電力自由化はデメリットなし!電力会社の選択肢が広がるし、価格競争で電気代が安くなるしで、ユーザーにとってはメリットだらけよね。
ちょっと待って、電力自由化のデメリットを把握せずに新電力と契約してしまうと、安くならないだけじゃなく高額請求が来る可能性もあるの。電力自由化の問題点やトラブル事例、誤解しやすいポイントを解説するから、一緒に見ていこう!
電力自由化のデメリット
電力「自由」化という言葉から受けるのは、ネガティブよりも圧倒的にポジティブなイメージのため、電力自由化は消費者によって安心できる制度でデメリットがないと捉えてしまう人がいます。
しかし、言葉のイメージだけで新規参入の新電力会社に契約を変更してしまうと、「安くならずに意味ない」とガッカリするだけではなく、「むしろ高くなった」と損をしてしまう可能性があります。
重要なのは、顧客側は言葉のイメージに惑わされず、電力自由化のデメリットや注意点を理解すること。一度冷静になって、本当に得をするのか見極めていきましょう。
オール電化向けプランは安くなるとは限らない
火を使わないオール電化はクリーンで安全、しかも省エネ効果が期待できるとして、2000年代序盤から普及し始めました。
経済産業省の資料によると、2015年の時点でオール電化の普及率は全国で10.8%。民間の調査会社では新築住宅におけるオール電化の普及率は30%と拡大しており、持ち家一戸建ての20%強が今やオール電化とされます。
そのため、「電力自由化によって、既存の大手電力会社よりも安いプランを提示する新電力会社が登場したのだから、上手く活用すれば今よりももっと電気代が安くなるはず」との期待を持つ人が多くいます。
しかし、新電力会社のオール電化向けのプランに変更して電気代が安くなる可能性があるのは、東日本大震災後にオール電化向けのプランに加入した場合。
東日本大震災前のオール電化向けのプランは今よりもかなり安いため、新電力会社のオール電化向けのプランに変更してしまうと、むしろ電気代が値上がりする可能性が高いです。
また、オール電化向けの料金プランは深夜の時間帯の電気料金が安くなる代わりに、日中の電気代は割高となります。夫婦共稼ぎで平日は夜しか在宅していないなどのケースを除いて、料金が安くならないので注意しましょう。
電力会社のホームページにはシミュレーションがあるので、迂闊に新電力会社へ変更するのではなく、まずはシミュレーションで本当に電気代が安くなるのか確認してください。
料金が高騰する場合がある
大手電力会社が採用している従量電灯プランは、固定の単価に対して電気の使用量を乗じ、電気代を算出するものです。
一方で、新電力会社のなかには、JPEX(一般社団法人日本卸電力取引所)の市場価格に連動して電気代が決まる市場連動型プランを採用しているケースも。市場連動型プランは市場価格が安いと電気代も下がりますが、反対に市場価格が上がると電気代も上昇します。
近年は、世界状況や異常気象などが原因で電力がひっ迫する事態が増えており、市場価格が高騰。市場連動型プランの電気代は大きな影響を受けています。
新電力会社へ変更する場合は、プランの内容を必ず確認しましょう。
違約金が発生する場合がある
電力自由化で新電力会社が参入するまで、大手電力会社の従量電灯プランやオール電化向けプランを解約しても違約金はかかりませんでした。また、契約時に契約期間を取り決めることもありません。
しかし、新電力会社のプランの場合は、あらかじめ契約期間が決まっており、更新日の前に解約をすると違約金が発生する可能性があります。やむを得ない事情で解約が必要となっても違約金を取られてしまうため、転勤が多い人などは契約にあたって十分注意が必要でしょう。
なお、近年は大手電力会社であっても、新プランへの加入時には契約期間や違約金が発生するケースもあります。
選択肢が多いので決めにくい
資源エネルギー庁の公表している情報では、令和3年4月21日現在で新電力の業者が716社にも及びます。
選択肢が多いとユーザーにとって最適な電力会社を見つけられるメリットがある反面、なかなか一社に決めきれない状況を生み出しやすいといえるでしょう。
新電力会社は電力以外の事業を行っている業者も多く、ガス会社であればガスとセットで契約すると電気代が安くなったり、電力会社と提携してマイルが貯められる航空会社などがあります。
単に「電気を使う」だけではなく、ライフスタイルなどによって最適な新電力会社が違うため、より慎重に検討しなくてはいけません。
切り替え先の会社が倒産する場合がある
大手電力会社が地域を独占して電力を供給していた時代は、基本的に倒産する恐れがありませんでしたが、新電力会社の場合は燃料費の高騰などの理由で、倒産や事業の撤退が起こる可能性が0ではありません。
実際に、帝国データバンクの調査では195社の新電力会社が倒産・撤退(2023年3月24日時点)しており、この数字を資源エネルギー庁の公表した716社と照らし合わせると、約27%にあたると分かります。
また、倒産や撤退はかろうじて免れたとしても、事業の継続には電気代の大幅値上げがやむを得なくなるケースが多く、その負担は結局、電気の利用者に降りかかります。
マンションやアパートでは契約できない場合がある
マンションやアパートの集合住宅では、大家さんや管理会社が特定の電力会社と契約を結んでいる場合があり、個別に新電力会社への契約を行うのは難しいです。
どうしても契約したい新電力会社があるなら、事前に不動産会社へ変更が可能か確認しましょう。
電力自由化は失敗?トラブル事例とは
日本よりも先に電力自由化に舵を切ったアメリカ・カリフォルニア州では、電力不足による大規模た停電が起こりました。そして日本も、2016年の電力自由化以降、夏場の猛暑や冬場の大寒波などで電力需要が大幅に上昇し、政府が国民に節電要請を出す事態となっています。
しかし、電力自由化による影響はこれだけではありません。
電力自由化によるトラブルは、より身近なところで起きています。
スマートメーター工事の詐欺
電気代の使用量はこれまで、検針員が検針し、後日電気代として請求されていました。
しかし近年は、内蔵している通信機能を利用して使用状況を自動で送信するスマートメーターへの置き変わりが進んでいます。
スマートメーターの取りつけは、基本的には電力会社が無料で行いますが、「電力会社から依頼を受けた」「新電力会社への変更に伴って、スマートメーターの設置費用がかかります」などとして、詐欺を働く悪徳業者が増えています。
電力会社を変えても、スマートメーターの取りつけや交換を有料で行う必要はないので注意しましょう。
訪問販売や電話営業
電気は毎日使うため、人々の心には潜在的に「少しでも安く使いたい」という気持ちがあります。
そんな気持ちに浸けこむようにやってくるのが、訪問販売や電話営業です。訪問販売や電話営業の全てが悪徳業者とはいえませんが、「今なら無料で付けられますよ」「太陽光発電で電気代を0円にしましょう」などの台詞に騙されてしまう人は後を絶ちません。
こうした訪問販売や電話営業への対処法は、その場ですぐに契約しないこと。
必ず一旦冷静になる時間を持ち、インターネットなどで情報を集めてください。
滞納による違約金
新電力会社のなかには、ガスやスマホ、インターネット回線などの業者が事業を行っていて、これらと電気代をセットにして割引プランを設けている場合があります。
このようなケースでは、ガスやスマホ、インターネット回線の使用料と電気代を合算して支払うようになっているため、料金を滞納し続けてしまうと電気代だけではなく、ガスやスマホ、インターネットの利用も強制的に解約となってしまいます。
両方の違約金が発生して二重の支払いとなってしまうので、滞納が起こらないよう、使用料金は口座振替やクレジットカード払いに設定しておきましょう。
電力自由化の誤解しやすいポイント
新電力会社に契約を変更したいけれど、災害などで停電が起こったときは大手電力会社から先に電気が復旧したり、電力供給が不安定で停電が起こりやすいのであれば、契約を躊躇するでしょう。
果たして実際はどうなのでしょうか。
災害時に復旧しにくい?
新電力会社は電気を売ることはできますが、電気の送電については従来どおり地域の大手電力会社が担っています。大手電力会社が送電の保守・管理を行う一方で、新電力会社は「託送料金」として利用料を支払っています。
そのため、停電の復旧時に送電網から送られる電気が、「この家は大手電力会社だから送る」「あの家は新電力会社だから送らない」と区別されません。
停電しやすい?
新電力会社が停電しやすいことはありません。
なぜなら、大手電力会社と新電力会社のどちらも電気が供給される仕組みは変わらないから。当然ながら、大手電力会社と新電力会社によって電気の品質にも違いはありません。
また、電気が送られる送電網も、大手電力会社と新電力会社のどちらも同じものを利用しています。
大手電力会社よりも安い料金プランだからといって、新電力会社の電気の質が下がり、トラブルが起こりやすい送電網を使っているから停電しやすいなんて事態は起こらないのです。
電力自由化で切り替えない理由
電力自由化によって、文字どおり電力を自由に選べるようになりましたが、一方で切り替えはあまり進んでいないのが現状です。
切り替えずにこれまでの電力会社を使い続けている人の理由には、主に以下の2つが挙げられます。
節約できる金額が大きくない
2017年の資源エネルギー庁のデータでは、新電力会社の電気料金は約4%安くなるとあります。
毎月10,000円電気代なら400円、5,000円なら200円。どちらも「新電力会社に変えて電気代がお得になった」とはいい切れない金額と感じるのではないでしょうか。
わざわざ契約をしてまで乗り換える価値がないと判断している人は多いでしょう。
また、一人暮らしや電気をあまり使わない世帯の場合では、新電力会社よりも大手電力会社のほうが電気代が安くなる可能性もあります。
地域によっては選択肢がない
いくら電力自由化といえども、必ず希望の電力会社と契約できるわけではありません。
選択肢に含まれるのは、お住まいの地域で電力を提供している会社のみ。北海道在住の人が、関西電力の料金プランが魅力的だからといって契約はできません。
また、新電力会社は「料金の安さ」を売りにしているところが多いので、そもそも大手電力会社が安い電気料金を提供している地域では勝ち目がないとして、参入を見送っています。
たとえば、北陸地方は北陸電力が大手電力会社のなかで最も安い料金プランを提供しているため、北陸電力の供給エリアにお住まいの人が契約できる新電力会社は多くはありません。
なお、日本は西と東では周波数が違いますが、異なる周波数にまたいで参入している新電力会社との契約は可能です。(電気・ガス取引監視等委員会「よくあるご質問と回答集」より)
電力自由化のメリット
当初は「電気代の削減に繋がる」と、どちらかというと歓迎ムードが漂っていた電気自由化。
開始から数年が経過した今は「電力自由化は失敗だったのでは?」と心配する声が多くなり、世論は変化しています。
とはいえ、ユーザーが自由に電力会社を選べるようになり、次のようなメリットも生み出しました。
競争が起こりプランや料金が差別化されやすい
地域の大手電力会社が独占状態だったときは、顧客側は料金体制などに不満があっても、ほかに選べる電力会社がなく、受け身の状態で従わざるを得ませんでした。
しかし、電力自由化によって、一般家庭でも電力小売を自由に選べるようになりました。自由競争が可能になったことで、新電力会社が続々と参入し、市場は活性化。
「地元密着の企業を応援したい」など、これまでにはなかった電力会社選びの選択肢が増えています。
特に異業種からの参入は、電気代という枠にとらわれずに生活スタイルや家庭状況などに合わせたコースやタイプの提供ができ、ほかとの差別化を図りやすいといえるでしょう。
例として、以下に3つのガス会社をご紹介します。
ガス会社名 | 電気代 | メリット |
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東京ガス |
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東邦ガス |
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looopでんき |
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通信料金がセット割される場合がある
小売電気事業者以外の事業を行っている場合は、両方の利用で料金をセットで割引するサービスを提供しているケースがあります。
スマホやインターネットの通信会社が新電力会社の場合は、電気代だけではなく、スマホやネット使用料と同時にポイントが貯められたり、貯めたポイントを料金の支払いに充てられるなど。
例として、次の2つの通信サービス会社をご紹介します。
通信サービス会社名 | 電気代 | メリット |
---|---|---|
ドコモ光 |
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J:COM |
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スマートメーターにより節電しやすくなる
人が検針する従来のメーターから、通信機器によって自動で検針されるスマートメーターの普及が進んでいます。
スマートメーターは、単に検針に割く人件費が削れるだけではありません。これまでインターネットにはつながっていなかった機器をつなげて、情報交換が可能となる「IoT」としての利用も期待できます。
たとえば、切り忘れた電気やエアコンを「IoT」の遠隔操作で簡単に切れば、電気代の節約になります。
また、スマートメーターは30分ごとに電力に使用量をスマホのアプリなどで確認が可能。電気の使用状況を意識しやすくなり、さらなる節制に努められます。
再生可能エネルギーによる電力を選択できる
環境エネルギー政策研究所によると、日本の発電量の割が化石燃料を必要とする火力発電ですが、政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロ」とする目標を掲げており、再生可能エネルギーの導入を促進しています。
このような背景などから、環境に配慮したエネルギーを選んで使いたいと思っている人は多いのですが、従来の大手電力会社ではそれが叶いませんでした。
ところが、新電力会社のなかには太陽光発電を始め、風力発電や水力発電といった再生可能エネルギーから電気を供給しているところもあります。
たとえば、特別高圧・高圧の顧客向け(大規模な工場や法人など)のエバーグリーン・マーケティング、低圧(小規模な工場や商店、事務所、一般家庭など)のお客様向けのエバーグリーン・リテイリングは、バイオマス発電などの二酸化炭素を抑制したクリーンエネルギーを提供しているため、エバーグリーンの電気を使うだけで地球温暖化防止に貢献できます。
災害時の停電リスクが減る
新電力会社は大手電力会社のような地域の縛りが少なく、広範囲に渡って電力の供給を行っています。
そのため、一部の地域が災害によって停電になっても、災害が起こっていない地域から電力を調達でき、停電に対して迅速に対応ができます。
新電力会社の選び方
数多くの新電力会社から、自分に合う一社を見つけ出すのは至難の業。そのため、最初にある程度絞ってからそれぞれの特長をチェックしていくのが現実的です。
新電力会社を選ぶ場合に、目安としたいのは料金プランや対応地域、特典の内容など。
詳細については、こちらの記事を参考にしてください。
電力自由化のよくある質問
電力自由化についてなんとなくは分かっていても、実際にどういうものなのか、目的など、詳しい内容までは把握していない人は多いのではないでしょうか。
また、新電力会社との契約を検討している人は、切り替えに必要な書類や倒産時の対応などが知りたいでしょう。
電力自由化に関連する質問と答えをまとめました。
そもそも電力自由化とは?
2016年4月1日にスタートしたもので、これまでは地域の大手電力会社のみが電気の販売が行えるよう規制されていましたが、全面自由化により小売り電気事業者(新電力会社)からも買えるようになりました。
新電力会社の業種は多岐に及び、ガス会社を始め、携帯電話会社、通信会社、ハウスメーカー、石油会社、鉄道会社などがあり、それぞれ独自の料金プランを展開しています。
電力自由化の目的は?
2011年の東日本大震災では、原子力発電所の停止によって東京電力や東北電力が長期的な停電となり、安定した電力の供給が行えず、電力不足が原因の電気代高騰が起こりました。
これに対し政府は、地域が限定された大手電力会社による電力供給に頼るのではなく、サービスエリアに縛られない新電力会社を増やすことで電力供給の安定を図り、なおかつ価格競争による電気料金の値下げを目的として電力自由化を行いました。
また、異業種からの参入が可能となったことで、企業の持ち味を生かしたサービスの展開が可能となり、ビジネスチャンスを広げられます。
新電力の切り替えに必要なものは?
- 契約者の名前/住所・郵便番号/電話番号などの個人情報の記載
- 現在契約している電力会社のお客様番号
- 供給地点特定番号(22桁)
- 支払い口座やクレジットカード番号
インターネットサイトからの申し込みであれば、24時間365日の受付が可能です。
供給地点特定番号は電気料金の検針書に記されているので、新電力会社への変更を予定している場合は検針書を用意するか、番号を控えておきましょう。
クレジットカード番号は支払い方法の入力で必要ですが、口座振替などほかの方法を選択するのであれば必要ありませんが、新電力会社のなかにはクレジットカードでの支払いのみとなっているところもあるので注意してください。
なお、新電力会社への変更において手数料は無料の場合がほとんどですが、一部分では「契約事務手数料」として3,000円前後必要なところもあります。
切替時に元の電力会社に連絡はいる?
新電力会社へ契約の申し込みや登録を行うと、元の電力会社で必要な手続きは新電力会社が行ってくれるケースが多いので連絡は不要です。
切り替え先が倒産したらどうなる?
新しく契約した新電力会社が倒産や事業撤退をした場合でも、電気の供給がいきなり止まってしまうことがありません。
これは、電気事業法において、2020年4月より一般送配電事業者の送配電事業部門が分離されて別会社となり、最終保証供給の措置を行うように義務付けられているからです。
そのため、ある日突然、契約先の新電力会社が倒産してしまっても、次の契約先が決まるまでは一時的な措置として電気の供給は確保されています。
電力自由化のデメリットは料金高騰など様々
電力自由化で損をしないためには、新電力会社それぞれの特長を理解した上で契約変更を行う必要があります。電力会社を変更する場合は、最初から一社のみに絞らず、必ず複数の業者を比較しましょう。
とはいえ、自分で情報を集めるのは限界があるので、一括で電気やガスの見直しができるエネチェンジなどの比較サイトを利用するのがおすすめです。まずは自分に合いそうな新電力会社をピックアップし、そこから契約手数料の有無や違約金などの情報をご覧になり、精査していきましょう。