太陽光発電の設備認定には、期限があるって本当!?認定が通らないと売電できなくなるの?
そうなの。だから余裕を持って手続きをする必要があるわ。制度について詳しく見てみましょう。
太陽光発電の設備認定期限はいつまで?
太陽光の設備認定は、年度ごとに申請期限が設けられています。
申請期限が過ぎてしまうと翌年度に申請することになりますが、認定された年によってFIT(固定価格買取制度)の売電価格は変わります。
2022年度
システム容量 | 申請期限 |
---|---|
10kW未満 | 2023年1月6日(金) |
10kW以上 | 2022年12月16日(金) |
システム容量によって、太陽光の設備認定の申請期限が変わります。
10kW以上の太陽光発電を設置している場合は、10kW未満よりも申請期限が早いので注意してください。
また、FITによる売電価格は、年々下がっています。fit申請期限を過ぎてしまい翌年度に認定が持ち越されてしまうと、売電価格に影響するので早めの申請を心がけましょう。
2023年度
システム容量 | 申請期限 |
---|---|
10kW未満 | 2024年1月5日(金) |
10kW以上 | 2023年12月15日(金) |
2023年度の太陽光の設備認定の期限は、現時点では経済産業省からの発表はありません。
表は過去の申請期限を参照に予想をしたものになります。
各電力会社
2022年度の各電力会社への接続契約の申請期限は、以下のとおりです。
電力会社 | 10kW未満の申請期限 | 10kW以上の申請期限 |
---|---|---|
北海道電力 | 2022年10月28日(金) | 2022年9月16日(金) |
東北電力 | 2022年10月21日(金) | 2022年10月7日(金) |
東京電力 | 2022年11月11日(金) | 2022年10月14日(金) |
中部電力 | 2022年11月11日(金) | 2022年10月21日(金) |
北陸電力 | 2022年10月28日(金) | 2022年10月1日(土) |
関西電力 | 2022年11月24日(木) | 2022年11月1日(火) |
中国電力 | 2022年11月4日(金) | 2022年10月14日(金) |
四国電力 | 2022年11月4日(金) | 2022年10月14日(金) |
九州電力 | 2022年11月11日(金) | 2022年10月14日(金) |
沖縄電力 | 非公開 | 非公開 |
2023年度の申請期限は公開されていませんが、おそらく2022年度と同様に10~11月に申請期限を迎えると推測されます。
接続契約は系統連系申請とも呼ばれ、申請を受けた送配電事業者が設備の状況を確認して問題がなければ連系承諾を行います。接続検討の段階では、系統連系を承諾したことにならないので注意しましょう。
なお、接続申請はあくまでも設備の連系に関わるもので、売電を行うには同時に電力需給契約を行います。
電力需給契約は、申請すれば必ず通るわけではありません。特に50kW以上の高圧連系では、電力会社が電気の需要と供給のバランスを取るために許可を出さない可能性もあります。
太陽光発電の設備認定の仕組み
太陽光で発電した電力は、勝手に売ることはできません。
政府から認可を受ける必要があり、これを設備認定と言います。
それでは、設備認定とは一体どのようなものなのでしょうか。
設備認定とは?
設備認定は、国(経済産業省)に対して行う申請です。
設置する太陽光発電の設備が、法律の定める基準をクリアしており、安全に運転ができるのかを審査するものです。
太陽光発電を新設すると住宅用太陽光発電は10年間(産業用太陽光発電は20年間)、固定の買取価格での売電が可能となるFIT(固定価格買取制度)を利用できますが、設備認定が下りないとFITでの売電は行えません。
事業計画認定に変更
2017年4月1日に施行された改正FIT法により、設備認定は事業計画認定に変更されました。事業計画認定では、設備認定に加えて太陽光発電の事業性が考慮されています。
主に以下の項目が追加となっています。
- FIT期間中の発電計画
- 設備の維持やメンテナンスの計画・実施
- FIT認定から3年以内の運転開始
- 廃棄計画
設備認定の時点でも、手続きの複雑さゆえに申請から許可が出るまでに遅れが生じていましたが、事業計画認定ではさらに許可されるまでの待ち時間が長くなっているので、早めの申請を心がけましょう。
事業計画認定の申請手順
太陽光発電のシステム容量が50kW未満の場合は、再生可能エネルギー電子申請から申請を行います。事業者名が電力会社との契約者と違うなどの不備があると、申請が受理されないので注意してください。
手続きや審査の完了後に折り返してメールが届きます。メールに記載されたURLをクリックし、承認コードを入力して設備認定通知書をダウンロードしましょう。
太陽光発電のシステム容量が50kW以上の場合は、サイトから申請後に必要事項を入力した画面を印刷し、返信用封筒を同封して太陽光発電を設置する場所を管轄する経済産業局に送付します。
送付先を間違えてしまうと申請が処理されないため、認定を受けられなくなります。地域別の経済産業局の連絡先は、経済産業省資源エネルギー庁のホームページに掲載されているので必ず確認してください。
また、システム容量に関わらず、申請書(紙)を直接持参しての申請は受付されないので併せて注意しましょう。
なお、事業計画認定の申請手続きの必要書類は以下のとおりです。
10kW未満 | 10kW以上 |
---|---|
|
|
戸籍謄本などは発行から3ヵ月以内のみが有効です。
事前に取得していたものを利用する場合は、申請時に3ヵ月を超えていないか必ず確認しましょう。
申請費用は発生する?
基本的に申請費用は無料ですが、戸籍謄本などの発行手数料は数百円程度かかります。
また、50kW以上の太陽光発電では申請書の郵送及び返信用封筒の同封が必要になるため、郵便代がかかります。
自分で申請を行えば申請費用を安く抑えられますが、申請手続きに必要な書類を集めたり、内容を確認するのは素人には難しいので、業者に依頼するのが適切でしょう。
太陽光発電の設置見積りには、申請の代行費用が含まれているケースがほとんどです。見積もりに含まれていなければ、代行業者に依頼することもできます。
接続契約並びに事業計画認定申請の代行料金の例は、以下のとおり。
システム容量 | 料金 |
---|---|
低圧(50kWまで) | 10~20万 |
高圧(50kW~) | 40万~ |
業者によって料金が異なります。
また、インターネット上で代行費用を掲示している業者は少なく、多くは個別での対応になるようです。
太陽光設備認定の流れ
設備認定から事業計画認定に変更されたことにより、手続きが複雑化しています。
そのため、申請から運転開始までの流れや申請期間を把握した上で、手続きを進める必要があるでしょう。
申請から運転開始まで
認定の申請から太陽光発電の運転開始までは、以下の流れとなります。
- 認定申請
- 接続契約
- 認定取得
- 設置工事
- 運転開始
認定申請は電力会社との接続契約前にも行えますが、接続契約が締結されないと事業計画認定も認定されないため、申請と同時に接続契約を進めておきましょう。
申請期間
申請内容 | 申請期間 |
---|---|
接続契約 | 1~2ヵ月 |
事業計画認定 | 1~2ヵ月 |
接続契約を締結する電力会社や申請数などによって変わりますが、事業計画認定の申請が認定されるまでは最短でも2ヵ月、平均で3ヵ月程度かかります。
ここからさらに設置工事に1~2ヵ月が必要となるので、実際に太陽光発電の運転が開始されるのは最初の申請から3~6ヵ月後になるでしょう。
出力数が100kWを超える規模の太陽光発電になると、運転開始まで1年ほどかかるケースもあります。
太陽光発電の設備認定を受ける基準
近年の太陽光発電を巡る状況の変化に伴い、認定の条件は適宜変更されています。
たとえば、2020年度から10~50kW未満の発電設備において「地域活用要件」が設定されており、これまで小規模事業用太陽光発電設備で行われていた全量売電が、住宅用太陽光発電と同様に余剰売電へと変更になりました。
電力の自家消費率が30%以上と決められているため、30%を下回ると認定が取り消される可能性があります。また、災害時に非常用電源として利用できる自立運転機能が備わったパワコンの導入などが必要になります。
こうした認定の変更は今後も続くと見られ、臨機応変な対応が求められますが、一方で大元となる事業計画認定の審査基準を疎かにしてしまっては元も子もありません。
事業計画認定には、以下の項目の審査が基準となります。
メンテナンスや保証の体制は整っているか
FIT期間中に太陽光発電を正常に稼働させるための保証や、性能を維持するために保守点検を行う体制が確保されているかを確認します。
具体的には保守点検や維持管理の責任者を明確にすることや、定期的なメンテナンスの計画・実施などがあります。
売電量を適正に計測できるか
太陽光発電の売電には、計量法関係法令によって定められた特定計量器を使用する必要があります。
また、特定計量器であっても、以下の場合は使用できません。
- 日本電気計器検定所が行う検定に合格している「検定証印」又は指定製造事業者が行う自主検査に合格している証である「基準適合証印」が付されていない特定計量器
- 検定証印等の有効期間を経過した特定計量器
メーカーや機器の型番を把握できているか
太陽光パネルやパワーコンディショナーなど、太陽光発電の設備のメーカー・型式番号が特定できている必要があります。
申請書の型式リストをクリックし、型式番号と製造事業者名を入力すると一覧が表示されます。該当する製品を選択してください。
さらに太陽光パネルの枚数、太陽電池の合計出力を入力します。
変換効率の数値
太陽光パネルは、種類によって日本産業規格が定めている変換効率以上の性能を有する必要があります。
具体的には以下のとおりです。
- 単結晶のシリコン又は多結晶のシリコンを用いた太陽パネルは13.5%以上
- 薄膜半導体を用いた太陽光パネルは7.0%以上
- 化合物半導体を用いた太陽光パネルは8.0%以上
長期に渡る事業計画が立てられているか
FIT制度によって売電価格が保証されるのは、10kW未満の太陽光発電は10年間、10kW以上の太陽光発電なら20年間となります。
期間内において効率よく発電量を得るには、事業計画の段階で実施計画を明確に定めておくことが求められます。
保守点検や維持管理体制が整っているか
申請書には、保守点検や維持管理を行う業者名や費用の総額を記載する必要があります。
また、別途保守点検の内容や維持管理の計画をまとめて提出しますが、例として以下のものが挙げられます。
- 保守点検及び維持管理スケジュール
- 保守点検及び維持管理の人員配置・体制計画
- 保守点検及び維持管理の範囲
- 保守点検及び維持管理の方法
- 保守点検及び維持管理時の安全対策
- 保守点検及び維持管理結果の記録方法
事業者情報について記載した標識が提示されているか
20kW以上の野立て太陽光発電所には、事業者名や事業内容などが記された標識(看板)の設置が義務付けられています。
記載内容は以下のとおりです。
- 発電設備の区分(「太陽光発電設備」と記載)
- 発電設備の名称
- 設備 ID
- 発電設備の設置場所
- 発電設備の出力
- 認定事業者名、住所
- 保守点検責任者名
- 連絡先
- 運転開始日
事業者情報が不明のままだと、近隣住民や設置場所を管轄する自治体などに不安を与えることになりかねません。
標識の掲示によって責任の所在を明らかとし、周辺への配慮を行う必要があります。
太陽光発電事業の出口戦略が立てられているか
太陽光発電の事業計画には、FIT期間中の運用だけではなく、FIT終了後の着地点についても計画の段階で盛り込んでおく必要があります。
太陽光発電事業の出口戦略として、次の4点が挙げられます。
- 自由契約による売電の継続
- 自家消費へのシフト
- 中古発電所として売却する
- 太陽光発電設備の撤去
4の場合、計画に盛り込むだけでは「撤去されずにそのまま残されるのではないか?」といった周辺住民の不安が強くなるでしょう。
そこで、10kW以上の太陽光発電設備については、一定額を定期的に積み立てて撤去費用とする義務が生じます。
また、FIT期間終了の前に災害等によって設備の撤去を行う必要が発生した場合に備えて、火災保険や地震保険等への加入に努めるなどの対応が求められています。
なお、太陽光発電の設置で補助金を受け取り、法定耐用年数(17年)よりも早くに設備を撤去してしまうと、補助金を返還しないといけない場合があるので注意してください。
3年以内の太陽光発電設備の運転が開始できるか
10kW以上の太陽光発電は認定を得てから3年以内、10kW未満の太陽光発電は認定から1年以内に運転が開始できることを計画に盛り込みます。
申請書には、事業実施工程として設置工事の開始予定日や系統連系予定日、運転開始予定日の入力が必要です。
設置工事自体の日数は多くかからず、住宅用なら1~2日程度、事業用でも1週間程度。しかし、設置工事後にすぐに安全に運転ができるとは限りません。
雨漏りやシステムの不具合などが原因で設置業者とトラブルになり、運転開始が遅れる可能性もあります。
認定から3年以内(住宅用太陽光発電は1年以内)に運転開始ができないと、認定を取り消されてしまうので、申請手続きはできるだけ早く始めるようにしてください。
再生可能エネルギー事業に関する法律を遵守できるか
太陽光発電の運用には、国や各自治体が定める法令や条例を遵守しなくてはいけません。
太陽光発電に関する法令には以下のものがあります。
- 建築基準法
- 電気事業法
- 都市計画法
- 農地法
- 消防法
送配電業者と接続契約の締結がされているか
fit申請は国(経済産業省)に対して行いますが、売電自体は送配電業者との接続契約締結によって行われます。
設備認定では電力会社との接続契約前の申請でも認定されました。
しかし、事業計画認定に変更後は、申請はできても接続契約が先に締結されていないと認定はされません。
太陽光発電の設備認定後の変更は可能?
認定後に内容を変更する方法は、50kW未満と50kW以上で異なります。
50kW未満の場合は、以下の方法を行ってください。
- 再生可能エネルギー電子申請にログイン後、設備認定から変更したい設備IDを選択し、変更手続きの種類を選択
- 情報を入力後、添付書類をPDF又はZIP形式でアップロードし、届出内容を登録
- 代行業者が申請した場合は、設置事業者にメールが届くので届出内容を確認の上で承諾(もしくは拒否)を選択
- 審査が完了すると設置事業者と代行業者にメールが届き、サイトにて変更認定通知のダウンロードが可能
50kW以上の太陽光発電の変更手続きは、こちらを参考にしてください。
太陽光発電の設備認定失効制度
設備認定が事業計画認定に変わった理由には、未稼働の太陽光発電所が抱える問題の是正が背景にあります。
FITの売電価格は年々下がっていますが、認定を先に済ませて高い売電価格の状態をキープした上で、太陽光発電の初期費用やコストが下がってから運転を始めれば、事業者はより大きな利益を得ることができてしまいます。
また、FITの売電価格は国民が再エネ賦課金という形で電気代に上乗せされており、実質負担しているもの。安いコストを使い高い売電価格で電力を売る業者が増えると、最終的なしわ寄せは国民にやってきます。
事態の解決に向け、2016年と2018年の2回に渡って有識者による審議などが行われ、措置が発表されましたが、問題解決には至りませんでした。
そこで2022年4月1日に改正された再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)により、未稼働の太陽光発電所に対して認定執行制度が施行されました。
ここでは、認定失効制度が導入されるまでの流れを解説しましょう。
2016年の決定事項
未稼働の太陽光発電に対する2016年の措置内容は、以下のとおりです。
- 2016年7月31日以前に接続契約した場合は、運転開始期限を設定しない。
- 2016年8月1日以降に接続契約した場合は、2017年9月30日までに事業計画書を提出する。また、認定から3年以内の運転開始期限を設定する。
- 2017年3月31日までに接続契約をしていない場合は認定の取り消しを行う。
2018年の決定事項
2016年の決定事項では、2016年7月31日までに接続契約を行った事業者については、政府は早い段階で運転を開始すると踏み、運転開始期限を設けませんでした。
しかし、実際には未稼働の問題が解消されなかったことから、2018年12月に新たな追加措置を発表しました。
- 2012~16年の案件のうち、一定の期限までに運転開始準備段階に至らなければ、運転開始準備
段階に至った時点の適正な価格に変更する。- 所定の期限までに着工申込みが完了した案件を除き、運転開始時点の適正な価格(着工申込みが完了した時点の2年前の調達価格)を適用する。
- 系統連系工事着工申込を行っていない案件は、運開期限の1年後の時点で認定を失効する。
2022年3月31日までに運転開始期限を迎える
2016年の措置によって、2019年3月31日までに認定を受けた太陽光発電は、3年以内に運転開始をしなければ認定が失効されるため、2022年3月31日が運転開始期限となります。
ですが、2022年3月31日までに運転開始期限を迎える太陽光発電所には、制度開始に伴い経過措置が取られることになりました。具体的には2022年4月1日以前に運転開始期限が経過した2018年度認定以前の案件が対象で、施行日から1年後の2023年3月31日時点での進捗を評価して認定失効の有無が判断されます。
経過措置により、実際に認定失効となるのは以下の2つのケースです。
- 2023年3月31日までに着工申込書が受領されない場合
- 2023年3月31日まで着工申込書が受領されたが、2025年3月31日までに運転開始されない場合
なお、認定失効制度は認定を取得しているものの運転を開始していない10kW以上の事業者が対象となっており、10kW未満の住宅用太陽光発電は対象ではありません。
ただし、10kW未満の住宅用太陽光発電については、認定失効制度とは別に認定を受けてから1年以内に運転を開始しなければ認定を取り消す措置がとられています。
運転開始期限が設定されていないケース
2012年~2016年の法改正前に認定を受け、かつ2016年7月31日までに接続契約を行っている太陽光発電については、これまでの措置では運転開始期限がありませんでした。
しかし、認定失効制度により、以下の条件をクリアできないと認定が失効になります。
- 2023年3月31日までに着工申込手続きを進めていない
- 2023年3月31日までに着工申込を進めたものの、猶予期間となる2025年3月31日までに運転を開始していない
太陽光発電の着工申込でリスク回避
着工申込を行っても、太陽光発電を未稼働のまま無期限で保有することができるわけではありませんが、運転開始期限からギリギリとなる1年後までに着工申込を済ませておけば、3年の運転開始期限と併せて4年の猶予を得ることができます。
売電を開始するために設備認定は必須手続き
改正FIT法や認定失効制度の導入により、国はクリーンかつ公正な再生エネルギーの活用を目指しています。
せっかく高額な初期費用を支払って太陽光発電設備を導入しても、認定を受けなければ売電ができず、何の意味もなくなってしまいます。
未稼働案件をお持ちの場合は、早急に着工申込や運転開始の検討を行いましょう。