太陽光パネルは現代社会に欠かせない電気を生み出す重要なシステムであり、その心臓部を担う太陽電池には様々な種類が存在します。
単結晶と多結晶太陽電池は、その特性により品質や効率などで大きな差が見られますが、それぞれにどのような特徴があり、ソーラーパネルの性能にどのように影響するのでしょうか。
本記事では、単結晶と多結晶の違いから始まり、それぞれの材料が太陽電池としてどのように機能し、どのようなメリット・デメリットがあるのか紹介します
単結晶と多結晶のソーラーパネルの違い
単結晶と多結晶を比較するためには、下記の3つの視点で比較を行うと理解が進みやすいです。
- 発電効率の違い
- 価格の違い
- 劣化率の違い
- 利用シーンの違い
表にまとめると、下記のとおり。
種類 | 発電効率 | 価格 | 20年後の劣化率 | 利用シーン |
---|---|---|---|---|
単結晶 | 20%前後 | 高い | 84.2% | 住宅用が多い |
多結晶 | 15%前後 | 安い | 88.4% | 産業用が多い |
それぞれの項目をひとつずつ詳しく見ていきましょう。
発電効率の違い
種類 | 発電効率 |
---|---|
単結晶 | 20%前後 |
多結晶 | 15%前後 |
単純な発電効率を比較すると、単結晶のソーラーパネルのほうが発電効率が高くなっています。
単結晶パネルが多結晶パネルよりも発電効率が高い理由は、単結晶パネルはより純粋なシリコンを使用しているためです。この純粋なシリコンは、より多くの太陽光を吸収し、エネルギーに変換することができます。
しかしながら、多結晶パネルは単結晶パネルよりもコストが安いメリットがあります。
価格の違い
種類 | 価格 |
---|---|
単結晶 | 高い |
多結晶 | 安い |
多結晶のソーラーパネルは、単結晶のソーラーパネルよりも作りが簡単なため、製造コストが安くなります。結果的に、多結晶ソーラーパネルの価格は単結晶ソーラーパネルよりも安い傾向にあります。
しかし、発電効率は単結晶ソーラーパネルのほうが高いため、長期的には単結晶ソーラーパネルのほうが費用対効果が高いケースが多いのも事実。
価格だけでなく、使用環境や必要な発電量なども考慮して、最適なソーラーパネルを選ぶことが大切です。
\Amazonギフト券200円分プレゼント/
寿命(劣化率)の違い
種類 | 劣化率 | ||
---|---|---|---|
5年後 | 10年後 | 20年後 | |
単結晶 | 96.40% | 92.20% | 84.20% |
多結晶 | 97.40% | 94.30% | 88.40% |
アモルファスシリコン | 94.30% | 87.60% | 75.70% |
CIS/CIGS | 98.50% | 92.50% | 81.40% |
ヘテロ接合(HIT) | 98% | 95.60% | 90.80% |
利用シーンの違い
種類 | よく用いられる利用シーン |
---|---|
単結晶 | 住宅用太陽光発電 |
多結晶 | 産業用太陽光発電 |
住宅用の太陽光発電では、設置費用をできる限り抑えて、発電効率が高いパネルを選ぶことが大切です。
そのため、発電効率が高い単結晶が選択されるケースが極めて多くなっています。
一方、産業用の太陽光発電では設置する面積が大きく、長期的に発電を行うことが求められます。そのためには耐久性も高いパネルが必要となっているため、多結晶のソーラーパネルが利用されることが多くなっています。
このように、住宅用と産業用で使われるソーラーパネルは異なります。
ソーラーパネルは多結晶よりも単結晶を選ぶべき?
ソーラーパネル選びは、エコな生活のための重要な一歩です。
単結晶と多結晶という2種類のシリコンパネルがあり、どちらを選ぶべきか迷っている人も多いことでしょう。
パネルの単価や効率などの違いを理解し、ご自宅に合ったパネル選びにお役立てください。
発電効率は単結晶シリコンのほうが高い
単結晶と多結晶の両方に長所がありますが、発電効率の面だけを見ると、単結晶のソーラーパネルに分配が上がります。
一般的に単結晶シリコンは耐久性も発電効率も高く、太陽光から効率良く電力を生み出します。一方、多結晶シリコンは設置コストが低く、大規模な面積でたくさんのパネルを設置できます。
一般家庭用の太陽電池は単結晶シリコンが主流
しかし、設置費用と売電で得られるメリットのコストパフォーマンスも非常に重要な要素。
そのため、家庭用の太陽光発電には単結晶シリコンが、産業用の太陽光発電には多結晶シリコンが使われることが多いです。
太陽電池の種類 | 一般的な利用用途 |
---|---|
単結晶シリコン | 家庭用 |
多結晶シリコン | 産業用 |
家庭用なら単結晶シリコンから選ぶのがおすすめ
近年は開発技術が進化していますので、今後は単結晶シリコンがより低価格になり、多結晶シリコンがより耐久性が高く、発電効率も高くなると予想されています。
ご家庭の屋根などで使う太陽光パネルであれば、基本的には単結晶シリコンを選んでおけば間違いありません。
ただ、最終的には自分にとってのコスパの良い太陽光発電を選ぶことが大切です。
単結晶と多結晶のソーラーパネルの特徴
単結晶と多結晶のソーラーパネル選び決めかねている方は、それぞれの特徴を確認しましょう。
ソーラーパネルの価格も年々安くなっていますので、まずは価格を抜きにして検討すると良いです。
単結晶ソーラーパネルの特徴
単結晶ソーラーパネルはシリコン結晶の純度が高いので、発電効率がとても良く20%前後ほどのものが多くなり、面積が狭いところでもある程度の発電量が見込まれるため、住宅用の太陽光発電に使用されることが多く人気があります。
さらに曇りの日や朝晩の低日照時間帯での発電効率も、多結晶より高くなります。
単結晶ソーラーパネルはパネルの表面の色むらがなく黒っぽい色味をしているので、屋根の色や景観に合いやすいモダンな印象になります。
ですが、製造工程が多く多結晶よりも価格が高いというデメリットもあります。
多結晶ソーラーパネルの特徴
多結晶ソーラーパネルは単結晶インゴットの削り屑を使用しておりシリコン密度が低くいため、単結晶ソーラーパネルよりも発電効率は高くありません。
その発電効率は15%前後で単結晶ソーラーパネルよりも効率が悪いですが、多結晶ソーラーパネルは価格と性能のバランスが良いことから産業用太陽光発電では人気があります。
さらに原料をほぼ捨てずに製造されるので無駄がなく、その結果価格が単結晶よりも安くなります。
多結晶ソーラーパネルの見た目は青みを帯びた色合いで、シリコン結晶が単結晶よりも低いのでまだら模様になっています。
産業用の太陽光発電では価格が高くないこともあり、特に人気となっています。
製造工程から見る単結晶と多結晶の違い
単結晶・多結晶ともにシリコン系のソーラーパネルですが、製造工程には大きな違いがあり、結果的にそれが発電効率やコストにも影響しています。
種類 | 特徴 |
---|---|
単結晶 | 規則正しく並んでいるので発電効率が高い |
多結晶 | 規則正しく並んでいないので発電効率が低い |
シリコン系のソーラーパネルの原料は、ケイ石という鉱石。ケイ石にはケイ素(Si=シリコン)が含まれており、このケイ石を加工し溶かしてから冷やし、インゴットと呼ばれる塊を作ります。
その塊を切り出した物をウェーハと呼び、ソーラーパネルを構成するセルの元になります。
単結晶のインゴットを切り出す際に削り屑ができ、その屑を溶かして鋳型に入れ固めたものが多結晶シリコンとなります。
こうした工程を経て作られることで、単結晶は多結晶より純度が高くなります。
単結晶と多結晶以外のシリコン系ソーラーパネル
シリコン系ソーラーパネルでは単結晶と多結晶が圧倒的に知名度が高いですが、実はほかにも下記のような種類があります。
- アモルファスシリコン
- HIT(ヘテロ接合)
- 微結晶シリコン
それぞれに特徴があるので、見ていきましょう。
アモルファスシリコン
アモルファスシリコンとは、一般的な単結晶や多結晶とは異なり、一見ランダムな原子配列をしています。そのため、弱い光でも吸収しやすい特徴があります。
また、薄膜化が可能であるため、住宅屋根やソーラーカーポートに設置する際の見た目もスマートになります。
HIT(ヘテロ接合)
HIT(ヘテロ接合)とは、結晶シリコンとアモルファスシリコンを結合したものを指し、一般的な単結晶・多結晶よりも発電効率が高いと言われています。
また、高温下や曇天時でも安定した発電量を確保することができるため、発電効率の面で高い支持を得ています。大手メーカーであるパナソニックは、このHITシリコンに注目し、「HITシリーズ」の開発・発売に成功しました。
微結晶シリコン
微結晶シリコンは、多結晶シリコンよりも発電効率が高いとされています。
比較的少ない面積で多くの電力を生産することが可能でありながら、長寿命と低メンテナンス性も兼ね備えている点が魅力のシリコン系ソーラーパネル。
微結晶シリコンを用いたソーラーパネルは、家庭用から商業用に至るまで、多様なニーズに対応できるとして評価されています。
ソーラーパネル選びは素材ではなく費用対効果で考えよう
ソーラーパネルは、住宅用から産業用まで多様な用途に利用されています。
その中で、単結晶と多結晶という2つのシリコン系のソーラーパネルの素材がありましたが、実際に使用する際には費用対効果が最も重要な要素となります。
つまり「単結晶シリコンが良い」や「多結晶シリコンが良い」といった、ソーラーパネルの種類にこだわった固定的な見方をする必要はないということ。
費用や目的に応じて、使用する素材を選ぶことが大切なのです。