太陽光発電の収入は確定申告しないとどうなるの?
手順や必要な書類について知りたい!
太陽光発電における確定申告の手順
そもそも確定申告とは、1月~12月までの所得が20万円を超えた際に行うものであり、住宅用の太陽光発電は発電容量が10kW未満であることから、売電を行っても確定申告が不要であるケースがほとんどです。
しかし、働き方が多様化した昨今において、投資や副業による利益が20万円を超えていると、売電による収入も含めなければならないため、確定申告を行う必要があります。
確定申告を行わないでいると、無申告が発覚した際に延滞税や無申告加算税といったペナルティーが課せられます。
そのような事態に陥らないよう、太陽光発電における確定申告の手順を確認していきましょう。
必要な書類を準備する
確定申告に必要な書類は、次のとおりです。
書類 | 説明 |
---|---|
確定申告書 | 確定申告をするための書類です。 |
源泉徴収票 | 会社勤めの人は所属会社から発行されます。 |
各種控除関係書類 | 医療費や社会保険料など控除を受ける際に必要な書類です。 |
売電収入が確認できる書類 | 売電によっていくら収入があるのか確認できる書類や預金通帳などです。 |
領収書や請求書 | 設備の設置にかかった経費や請求書です。 |
太陽光発電導入時の売買契約書 | 事業者から発行された売買契約書です。 |
土地の売買または賃貸契約書 | 太陽光発電のために土地を購入または賃貸契約した場合に必要です。 |
太陽光発電設備の保険契約書や領収書 | 太陽光発電設備にかかる保険契約や領収書です。 |
パワーコンディショナーの電気代にかかる納付書 | パワーコンディショナーの電気代にかかった納付書です。 |
用意する書類の数が多く、気が滅入ってしまうかもしれませんが、基本的に太陽光発電で作った電気を売電した際の収入と、必要経費をはじめとする控除を証明できる書類を揃えれば問題ありません。
太陽光発電の確定申告に必要な書類については後述しているので、そちらもチェックしてみてください。
申告書を作成する
必要書類を準備したら、確定申告書の作成を進めていきます。
用紙を用意した人は手書きで行うことになりますが、e-TaxのようにWeb上で手続きを完結させることも可能です。
なお、住宅用の太陽光発電では電気の売買を主目的にしているわけではないため、所得区分は雑所得扱いとなることを覚えておきましょう。
書類に不備がないか再度確認する
確定申告書は、税務署に収入状況を申告する重要な書類であるため、作成を行ったら不備がないか必ず確認を行いましょう。
- 「何を確認すればいいの?」
- 「計算方法は合ってる?」
と悩んでしまう人は、国税庁のホームページに用意されているチェックリストの確認や、税理士に相談することをおすすめします。
不備がなければ申告書を提出する
作成した確定申告書に不備がないことを確認したら、居住地の所轄税務署かWeb上から提出を行います。
直接税務署に持参するもしくは郵送で提出可能ですが、提出期限を過ぎてしまうと無申告課税によって税金が増える可能性があるため、余裕を持ったスケジュールで行動することをおすすめします。
また、提出期限に余裕がない人はe-Taxを使うとスムーズに確定申告が行えるため、積極的に活用していきましょう。
納税する
無事に確定申告書の提出が終わり、金額が確定したら納税を行います。
支払いにおいては振替納税もしくは現金で行うことができるため、都合が良い方法を選択すると良いでしょう。
なお、e-Taxを活用すれば自宅から納付することも可能であるため、こちらも選択肢に入れてみることをおすすめします。
太陽光発電の確定申告のやり方
太陽光発電の確定申告に必要な書類の準備や、確定申告の流れを理解したら実際に確定申告を進めていきましょう。
ここでは、太陽光発電の確定申告のやり方を「手書き申請」と「インターネット申請」それぞれを解説していきます。
手書き申請の場合
手書き申請の場合、住所や氏名といった必須項目の記入からはじまり、収入金額から経費などを差し引いた所得金額を計算を行って、必要項目の記入を進めていきます。
所得税や所得控除の計算を規定に則って行わなければならないため、スムーズかつ計算間違いをしないよう電卓やメモ用紙などを用意しておくことをおすすめします。
申告書第一用表への記入を行っても終了ではなく、第二表で住民税の記入も行わなければならないため、こちらも忘れずに記入を行いましょう。
インターネット申請の場合
インターネット申請(e-Tax)の場合、確定申告が行えるようパソコン環境を整えるところからはじめましょう。
e-Taxにアクセスし、確定申告を選択し必要項目への入力を行っていきます。
パソコン操作に不慣れな人は「難しそう」と不安を感じるかもしれませんが、面倒な計算を自動で行えるほか必要項目への入力が漏れているとアラートが表示されるため、知識がなくても効率よく作成を進めることが可能です。
提出においても税務署への持参や郵送を行わずに済むため、時間が取れない人にもおすすめの方法であるといえるでしょう。
太陽光発電の確定申告に必要な書類
太陽光発電の確定申告を行うためには、多くの書類が必要となります。
ここでは主に必要となる書類について紹介しますが、状況によっては更に書類が増えることもありますが、もちろんその逆もあり得ます。
自身には何が必要な書類なのかを考えながら、読み進めてください。
確定申告書
確定申告書とは、その名のとおり確定申告を行うための書類です。
確定申告書を入手は、税務署や申告相談会場で受け取ることができるほか、WEB上でもダウンロードして取得することが可能です。
また、e-Taxを使えばWebのみで完結することも可能です。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、1年間の収入と納付した所得税額を記載されている書類のことで、サラリーマンの場合は所属企業から発行されます。
給与所得や支払っている税金が一目でわかるため、確定申告書の記入がスムーズに行えます。
一般的に、前年の源泉徴収票は1月に発行されるため、紛失しないようしっかりと管理しましょう。
控除に関する書類
医療費や各種保険料など、控除の対象となる費用の金額が記載された書類です。
会社員として働いている場合には、年末調整にてこれらを申告しているため、確定申告で控除することはできません。
フリーランスをはじめ、個人で年末調整を行う人は忘れず申告するようにしましょう。
売電収入が記載された通帳か電力会社が発行する「購入電力量のお知らせ」
確定申告をする際、収入がどれだけあったのかを確認する必要があります。
太陽光発電の場合、売電収入が対象となるため金額が記載された預金通帳や、電力会社が発行する「購入電力量のお知らせ」を用意しましょう。
預金通帳の場合、売電やその他副業用のものと生活用でわけておくと、金額の把握がしやすいためおすすめです。
領収書や請求書など発生した経費が証明できるもの
確定申告では、所得から経費を差し引いた金額に対して税金が発生します。
太陽光発電の場合、設置費用やメンテナンス費用などが経費の対象となるため、領収書や請求書は大切に保管しておきましょう。
経費の金額によっては年間所得が20万円以下となり、結果として税金の支払いを免れられる可能性もあります。
太陽光発電の売買契約書
先の経費同様、太陽光発電の売買契約書や請求書も所得から差し引くことができるため、必要書類として用意しておきましょう。
基本的に太陽光発電設備の導入は高額であり、一般住宅の初年度においては売電による確定申告は不要となります。
もちろんフリーランスや副業などで高額所得がある場合には確定申告をしなければなりませんが、太陽光発電設備の売買契約書や請求書は大きく役立つことでしょう。
土地売買契約書か賃貸契約書
太陽光発電設備を導入するために、土地を購入したり賃貸契約をしたりした場合には、土地売買契約書や賃貸契約書の用意も必要です。
基本的に太陽光発電のみでは住宅ローン控除の対象にはなりませんが、条件を満たすことで控除対象にすることが可能です。
新築購入や所有する建物を改築する際には、こうした条件を満たすことで経済的なメリットが得られるため必ず確認するようにしましょう。
太陽光発電に関する保険の契約書・領収書
太陽光発電に関する保険も控除対象となるため、契約書や領収書の準備をしましょう。
基本的に医療保険と同様に保険会社から書類が送付されてくるため、そちらを保管しておけば問題ありません。
パワーコンディショナーの電気代に係わる納付書
フリーランス(個人事業主)をはじめ、在宅で仕事をしている人が電気代を経費として申告できるのと同じく、太陽光発電による売電収入においても電気代を経費として申告できます。
具体的にパワーコンディショナーの電気代に係わる納付書が該当するため、こちらも確定申告を行う際には準備しておきましょう。
申告書の提出方法
作成した確定申告書はどのようにして提出すればいいのでしょうか。
基本的に提出方法は「直接提出」「郵送」「e-Taxの利用」の3つがあります。
ここでは、それぞれの方法について解説します。
税務署まで書類を持って行く
作成した確定申告書を居住地の管轄税務署に直接持って行く方法です。
目の前で受理されるため安心感がある方法ではありますが、確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日と定められているため、非常に混雑されることから余裕を持った予定を立てるようにしましょう。
なお、税務署には時間外収受箱が設置されており、開庁時間はもちろん、平日や土日・祝日関係なく提出することが可能であるため、時短を図りたい人はこちらを活用するのもおすすめです。
不明点があれば、事前に管轄の税務署へ電話で確認しておくと良いでしょう。
郵送する
確定申告書の提出は、直接税務署に持参せず郵送でも提出することが可能です。
郵送するにあたり特段ルールは設けられていませんが、先にも触れたように確定申告には提出期間が設けられているため、到着が遅れないよう余裕を持って投函するようにしましょう。
e-Taxを利用する
税務署に直接持って行く時間がない人や、郵送の手間を省きたい人はe-Taxの利用がおすすめです。
こちらはWeb上で完結するため、気軽かつ効率よく確定申告を進めることができます。
また、計算やチェック項目の確認も合わせて行えるほか、入力に誤りがあっても簡単に修正が可能です。
DXが推進されている昨今において、今後はより一層主流となってくるため苦手意識がある人は早めに克服するようにしましょう。
太陽光発電の確定申告における所得の判断基準
太陽光発電の確定申告における所得の判断基準はどのようになっているのでしょうか。
ここでは、余剰売電と全量売電について解説します。
余剰売電
10kW未満の住宅用太陽光発電において、自宅で使いきれなかった電気を売ることを「余剰売電」といい、所得区分は雑所得扱いとなります。
多くの場合がこちらに該当しますが、個人事業主で店舗に設置して余剰分を売電した場合には事業所得、賃貸物件の屋根に太陽光発電システムを設置して余剰電力を売電した場合には不動所得になるため注意が必要です。
全量売電
全量売電とは、文字どおり太陽光発電で作られた電気をすべて販売することを指します。
所得区分は、事業所得もしくは雑所得に分類されますが、事業所得とするには「フェンス等の設置」「貸借した土地に設置」など条件に当てはまる必要があります。
ただし、2022年度は低圧容量の10~50kw未満は余剰売電となったことから、一般的な住宅で該当することはまずないといえるでしょう。
個人事業主なら青色申告が節税効果が高い?
確定申告には、個人事業主となって申告する「青色申告書」と個人で申告する「白色申告書」の2種類があり、それぞれ節税効果が違います。
具体的には、毎年一定の額または割合を経費にすることができる減価償却費によって所得税に差が出ます。
ここでは、青色申告書と白色申告書それぞれで確定申告をした場合について確認していきましょう。
青色申告書で確定申告した場合
青色申告書を提出するためには、まず税務署に開業届を提出しなければいけません。
開業届と聞くとハードルが高く感じられますが、個人事業主やフリーランスとして「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得があれば青色申告が可能です。
例えばフリーランスとしてWebライターやエンジニアなどで収入を得ていれば、それは事業所得に該当するので青色申告ができるということです。
青色申告書で確定申告ができるようになると、先にも触れた減価償却費において白色申告書よりもお得に確定申告ができるようになります。
減価償却には「定額法」と「定率法」の2種類がありますが、太陽光発電は耐用年数17年と定められており、青色申告書では定額法が採用されることから17年間経費計上することが可能になるのです。
また、青色申告書の場合には青色特別控除という控除額が発生するのも魅力のひとつです。
これらによって年間にして数千~数万円、耐用年数17年分として考えると数十万円の差額が発生します。
太陽光発電は長期的な運用が見込まれるため、青色申告書の方が断然お得であるといえるでしょう。
白色申告書で確定申告した場合
開業届を出さず、個人として確定申告を行う場合には白色申告書を提出することになります。
青色申告書のように特別控除があるわけではなく、割高で税金を支払うことになります。
具体的に、青色申告書の場合「売電収益-減価償却費-青色特別控除」で算出された所得額に所得税率を掛けるのに対し、白色申告書の場合には「売電収益-減価償却費」で算出された所得額に所得税率を掛けることになるため、所得税が高くなるのです。
青色申告書で確定申告するためには、事業所得や不動産所得、山林所得のいずれかの所得を得る必要がありますが、節税対策に大きな差がつくことは明らかであるといえるでしょう。
青色申告のやり方
青色申告の方が節税対策として大きな恩恵を得られることを解説しましたが、何をすれば青色申告ができるようになるのでしょうか。
ここでは、青色申告をするための要点を解説します。
個人開業届けの提出
「事業所得」「不動産所得」「山林所得」のいずれかの所得を得ている人で、税務署に個人開業届を提出する必要があります。
フリーランスや副業で事業所得がある人、物件の貸出で不動産所得がある人などであれば問題ありません。
副業といっても、株の売買は譲渡所得、配当金であれば配当所得となるため、自身が行っている副業の所得区分が何に該当しているのか確認は必要です。
なお、会社員であっても開業届は提出することができ、これによって会社にバレることはないため安心しましょう。
所得税の青色申告承認申請書
開業届とは別に、所得税の青色申告承認申請書も所轄の税務署に提出する必要があります。
いくら開業届を提出していても、こちらの青色申告承認申請書を提出していなければ白色申告で確定申告することになるため注意が必要です。
青色申告で確定申告を行う年の3月15日までに税務署に提出しなければならないため、スケジュールに余裕を持って行動するようにしましょう。
太陽光発電の確定申告は難しくない
確定申告は、その年の収入が20万円以上であった場合に行わなければならない申告であり、太陽光発電による売電も例外ではありません。
基本的に一般住宅の家庭における売電単体では所得が20万円を超えることはないため確定申告は不要ですが、その他副業を行っていた場合には、そちらの所得と合算するため注意が必要です。
20万円以上の所得があるにもかかわらず確定申告をしないでいると、無申告加算税をはじめペナルティを受けるため必ず申告するようにしましょう。
これまで確定申告をしたことが無い人にとって、売電収入や経費・所得の計算はやや面倒に感じてしまいますが、e-TaxのようにWeb上で完結させることもできるため、確定申告自体は一度経験してしまえば難しいものではありません。
また、節税対策をすることによって太陽光発電をお得に運用することもできるため、設備導入を検討している人はぜひ参考にしてみてください。