。
太陽光パネルは産業廃棄物として処分する必要があり、産業用の太陽光パネルの場合に1kWあたり20,000円前後の廃棄費用が掛かるのです。
廃棄費用の負担を少なくするために太陽光パネルの不法投棄が増えるのではないかと懸念する声もあがっており、2022年7月から10kW以上の発電事業者に対して廃棄費用を積み立てることが義務化されました。
太陽光パネルが破損すると周辺環境に被害が及ぶから
太陽光パネルが台風など何かしらの影響で破損した場合、パネルに含まれている有害物質が付近に流出するのではないか?という懸念があります。
本当に有害物質が流出・拡散してしまった場合は、周辺環境に何かしらの被害が出る可能性は否定できません。
しかし、故障を放置することなく適切に処理すれば、有害物質の流出を防ぐことができます。
周辺環境に被害を出さないように、適切に対策をすることが大切です。
電磁波で健康被害が出ると噂されているから
理論上、太陽光パネルが発電している最中でも電磁波は発生しません。
太陽光パネルで発電した電気は直流電流ですが、直流電流のままでは電気として使用できないため、パワーコンディショナーで交流電流に変換しています。
このパワーコンディショナーから電磁波が発生しますが、家庭で使用している電子レンジなどの発生量と同等くらいと言われています。
電磁波は、発生している場所から離れると影響が弱くなるのでパワーコンディショナーを民家から遠い位置に設置すれば、電磁波の影響は防げます。
反射光などによる住民トラブルが起きているから
反射光とは、太陽光パネル表面のガラスに当たった光が反射して近隣住民宅の窓に反射した光が差し込むことです。
単純に反射光が眩しいのと、反射光の影響で室内の温度が上昇して夏場に熱中症になる危険があり、近隣住民との訴訟問題に発展している事例もあります。
反射光は、日照条件などからある程度予測できるので、事前に業者と相談しながら施工計画を立て、近隣住民の方々にも太陽光発電設置に理解を示してもらえるように配慮していくことも大切です。
太陽光パネルに含まれる有害物質とは
太陽光パネルに含まれていると言われている有害物質には、次のようなものがあります。
- 鉛
- セレン
- カドミウム
- ヒ素
- アンチモン
- 銀
それぞれの特性を説明していきます。
鉛
鉛は価格が安く、素材が柔らかくて加工しやすいことから鉛蓄電池など多くの製品に使用されています。
一方で、体内に蓄積してしまうと、けいれんや昏睡などを引き起こすことがあります。
太陽光パネルでは、結晶系シリコン型のモジュールで使用されている部材の一つに鉛が含まれていることがあります。
現在では鉛を含まない部材の採用が進んでおり、新しく製造されているモジュールでは鉛の含有量が減ってきています。
セレン
セレンは、納豆やオートミール、魚などの食品に含まれている成分の一つです。
しかし、毒性が強く必要量も少ないため過剰摂取すると下痢や脱毛、疲労感などの症状が現れます。
太陽光パネルのセルに採用されている半導体の原料に、セレンが含まれていることがあります。
セレンを含んだ半導体を採用しているメーカーは、限られています。
廃棄をするときは、メーカーに廃棄方法を問合せすることをお勧めします。
カドミウム
イタイイタイ病の原因になった物質がカドミウムです。
土の中などに天然に存在しているため、その土で育つ農作物にカドミウムが蓄積し、食品として体内に入り込む可能性があります。
長期間カドミウムの摂取が続くと、腎臓に蓄積して腎機能に障害を引き起こすと言われています。
カドミウムを原料に含んだ半導体を採用している太陽光パネルもあります。
アメリカ合衆国のファースト・ソーラー社で製造されているソーラーパネルが該当し、同社では太陽光パネル廃棄時は、無償で回収しカドミウムのリサイクルをする取り組みを行っています。
太陽光パネル1枚あたりの処分費用が極めて高額で問題になっているので、国内でもこうした役目を終えた太陽光パネルの無償回収の仕組みが整うと良いですね。
ヒ素
ヒ素には有機態と無機態の2種類あります。
有機態のヒ素は、ひじきなどの海藻に含まれていますが、毒性はほとんどなく体内に摂取しても短時間で対外に排出されます。
無機態のヒ素は毒性が強く、大量に摂取すると発熱や下痢、咳などの症状が現れます。
ヒ素も太陽光パネルのセルの原料として使用されていることがあります。
ヒ素を含んだ太陽光パネルは、変換効率が高いと言われています。
しかし、価格が高く採算が合わないことから、市場にはほとんど出回っていません。
アンチモン
アンチモンを摂取すると、腹痛や下痢、嘔吐などの症状の原因になるでけでなく、最悪の場合に命の危険もあると言われています。
アンチモンは、太陽光モジュールのガラスに多く含まれています。
有害物質を含んだ太陽光パネルのガラスはリサイクルできないと言われていますが、アンチモンの有害物質を無害にしてからリサイクルする技術の開発が進められています。
銀
銀は、食器などにも使用されており、安全性が高い物質と言われています。
銀を含む薬剤などで皮膚が灰青色になる色素沈着の可能性がありますが、銀がその他の健康被害の原因にはならないとされています。
太陽光パネルの電極には、電気の通り道として銀ペーストが使われています。
銀ペーストは精錬することで回収でき、リサイクルされています。
太陽光パネルの有害物質が流出して土壌汚染に繋がる?
太陽光パネルには有害物質が含まれていることを説明してきましたが、これらの有害物質が流出して土壌汚染に繋がる危険性は極めて低いと言えます。
なぜなら、太陽光パネルを構成している部品は頑丈に保護した状態になっているため、パネル表面のガラスが割れた程度で有害物質が流れ出すということが考えにくいからです。
太陽光パネルの破損で一番多い事例も飛来物が当たってガラス表面にひびが入るといった程度で、パネルが半分に折れ曲がってしまうような壊れ方もしません。
太陽光パネルが破損した場合であっても、放置せずに適切な処理を行えば土壌汚染に繋がることはないでしょう。
有害物質を流出させないための取り組み
太陽光パネルから有害物質が流出する可能性が極めて低いと言っても、有害物質を含んでいることも事実ですのでこれらを流出させないための取り組みが必要です。
太陽光パネルから有害物質を流出させない取り組みとして有効な対策には、次のようなことが挙げられます。
- 設置から撤去までの出口戦略を明確化する
- 有害物質を適切に処理するための情報共有
- リサイクル・リユースの輪を広げる
それぞれの詳細を説明していきます。
設置から撤去までの出口戦略を明確化する
太陽光発電投資の事業を始める前に、設置から撤去までの出口戦略を明確にしておくと良いでしょう。
出口戦略とは、事業を終えるタイミングのことです。
太陽光発電の出口戦略としては、「FIT終了後に太陽光発電を撤去または売却」「FIT終了後も太陽光発電を撤去せずに売電を継続または自家消費に切り替える」などの選択肢があります。
どの方法を選択するとしても太陽光発電設備には寿命があるため、どのタイミングで撤去をするのかを決めておけば撤去に掛かる費用を準備しておくことができ、適切な廃棄方法で処分ができます。
有害物質を適切に処理するための情報共有
有害物質を含んでいる太陽光パネルは、産業廃棄物として適切に処理する必要があります。
太陽光パネルの処分が必要な場合は、必ず専門の業者に依頼するようにしましょう。
処分費を節約するために格安で太陽光パネルを回収する事業者に依頼をする場合は、不法投棄をされる可能性が高いです。
事前に口コミなどを確認して、太陽光パネルを適切に処理してくれる業者を選ぶことが環境を守ることに繋がります。
リサイクル・リユースの輪を広げる
太陽光パネルは、ほぼ全ての部材がリサイクルでき、構成している素材ごとに分別または精製して、可能な素材はリユースもできます。
環境省では「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」を策定しており、太陽光パネルのリサイクルやリユース、適切な処分が進められるように取り組んでいます。
しかし、リユースできる素材なのに処分されてしまっている問題などもあり、改善が課題になっています。
ガイドラインではリユースに関するチェックシートなどが用意されており、事業者がチェックシートの内容に従ってリユースを進めていくことでリサイクル・リユースの輪が広がっていくでしょう。
太陽光パネルによる環境破壊
太陽光パネルによる環境破壊について、ニュースで取り上げられているのを一度は見たことがあるのではないでしょうか。
太陽光発電が引き起こしている環境破壊の事例を紹介します。
メガソーラー建設のための森林伐採
メガソーラーは、総発電量が1,000kW以上の太陽光発電システムで、1~2ヘクタールほどの広さの土地が必要です。
日本は、国土面積に対しての太陽光パネル設置率が世界1位と言われており、平地には太陽光パネルを設置できる広い場所が無くなってきています。
このため、新たにメガソーラーを建設す際に森林伐採が行われています。
太陽光以外の再生可能エネルギーを含めて、23,000ヘクタール以上の森林が伐採されているとも言われています。
土砂崩れなどの二次被害
メガソーラー建設のために森林伐採が進んだことで、土砂崩れが発生している事例があります。
森林伐採で木の伐採や抜根を行うと、山の土地の安全性が弱くなり、大雨が降り続く場合などは土砂崩れの原因になります。
大雨などの災害で事故が起きないように、事業者は工事内容をよく検討し、土地の状態に注意を払いながら工事を進めることが重要になっています。
熱海でも実際に土石流が発生し、メガソーラーが原因だと言われたことがありましたが、こちらは太陽光発電が原因ではありませんでした。
大規模発電所による景観破壊
太陽光パネルが設置されたことで景観を破壊しているというトラブルも発生しています。
特に長野県、山梨県、静岡県、三重県での報告が多いと言われています。
太陽光発電は、その設備自体が建築物ではなく、設置を規制する条例などもなかったことからトラブルに発展し話し合いなどが行われています。
景観法が定められている地域では特に景観を壊さないよう、近隣住民にも配慮した対応が必要になります。
太陽光パネルの猛毒は人が作り出す
寿命を迎えた、或いは破損した太陽光パネルは、適切に処分すれば有害物質を流出させることはありません。
しかし、これらの太陽光パネルを適切に処理しなかったり、不法投棄をしたりすると、人や環境にとって猛毒になりえます。
太陽光パネルが猛毒なのではなく、人の行動によって太陽光パネルが猛毒になる可能性があるのです。
どうすれば人や自然環境を有害物質から守りながら、安全に太陽光発電を進められるのかを考えることも発電事業者の役割と言えます。