ペロブスカイト太陽電池を作っている企業は、たくさんあるのかな?
日本でペロブスカイト太陽電池を開発している企業を10社、紹介するわね。
ペロブスカイト太陽電池の開発・関連企業10社
2009年にペロブスカイト太陽電池が発明されて以来、世界中の企業が開発に取り組んでいます。
ここからは、日本でペロブスカイト太陽電池を開発している企業と、関連企業10社を紹介します。
アイシン
株式会社アイシンは、自動車部品やエネルギー・住生活関連製品の製造販売事業を展開している企業です。
2002年頃から、色素が吸収する波長域の光を電気に変換する有機太陽電池の研究開発に取り組んでいました。
現在は2025年に開始予定の実証実験に向けて、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた技術開発を進行させています。
開発後はペロブスカイト太陽電池を世界各地のグループ企業の拠点に設置を想定しており、カーボンニュートラルの実現を目指しています。
NTTデータ
株式会社NTTデータは東京都江東区豊洲に本社があり、電気通信事業をはじめとして情報処理、情報通信に係わる様々な事業を展開している企業です。
以前からカーボンニュートラルを目指し、自社のデータセンターに再生可能エネルギー導入を進めています。
しかし都心のビルには従来のパネル設置が難しく、カーボンニュートラル化の課題になっていました。
同社は2030年度に、全てのデータセンターをカーボンニュートラルにすることを目標としています。
この目標を実現するために、2023年4月から積水化学工業株式会社と共同で、国内初となる建物の外壁にペロブスカイト太陽電池を設置する実証実験を行っています。
エネコートテクノロジーズ
株式会社エネコートテクノロジーズ(以下、エネコートテクノロジーズ)は、京都大学の研究室で行われていた研究を基に起業した、大学発のスタートアップ企業です。
「どこでも電源」というペロブスカイト太陽電池と関連材料の開発から製造、販売まで行っています。
曇りの日や室内照明など弱い光でも、高いエネルギー変換効率で発電する点がどこでも電源最大の特徴です。
設置場所を選ばないだけでなく、天候に左右されないどこでも電源は、環境負荷の軽減に大きく貢献していくでしょう。
積水化学工業
積水化学工業株式会社(以下、積水化学工業)は住まいや社会インフラなどに関する事業のほか、環境・エネルギーに係わる課題を解決するための技術開発にも注力しています。
一般的にペロブスカイト太陽電池は劣化しやすいデメリットを持っていますが、積水化学工業の製品は耐久性に優れている点が特徴です。
また積水化学工業は、複数の事業者とペロブスカイト太陽電池の実証実験を進めており、2030年までに量産体制を整えることを目標にしています。
東芝
株式会社東芝(以下、東芝)は、エネルギーやインフラなど様々な事業を展開している企業で、ペロブスカイトとタンデム型太陽電池両方の開発に力を入れています。
ペロブスカイトは、通常2回に分けて基盤やロールなどに材料を塗布して製造されます。
東芝は1回の材料塗布で、発電効率15.1%のペロブスカイト太陽電池を製造する技術の開発に成功しました。
製造のプロセスを短縮しつつ、大きい面積で品質が良いペロブスカイト太陽電池の製造が可能になります。
トヨタ自動車
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)は自動車の生産・販売を行っている企業です。
車載用ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて、エネコートテクノロジーズと共同開発を2023年6月に開始しました。
電気自動車の屋根などへのペロブスカイト太陽電池搭載を、2030年までに実現することを目指しています。
劣化しやすいペロブスカイト太陽電池が、車の走行による振動を受けても壊れないレベルまでの耐久性向上が課題です。
ニチコン
ニチコン株式会社(以下、ニチコン)は、環境・エネルギーをはじめとするさまざまな分野で電子部品の開発、製造、販売を行っているメーカーです。
エネコートテクノロジーズ、リコー電子デバイス株式会社と共同で、2021年にペロブスカイト太陽電池を電源に活用した電子棚札システムを開発しています。
電子棚札は、小売店舗で商品の値段などを表示する値札を指します。
この技術開発により、電子棚札の電池を交換する費用削減が期待できるでしょう。
日本精化
日本精化株式会社は、精密化学品や工業用化学品などの製造販売事業を行っている企業です。
総産研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)との共同研究で、2022年にペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上させる素材の開発に成功しています。
ペロブスカイト太陽電池を構成している「ホール輸送層」と呼ばれる部分の素材製造時に、添加剤を使用しないことにより耐久性の向上が実現しました。
フジプレアム
フジプレアム株式会社(以下、フジプレアム)は、シリコン系太陽電池やディスプレイに使用する光学フィルムなどを製造している企業です。
京都大学と共同でペロブスカイト太陽電池の開発を行い、フジプレアムは太陽電池に耐久性を持たせるための技術開発を担当していました。
開発は急ピッチで進められ、2021年9月から世界で初めてペロブスカイト太陽電池の量産を開始しています。
ホシデン
ホシデン株式会社は電子・電気機械器具や自動車部品、情報通信機器とその部品など様々な機器を製造、販売している企業です。
ディスプレイを製造する技術を活かしたペロブスカイト太陽電池の開発に、2021年4月から参入しました。
2023年度の後半からは、ペロブスカイト太陽電池の量産を見据えたサンプルの開発を行い、2024年度中の量産開始を目指しています。
ペロブスカイト太陽電池の最新動向
海外でのペロブスカイト太陽電池の開発は、どのような状況なのでしょうか。
以下では、特にペロブスカイト太陽電池の研究開発に力を入れている、イギリス、ポーランド、中国など海外メーカーの最新動向を紹介します。
イギリス|オックスフォードPV
イギリスのオックスフォードPVは、2014年にペロブスカイト・シリコンのタンデム型太陽電池の技術開発に専念しました。
2020年にはペロブスカイト・シリコンのタンデム型太陽電池の光エネルギーへの変換効率で、世界記録にあたる29.52%を達成しています。
オックスフォードPVでは、2022年に住宅用太陽光発電向けのペロブスカイト太陽電池を販売開始しました。
住宅用のペロブスカイト太陽電池としては、世界初のメーカーとなっています。
ポーランド|サウレ・テクノロジー
ポーランドのサウレ・テクノロジーは、2021年にIoT(アイオーティー)機器向けペロブスカイト太陽電池を基板に材料を塗る工法での生産工場を完成させました。
ペロブスカイト太陽電池の商業生産を開始したのは、サウレ・テクノロジーが世界初です。
太陽光だけでなく蛍光灯など人工の光でも発電できる点がサウレ・テクノロジーのペロブスカイト太陽電池の特徴で、今後は車やドローンなどへの搭載も想定されています。
またサウレ・テクノロジーには、観光事業大手の株式会社エイチ・アイ・エスが出資しており、日本とアジアでの販売権を所有しています。
中国|南京大学
中国では2015年頃から多くの企業や大学の研究室が特許を申請するなど、積極的に技術開発を進めています。
イギリスのオックスフォード大学と南京大学が共同開発したタンデム型ペロブスカイト太陽電池は、光エネルギーの変換効率21.7%と高効率化を実現しました。
南京大学では、1辺あたり50cmのモジュールで発電効率を向上させたペロブスカイト太陽電池製造を目指しています。
ペロブスカイト太陽電池は企業が開発・研究を進行中
ここまで、ペロブスカイト太陽電池の開発・研究を進めている国内外の企業やメーカーを紹介してきました。
既に量産体制に入っている企業や、販売開始しているメーカーもあります。
しかし現状では、以下のような段階の企業が多い状況です。
- 実証実験の準備中
- 実証実験で取得したデータを活かし、発電効率や耐久性が向上する技術を検証中
今よりも性能が向上したペロブスカイト太陽電池が実用化されれば、太陽光発電の普及が加速していくと予想できます。