パナソニックが開発した革新的な施工方法であるPS工法。これは一体どのような技術なのでしょうか。
- 従来の工法とどう違うのか?
- PS工法で設置してもデメリットはないのか?
など、PS工法の魅力と特徴を分かりやすくご紹介します。
PS工法とは?
PS工法(Precast Segmental Method) とは、パナソニックが2015年に採用した、HIT太陽光太陽光パネルを固定する方法を指します。
事前に製造された部品を現場で組み合わせて太陽光発電パネルを設置することにより、効率的な建設と高い品質を実現するものです。
PS工法の「PS」とは?
PS工法の「PS」は、プッシュ&スライドという意味です。
PS工法の施工方法
PS工法を用いた太陽光発電システムは、一般的な工法よりも高い耐久性、信頼性、維持管理のしやすさをもつとされています。
PS工法の設置は簡単で、事前に敷いてあるレールにプッシュしてはめ込んでからスライドして位置調整をします。
引用:スマートジャパン
レールにプッシュして太陽光パネルをはめ込むことは理解しても、従来型と何が違うのか分からない人も多いことでしょう。
次の章では、これまでの太陽光パネルの設置と比較して何がどう違うのか、ご紹介していきます。
PS工法と従来工法との違い
PS工法を知るには、従来工法との違いで比較すると分かりやすいです。従来工法とPS工法の違いは、下記のとおりです。
- 太陽光パネル間の隙間が小さくなる
- 設置にかかる時間が短くなる
- 設置者の経験の差が出にくい
- 施工時に太陽光パネルの上に乗らずに施工できる
- より大きな太陽光パネルを設置できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
太陽光パネル間の隙間が小さくなる
従来工法では太陽光パネルを設置する際に金具やネジを使用するため、どうしても太陽光パネル間にある程度の隙間が必要になります。
それに対してPS工法は、取り付け金具を改良し狭小化することに成功し、レールにプッシュしてスライドさせて固定するので電動工具が必要なく、その分のスペースも不要となります。
この違いはかなり大きくて、従来工法では太陽光パネル間の隙間が約27㎜、PS工法は約7㎜と約20㎜もの隙間の差が出ます。
太陽光パネル間の隙間が違うと何が違うのか?と疑問を持つ方もいることでしょう。
従来工法では約27㎜もの隙間ができてしまうので、その隙間を埋めるためにカバーを取り付けますが、PS工法は約7㎜と狭い隙間になるので、太陽光パネル間カバーが必要なく美しい外観が実現します。
設置にかかる時間が短くなる
従来工法では、太陽光パネルの固定にネジなどの金具が必要です。金具を使うには電動工具が必要になりますが、PS工法ははめ込み式なので必要ありません。
つまり工程がひとつ減りますので、全体的に施工時間が短縮でき、設置する技術者の技量の良し悪しに影響されずに安定した施工ができます。
- 従来工法でスレート屋根
- 太陽光パネル3列で4段
- 格子配置12枚
上記の太陽光パネルを設置する条件でどれくらい時間が短縮できるのか、下記の表にまとめてみました。
工法の種類 | 施工にかかる時間 |
---|---|
従来工法 | 4時間55分 |
PS工法 | 2時間7分 |
2時間48分も施工時間が短縮したことが分かりますね。
設置者の経験の差が出にくい
太陽光発電は、設置する技術者によっては発電効率・寿命が変わることがあります。
設置に慣れた方だと上手に設置できるので寿命も発電効率も長くなりますが、設置に不慣れな方の場合、太陽光パネルに歪みを生じさせることがあり、下記のような原因となります。
- 寿命が短くなる
- 劣化が進みやすくなる
- 発電量の低下につながる
上記のような理由から、経験が浅い施工者に設置を担当されると、依頼者が損をしてしまう可能性がありますが、PS工法はレールに太陽光パネ雨をはめ込むだけの施工方法のため、設置する技術者の技量に左右されません。
つまり誰が施工しても、正しい設置が行われるということです。
施工時に太陽光パネルの上に乗らずに施工できる
太陽光パネルの設置は、屋根の下側(軒先の方)から始め、1段目を設置し2段目3段目と取り掛かります。
従来工法では、パネルを固定する時に下側(軒先の方)から金具を締め付けます。そうなると2段目以降は下の段に固定したパネルの上に乗る可能性が高くなり、4段もの太陽光パネルを設置となると、どうしても太陽光パネルの上に乗らないといけません。
太陽光パネルの上には乗っても良い場所が決まっていますが、傾斜のある屋根の上ということもあり、バランスを崩してうっかりと足を載せてはいけない場所に乗ってしまう可能性もあります。
うっかりパネルの上に乗ってしまっても表面のガラスは割れませんが、見えない場所にある「セル」がパリパリ割れる可能性があります。
引用:SoRA
もしも仮に太陽光パネルに乗って割れてしまっても、実は何の問題もなく太陽光発電は電力を生み出し続けます。
それなら問題ないと思ってしまいますが、そのまま月日が流れると、数年後に上に乗った場所には目に見て分かるヒビが現れ、そのヒビがその後の太陽光発電の発電低下に繋がってしまいます。
ちなみに、太陽光発電のヒビは「スネイルトレイル」と呼び、「スネイル」=「カタツムリ」、「トレイル」=「這った後」、つまりカタツムリが通った後のようになります。
従来工法だと太陽光パネルの上に乗ってしまう可能性があることに対し、PS工法は乗らなくても設置できるため、発電低下のリスクを減らすことが可能です。
より大きな太陽光パネルを設置できる
従来工法とPS工法を比較すると、設置できる太陽光パネルの大きさも変わってきます。
PS工法のほうが大きい太陽光パネルを設置できるので、屋根が対応しているのであれば、PS工法を採用したほうがリターンが大きくなります。
PS工法のデメリット
一見するとメリットが多そうに見えるPS工法ですが、実は下記のようなデメリットも存在します。
- PS工法を採用できないことがある
- 価格が高くなる
後悔しないように、ひとつずつ確認していきましょう。
PS工法を採用できないことがある
パナソニックのHITを設置する際はPS工法が一般的ではありますが、場合によっては利用できないこともあります。
太陽光パネルを選ぶ際には発電効率が高く、1kWあたりの価格が安いモデルを選びたい人が大半かと思いますが、欲しいモデルがPS工法に対応しているとは限りません。
価格が高くなる
PS工法は、部材の価格が従来工法に比べて高いです。
利用者にとってはなるべくコストを抑えたいと思いますが、金額だけで決めると数年後の未来の結果が変わってきます。
とはいえ、従来工法は部材自体が安いかもしれませんが、PS工法は設置時間が大幅に短縮できるので、人件費が節約できます。その結果、施工金額が安い業者も存在しますので、施工業者によっても大きく見積価格に差が出ます。
複数社にいくつかのパターンで見積もりを出してもらい、金額差の理由などをよく吟味したうえで結論を出しましょう。
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PS工法のメリット
PS工法には、従来型の太陽光パネルにはない、下記のようなメリットが存在します。
- 美しい外観を保てる
- 安定した施工が実施される
- 施工不良のリスクが低い
- 売電収入が大きくなる
- 施工時間が短縮される
それぞれ設置者にとって魅力ある内容となっていますので、ひとつずつ見ていきましょう。
美しい外観を保てる
太陽光パネル間のスペースを縮小化し、太陽光パネル間カバーを使わずに施工が行えるため、住宅の外観を壊しません。太陽光パネルは住宅屋根に広範囲で設置するものですので、どうしても目立ちます。
そんな中でPS工法を用いて施工を行うか、それとも従来工法で施工を行うかで、建物の見た目は大きく異なってくるでしょう。
建物の外観をどうしても維持したいという人は、ソーラーカーポートという選択肢もあります。
安定した施工が実施される
PS工法は、設置する技術者の技量に影響されず安定した施工ができため、設置者による技術の差が出にくい仕様です。
その結果、誰が設置しても安定した出力が期待でき、設置後に早々に壊れるなどのトラブルに見舞われる可能性も低いと言えるでしょう。
施工不良のリスクが低い
施工が簡単なことに加え、太陽光パネルの上に乗らず設置できるため、設置後の施工不良による発電低下のリスクや、早期劣化による破損リスクを減らすことができます。
売電収入が大きくなる
PS工法で設置すると、従来型よりも大きな太陽光パネルを設置できるので、売電のリターンも当然ながら大きくなります。
設置する太陽光パネルが1枚増えるだけで、年間で大きく発電量に差が出ます。
施工時間が短縮される
PS工法は、レールに太陽光パネルをはめ込むことで固定するので、施工時間が大幅に短縮できます。施主や近隣住民にとっては、施工時間は短ければ短いほどストレスが掛かりませんので、施工時間の短さもPS工法の魅力のひとつです。
パナソニックにPS工法は価値が高い施工方法
PS工法とは、パナソニックが開発した太陽光パネルを固定する工法のことでした。
価格が高くなるといったデメリットが存在するものの、それを差し引いても魅力あるメリットが充実した設置方法です。
パナソニック独自の技術ですので、他メーカーの太陽光パネルを選択する方はPS工法を選べませんが、どこのメーカーにもそれぞれメリット・デメリットがありますので、比較検討してみるといいでしょう。