両親から太陽光発電をもらったんだけど、名義変更をどうすれば分からないよ!
太陽光発電を名義変更しないとどうなる?
太陽光発電(ソーラーパネル)は、ベランダや納屋のような家屋の付属物ではありません。
土地や建物に登記簿があるように、太陽光発電システムも資産として登記されています。仮に太陽光発電付きの一軒家を購入したとしても、住宅や土地とは別に太陽光パネルの名義変更をしないと、太陽光発電システムは自分のものにはなりません。
ほかにも、名義変更をしないと下記のようなデメリットが発生します。
- 相続・生前贈与対象とならない
- 太陽光発電が自分のものにならない
- 電力会社へ電力を売れない
- メーカー保証が受けられない
- 太陽光発電の売買ができない
ひとつずつ確認していきましょう。
相続・生前贈与対象とならない
太陽光発電を相続・生前贈与の対象とすることはできません。
太陽光発電は固定資産であり、相続や生前贈与の対象となる財産(例えば家や車など)とは異なるためです。
太陽光発電が自分のものにならない
当然ながら、太陽光発電の名義変更を行っていなければ、太陽光発電は自分の所有物にはなりません。いくら設置している土地の持ち主だからと言っても、太陽光発電は太陽光発電で、きちんと名義変更を行う必要があります。
電力会社へ電力を売れない
太陽光発電が生み出した電力は、太陽光発電発電の所有者でなければ売電することができず、収益を受け取ることもできません。
売電は行わず自家消費のみで利用する場合でも、やはり電力会社との契約周りで問題が発生します。
メーカー保証が受けられない
太陽光発電システムは、所有者によって定期的にメンテナンスや修理が必要です。
しかし、太陽光発電システムの所有権が変更された場合、メーカーは保証対象として認識しない場合があります。
太陽光発電の売買ができない
太陽光発電自体を別の第三者に売買したいとなったとしても、名義変更を行っていなければ売買を行うことはできません。
なぜなら、名義変更を行うまでは太陽光発電は前所有者の持ち物であり、あなたの所有物だと法律では認められないためです。
太陽光発電の名義変更に必要な書類
太陽光発電システムの名義変更には、多くの書類が必要となります。必要書類は状況や提出先によって異なりますので、シーン別に見ていきましょう。
電力会社との売電契約
売電収入を元の持ち主から自分に変更するための書類です。
- 口座振替依頼書
- 電力受給契約申込書
- 太陽光発電の設置住所
- 前所有者の氏名
売電契約は前の持ち主と電力会社の契約です。変更するための新規電力需給契約申込書と自分の口座振替依頼書や設置場所住所、全契約者氏名が必要です。
譲渡による事業契約変更名義変更
太陽光発電を売買して入手した際などに必要な書類は、下記のとおりです。
- 譲渡証明書
- 譲渡受領者の住民票(写し)
- 住民票記載事項証明書もしくは戸籍謄本(原本)
- 譲渡受領者の印鑑証明
- 土地登記簿謄本
- 不動産売買契約書
相続による名義変更
相続により太陽光発電を引き継ぐ場合には、下記の書類が必要になります。
- 被相続人の戸除籍謄本と附票
- 各法定相続人の戸籍謄本(原本)
- 各法定相続人の印鑑証明書
- 遺産分割協議書あるいは全相続人の同意書など
太陽光発電の名義変更は代行業者と司法書士のどっちに依頼する?
太陽光発電の名義変更を自身で行うのは書類の準備等、かなりの手間がかかるため、司法書士もしくは代行業者のいずれかに依頼するケースが一般的です。
司法書士と代行業者の違いは、下記のとおり。
依頼先 | 特徴 |
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司法書士 | 法律に関する専門知識を持っていて、正確な名義変更手続きを行うことができる。 |
代行業者 | 多くの業務経験を持っていて、名義変更をスムーズに行うことができる。 |
どちらを選択するかは、個人のニーズや予算に応じて決定することができます。
名義変更に関するトラブルを未然に防ぐためにも、正確かつ迅速な手続きを行いたいと考えるなら、司法書士や代行業者への依頼を検討してください。
太陽光発電の名義変更を自分で申請する方法
司法書士に依頼するにしても代行業者に依頼するにしても、もちろん費用がかかります。
少しでも経費を抑えたい場合は、自分で申請することを視野に入れてみましょう。申請方法自体は簡単で、太陽光発電の規模によってはネットだけで終了します。
発電出力50kW未満
容量が50kW未満の場合は、インターネットだけで申請することができます。
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STEP1電子申請ページへアクセス再生可能エネルギー電子申請ページを開きます。
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STEP2新所有者のユーザー登録電子申請マイページの新規登録をクリックして新所有者のユーザー情報を入力し、登録を行います。
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STEP3旧所有者でログイン今度は旧所有者にマイページにログインしてもらい、マイページに記載の譲渡手続きの指示に従って手続きを進めてもらいます。
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STEP4必要書類を添付登録あらかじめ必要書類をPDFかZIP形式に変換しておき、添付して登録を完了します。
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STEP5旧所有者の承認旧所有者へ名義変更のメールが届くので、内容を確認してもらい承認を頂きます。
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STEP6名義変更が完了旧所有者の承認後、申請代行業者が地方自治体の経済産業局へ名義変更します。
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インターネットが使えない方や、電子申請が苦手な方は、用紙での申請も可能です。
再生可能エネルギー電子申請のページから認定申請書をダウンロードして必要情報を記入したら、必要書類とともにJPEA代行申請センターへ郵送すれば完了です。
送付先住所は、下記のとおり。
東京都港区西新橋2丁目23番1号3東洋海事ビル2階
JPEA代行申請センター
切手を貼った返信用封筒を同封が必須となっておりますので、忘れずに同封しましょう。
発電出力50kW以上
50kW以上の規模の太陽光発電は、ネット申請での名義変更ができません。郵送での名義変更手続きが必要です。
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STEP1申請書類のダウンロード再生可能エネルギー電子申請ページから認定申請書をダウンロードします。
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STEP2書類に必要情報を記入
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STEP3経済産業局へ郵送記入済み申請書類と必要書類、切手を貼った返信用封筒を同封し、発電設備の設置場所の都道府県庁にある経済産業局へ郵送します。
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インターネットが使えない方は、切手を貼った返信用封筒に「太陽光発電システム名義変更申請書希望」と書いて、下記まで郵送すると申請書を返送してくれます。
太陽光発電の名義変更はどのタイミングでする?
太陽光発電の名義変更が必要なシーンは、いくつか存在します。
- 相続
- 生前贈与
- 住宅物件の購入や売却
それぞれの項目を分かりやすく解説していきますので、事前に知っておきましょう。
相続
太陽光発電を設置している住宅の所有者が亡くなった場合、相続人が住宅の登記者となります。同時に太陽光発電事業者としても名義変更が必要です。一般的に住宅と太陽光発電は同じ名義人になります。
生前贈与
両親や祖父母が老人ホームに居を移すことになり、住んでいた家を子供が生前贈与を受けるケースがあります。家屋に太陽光発電が設置されているなら、名義変更が必要です。
太陽光発電からの売電だけでなく、自家消費をするための蓄電池を追加する場合も、国へ申請手続きが必要です。このタイミングで、親が子供に家屋共に生前贈与するケースもあります。
住宅物件の購入や売却
太陽光発電を設置している中古住宅を購入したり、売却する際にも、住宅と一緒に太陽光発電の名義変更が必要です。
この場合、不動産業者が名義変更申請を代行あるいはアドバイスすることが多いのですが、土地・建物・太陽光発電の3つの名義変更は書類も多くなり、それなりに時間も手間もかかります。
太陽光発電の名義変更にはどんな種類がある?
太陽光発電の名義変更は、実は1種類だけではありません。主なものだけでも3種類、さらにその変更の種類によって必要書類がたくさんあります。自動車や家の名義変更より数倍の書類の量になります。
事業計画認定(旧設備認定)
太陽光発電は、経済産業省からの認可事業です。前所有者から新しい所有者に変更して認可をいただかないと、発電事業そのものができなくなってしまいます。
事業計画認定は、生前贈与を含む事業譲渡か、相続による変更かで必要書類が変わります。
事業譲渡
事業譲渡には契約書や、新所有者の個人・法人の証明等の書類が必要です。生前贈与も同様です。
必要書類は、新所有者が個人か法人かで必要書類が変わります。
対象 | 新所有者の必要書類 | 前所有者の必要書類 |
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個人 |
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※破産による譲渡の場合、裁判所による破産管財人証明書 |
法人 |
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※破産による譲渡の場合、裁判所による破産管財人証明書 |
例外 | 前所有者か新所有者が地方自治体の場合は、譲渡契約書か譲渡証明書のほかに公印規定が必要 |
離婚による分与
離婚して財産分与し、太陽光発電の所有者が変わった場合は、下記の書類が必要です。
- 事後変更届出
- 所有権移転登記済の登記簿謄本(原本)
- 公正証書か離婚協議書
- 双方の印鑑証明書(原本)
- 離婚届受理証明書
戸籍上の氏名変更
結婚や養子縁組などで所有者の性が変わった場合も、下記の書類での届け出が必要です。
- 事後変更届出
- 戸籍謄本(抄本)原本
- 印鑑証明書(原本)
相続
太陽光発電の相続は、遺産相続と同じぐらい書類が必要です。親が亡くなった場合、子供たち法定相続人全員に関する書類が必要なので手間がかかります。
相続に関する名義変更の必要書類は、下記のとおり。
亡くなった人の除籍謄本原本、附票(本籍を定めた以降の住民票の移動履歴)を含む。
- 法廷相続人全員の戸籍謄本(原本)もしくは法務局発行の法定相続情報(原本)
- 法廷相続人全員の印鑑証明書(原本)
- 遺産分割協議書もしくは相続人全員の同意書
売電契約
新所有者の口座に売電収入が振り込まれる変更をするため、名義変更が必要です。必要書類は電力会社で異なりますが、東京電力の場合の必要書類を紹介します。
- 口座振り込み依頼書
- 電力受給契約申込書(低圧)
いずれも東京電力のホームページからダウンロードできます。
名義変更の申請は、売電契約をしている電力会社に申請します。必要な情報は、太陽光発電を設置した住所と、前所有者(設置者)の氏名の2つ。
電力会社へは「太陽光発電の名義変更」と電話で伝えれば、後は担当者の指示に従って進めることが可能です。
土地登記簿
太陽光発電システムは、建物の付属物としては認められていません。そのため、建物の屋根に設置されていても、太陽光発電がある土地の登記が必要となります。所有者が変わった場合は、建物同様土地登記簿の名義変更が必要となります。
相続登記による名義変更で必要な書類は、下記です。
- 亡くなった人の戸籍謄本・除籍謄本、住民票の除票
- 相続人(新所有者)の戸籍謄本、住民票
- 登記申請書
申請先は、土地所有者と法務局になります。手続きの流れは、下記のとおり。
- 登記簿謄本取得
- 戸籍謄本取得
- 住民票、評価証明書取得
- 登記関係書類など必要書類作成
- 必要書類に署名と捺印
- 管轄法務局へ登記申請書と添付書類提出して申請
土地登記簿の名義変更は、まさに建物や土地の売買手続きと同じです。不動産業者や司法書士、太陽光発電設置業者などに代行依頼を行うのが便利です。
太陽光発電のメーカー保証
太陽光発電は導入時にシステムや出力を10年から20年のメーカー保障がついています。名義変更すれば、設置時からの保証が継続されます。
メーカーによって必要書類が異なりますが、基本名義変更依頼書とこれまでのメーカー保証書を用意して、各メーカーに問い合わせしましょう。
太陽光発電の施工保証
太陽光発電のセル故障、架台の取り付けなど、設置業者が施工保障をしています。
太陽光発電の譲渡を受け名義変更をした場合は、設置した当時の施工業者に保証を継承できるかどうか問い合わせましょう。そのまま保証が使えれば安心です。
メンテンスに関する契約
忘れがちなのが、メンテナンス契約の継承です。
メンテナンス契約は所有者と業者が交わしているので、所有者が変わった場合、当然ながら契約も終了します。
新所有者は、前所有者が契約を交わしたメンテナンス業者と新たな契約を結ぶ必要があります。前所有者はメンテナンス契約を解約をしましょう。
損害保険
損害保険も引き継ぎたい場合は、そちらの名義変更も忘れてはいけません。
保険の種類によっては引き継ぎ対応を承諾してもらえないケースもありますが、今はもう加入することができない保険もあるため、安易に諦めず、必ず保険会社に連絡して引き継ぎの受付が可能か確認しましょう。
固定資産税(償却資産税)
太陽光発電設備は、減価償却資産です。
所有者の固定資産税(償却資産税)の名義変更が必要です。設置場所の地方自治体で手続きします。
太陽光発電設備の容量が10kW未満の場合、申請を必要としないケースもありますが、事業として運用をしている場合は申請が必要です。10kW以上でも必要になります。
補助金
太陽光発電を設置の際、国や地方自治体から補助金をもらっていた場合も、法定耐用年数17年以内に所有者が変更した場合は国・自治体への申請が必要です。
相続の場合は「補助事業者名義変更申請」、売買の場合は「財産処分承認申請」の手続きになります。
該当する補助金の引き継ぎには再審査がかかるケースもありますが、あなたにとって価値ある権利は、たとえ引き継ぎが面倒でも手続きを行っておきましょう。
太陽光発電の名義変更の注意事項
太陽光発電の名義変更には、いくつか気をつけるべきポイントが存在します。
- 売電価格と期間は継続される
- 名義変更完了まで時間を要する場合がある
- 贈与税や相続税が発生する可能性がある
- 土地登記簿の認定確認をする
知っているのと知らないのとでは大きく損益が変わってくる可能性がありますので、必ずそれぞれ覚えておきましょう。
売電価格と期間は継続される
太陽光発電を名義変更して引き継ぐメリットは、前所有者が契約した時期の売電価格がそのまま適用されることです。
以前は1kwあたり30円~20円台でしたが、2024年現在は売電価格が10円台にまで下がっています。
しかし、太陽光発電を前所有者から名義変更した場合は、FIT(固定価格買取制度)にて売電契約をした20年間は売電価格は変わりません。
これは非常に大きなメリットですが、ここで注意点があります。
それは新所有者に名義変更された時点から、新たに20年の契約を結ぶことはできないということ。例えば前所有者が最初にFIT契約してから15年後に名義変更をした場合、新所有者には5年間の固定価格での買取契約が残ることになります。
名義変更完了まで時間を要する場合がある
太陽光発電の名義変更には、数多くの提出書類があります。
それだけの書類を役所が受け付けて確認するには、かなり時間がかかることを覚悟しましょう。
また、誤字が一つでもあると役所から訂正依頼書が郵送され、申請者が修正して郵送、さらに確認。これだけでも数週間かかると思ってください。
提出書類の完成度が高くても、短くて3か月、下手すると半年かかるケースも珍しくありません。
名義変更が済まないと、売電収入が得られません。
太陽光発電の名義変更は、早目に着手することが肝心です。
贈与税や相続税が発生する可能性がある
太陽光発電設備は、資産です。相続・贈与で所有する場合、減価償却価格によって相続税または贈与税がかかります。
再生利用エネルギーを推進する国の制度として、「緑の贈与」と呼ばれる優遇税制度があります。
祖父母から子、孫に名義変更する場合、贈与税最大3000万円が非課税となります。基礎控除の110万円と加えると、3110万円になります。
土地登記簿の認定確認をする
一般的な感覚として、建物の屋根部分に設置されている太陽光発電に土地登記簿の名義変更は必要はなさそうですが、建物も太陽光発電も同じ土地にある資産です。太陽光発電の土地登記簿名義変更で紹介しましたが、登記設定が確実に変更されているか、確認が必要です。
土地の譲渡は済んでいても、下記変更が済んでいるか確認しておきましょう。
- 地上権設定
- 抵当権設定
- 賃借権設定
太陽光発電の名義変更をしたら確定申告はどうなる?
年間20万円以上、太陽光発電から売電収入がある場合は、確定申告が必要です。対象となるのは、売電契約がある電力会社と契約を交わしている名義人になります。
例えば世帯収入の節税を狙って、「夫の扶養者として無収入の妻」が売電収入を得ることにした場合も、電力会社との売電契約の名義人は夫から妻に変更する必要があります。
投資目的で太陽光発電事業を行う場合、年間売電収入は20万円を超えるので確定申告は必要になります。
太陽光発電の名義変更は代行依頼するのことが一般的
名義変更を行った上で太陽光発電事を始めようとした場合、必要書類の取得や複雑な手続きにどうしても時間がかかってしまいます。
太陽光発電の名義変更の経験がある人は限られており、書類の不備、差し戻しなど思ったより時間がかかるのは予想していないことでしょう。サラリーマンなど、ほかに重要な仕事を持っている方には、大変なストレスになりかねません。
特に太陽光発電の事業計画の名義変更に加え、不動産、相続、事業譲渡など法制に則った書類作成など素人がやっても時間がかかるだけ。
これらの名義変更は司法書士が得意な分野でもありますが、太陽光発電専門で名義変更の経験がある代行業者に依頼するのもおすすめです。
代行費用がかかるとは言え、確実にオーナーになるための必要経費だと割り切りましょう。