太陽光発電を設置する上で必須の知識、FITについて見ていこう!
FITに似た言葉に、FIPというものもあるよ♪どちらを選択するべきなのか、確認しようね♪
太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)とは?
FIT(固定価格買取制度)は、住宅用太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電設備を持つ個人や企業に対し、発電した電力を電力会社が一定期間固定価格で買い取る制度です。
これにより、発電事業者は安定した販売価格を確保することができます。
固定価格買取制度の仕組み
固定価格買取制度(FIT)とは、再生可能エネルギーの利用促進を目的に、再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間、電力会社が固定価格で買い取る制度です。
FITの対象となる再生可能エネルギーは、下記の5つです。
2012年7月に固定価格買取制度がスタートし、2017年に改定され、毎年売電価格や条件が見直されています。
地球温暖化が世界的に問題視される中、再生可能エネルギーの普及は国全体で取り組むべき課題とされています。
固定価格買取制度の成果
固定価格買取制度の代表的な成果として、太陽光発電事業への参入者が大幅に増加したことが挙げられます。
参入者が大幅に増えた背景には、固定価格買取制度が導入された当初、売電価格が高めに設定されていたことがありました。
しかも、この価格は、従来の電気方式で発電したエネルギーよりもはるかに高く設定されていたのです。
このインセンティブが、太陽光発電の導入を従来の発電方法に代わる有力な選択肢とし、この業界への参入をさらに促したのです。
固定価格買取制度の歴史
固定価格買取制度への切り替えについて、その歴史を簡潔に説明します。
制度開始年月 | 制度名 | 制度概要 |
---|---|---|
2003年4月 | 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法 | 電気事業者に新エネルギーによる電気を一定量以上利用することを義務づけた |
2009年9月 | エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律 | 電気事業者に太陽光発電からの余剰電力を10kW未満48円、10kW以上で24円で買い取ることを義務付けた |
2012年7月 | 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(固定価格買取制度) | 電気事業者に5種類の再生可能エネルギーの電力を国が定めた一定の価格で買い取ることを義務付けた |
2017年4月 | 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)の等の一部を改正する法律 | 事業計画の申請・設備のメンテナンスの義務化など固定価格買取制度の一部を改正 |
固定価格買取制度が施行される前は太陽光発電しか購入できず、それも高価なシステムを購入できる人に限定されていました。
しかし、固定価格買取制度の登場により、その範囲が一変しました。
太陽光、風力、水力などすべての再生可能エネルギーが、家庭や企業の規模に関係なく購入できるようになり、再生可能エネルギーの費用対効果が高まったことで、ほとんど誰でも利用できるようになったのです。
FITがもたらした効果
FITによって一定期間安定した売電価格が保証されたことによって、様々な影響が発生しました。
- 二酸化炭素排出量の削減
- 太陽光発電設備の価格低下
- 太陽光発電が消費者にとって身近な存在に
- 電力事業者の収益の増大
- 電力市場の活性化
- 消費者は電力契約の選択肢が増えた
ほとんどが市場にとっても地球にとってもメリットある内容となっています。
二酸化炭素排出量の削減
太陽光発電は、二酸化炭素を排出せずに電気を作ることができます。
太陽光発電事業への参入者が増えることは、CO2排出量の削減につながり、ひいては地球環境にも良い影響を与えることになります。
太陽光発電設備の価格低下
固定価格買取制度が導入されるまで、太陽光発電の問題点のひとつはコストの高さでした。
固定価格買取制度の実施により、市場への新規参入が相次ぎ、ニーズの高まりに応じて太陽光発電の生産量も増加しました。
このような太陽光発電の割引制度により、再生可能エネルギーである太陽光発電の導入コストが大幅に削減され、太陽光発電のさらなる普及を後押ししています。
また、設備の開発・改良を行う企業間の競争も加速し、技術革新と生産コストの低減が進み、発電コストの低減につながりました。
太陽光発電が消費者にとって身近な存在に
太陽光発電の発電コストが下がったことで、太陽光発電のインフラを導入する費用が大幅に削減され、太陽光発電が経済的に実現可能な選択肢として注目されました。
結果的に、太陽光発電産業の効率化が進み、太陽光発電はさらに安価で、消費者にとって身近な存在となりました。
電力事業者の収益の増大
太陽光発電に寄って新たな電力を生み出す仕組みが整い、各家庭で電力を生み出して売電する仕組みが整ったことで、電力事業者は収益の見込みが立ちやすくなりました。
2019年度からは家庭用蓄電池の導入もFIT制度の対象となり、2022年度からは電気自動車の充電用の発電設備もFIT制度の対象になりました。これにより、FIT制度の適用範囲が広がり、より多くの電力事業者の収益増大につながっています。
電力市場の活性化
FIT制度が導入されたことにより、再生可能エネルギー発電事業が増加し、これに伴い、電力市場が活性化しました。競争が起こり、消費者にとっても安い電力を選ぶことが可能になりました。
消費者は電力契約の選択肢が増えた
FIT制度を利用することで、自宅で発電した電力を電力会社が一定の価格で買い取ってくれるため、自己消費しきれない余剰電力を売ることができるのは当然のこと、これまでの電気料金プランも見直すことになります。
電力を生み出す仕組みがない場合は、単純に消費電力を考えて最もお得な選択肢を選ぶしかない状況でしたが、電力を生み出す仕組みが家庭に整った場合には、その分選択できる電力契約の幅も広がります。
FIT制度は、東京電力、北陸電力、中部電力、九州電力、関西電力、東北電力、中国電力など、多くの電力会社で自由契約ができるようになっており、プランによっては、自宅での発電により、今よりも大幅に電気代が安くなる可能性があります。
FITとFIPの違い
FIPに似た言葉に、FIPというものがあります。
FITは、国が設定した固定価格で20年間買い取ってもらえる制度で、安定した収益が期待できます。
一方、FIPは太陽光発電の発電量と売電価格が市場の需給バランスに連動して決まる制度で、買い取り価格は日々変動します。
そのため、FIPはFITよりも高い収益が期待できるタイミングもありますが、市場価格が下がるとFITよりも低い価格になってしまうケースもあります。
FIPとは?
FIP制度は、再エネ発電事業者に電力販売時に一定の補助額(プレミアム)を付与する制度です。この制度は、再エネをさらに普及させることを目的に、2019年にスタートしたフィードインプレミアム制度の一部として導入されました。
FIPとは「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称で、経済産業省が定めた再生可能エネルギー発電施設の新たな買取制度。
具体的には、住宅用太陽光発電などの再エネ発電事業者が、発電した電力を電力会社に売る場合、その売電価格にFIPの補助金を加算して買い取ることができます。
FIT制度とは異なり、売電価格を固定せず、発電事業者が電力を販売した時の価格に一定のプレミアムを付与する仕組みです。
FIP制度の歴史
FIP制度は、2020年4月から北海道電力エリアでスタートしました。当初は10年間適用され、買い取り単価は1kWhあたり26円でした。また、災害時には1kWhあたり15円の価格で買い取りが行われました。
FIP制度は、再エネ発電事業者の収入源になるため、今後も継続して注目される制度の一つです。
ドイツでは約8割がFIPを選択
ドイツでは2012年からFIPが導入され、FITではなくFIPを選択している事業者が8割にも登ります。
FIP制度はFIT制度とは異なり、災害時などでも変動型の収益を得ることができる上に、単価が高額に設定されているため、発電事業の収益性が高くなる傾向があります。
ただし、FIP制度は設置容量が大きくなると電力会社との交渉が必要となるため、手続きが複雑になるケースも。
FIPは市場変動で大きな利益が得られる
FIPは変動価格での売電なので、市場価格次第では、FIT価格よりも高い収益が得られるケースもあります。
当然ながら、反対に電力の市場価格が低くなると、FITよりも低い収益になってしまう場合もあります。
市場変動に左右されず安定した収益を確保したいならFIT
太陽光発電のFIT制度は、政府が設けた買取価格制度です。FITの電力買い取り単価は一定で、市場価格の変動に左右されず、安定した収益を得ることができるため、太陽光発電に投資する人にとっては、将来の収支が見えやすいFIT制度がおすすめです。
FITの3つのデメリット
日本国内では多くの人がFIPではなくFITを選択しますが、FITにデメリットがないわけではありません。
メリットが多いFITですが、下記のようなデメリットが存在することも把握しておきましょう。
- 電力の買取価格は年々下落している
- 再エネ賦課金の高騰で消費者の負担が増える卒FI
- T後の電力の活用方法が浸透していない
それぞれ解説していきます。
電力の買取価格は年々下落している
FIT制度は設備が設置された年から20年間、毎年同じ売電価格で買い取りが行われます。しかし、FIT制度の導入以降、売電価格は年々低下し、2023年の住宅用太陽光発電の売電価格は10kW未満で16円/kWhと、初年度の2012年の42円/kWhから比べても26円も低下しています。
FIT制度の売電価格は、国が毎年11月に決定します。
夜間の売電価格が高いといった特別な条件もありますが、FIT制度は年々低下していることが大きな注意点です。
発電した電力を全て自家消費に回す場合は相対的に影響が少ないですが、全量買取制度など、新しい買取制度に移行することも考えられます。これらの対策については、大手の発電所から一般家庭の設備まで、地域によって異なります。
再エネ賦課金の高騰で消費者の負担が増える
FIT価格の高騰が再エネ賦課金の値上がりにつながっており、また燃料費の高騰も影響しています。環境省によると、2030年頃までは再エネ賦課金の値上がりが続くと予想されています。自治体や新電力会社が再生可能エネルギーを導入する際には、自家発電などの対策が必要となります。
卒FIT後の電力の活用方法が浸透していない
卒FIT後の太陽光発電の電力活用方法が浸透していないことも、FITのデメリットのひとつです。
FIT終了後は、太陽光発電の所有者自身が自家消費か売電かといった運用方法を選択しなければならず、その判断が難しい問題点が挙げられます。
自家消費することによって、自分自身で発電した電力を使うことができるため、電気代の節約につながります。余った電力を電力会社に売電する場合は、これまでのFIT価格では買い取ってもらえないため、自家消費が経済的にも有利となる考えが一般的。
具体的な卒FIT後の太陽光発電の活用方法としては、家庭で使う電力を太陽光発電で賄い、余った電力は電力会社に売電する方法です。
卒FIT後の電力は「売る」より「使う」がお得
卒FIT後の電力は、自分で利用する方が「売る」よりも「使う」方がお得です。これは、卒FIT後は売電価格が低くなるため、自分で発電した電力を使うことで電気代が節約できるためです。
ただし、自分で利用するには、発電量に合わせた機器の導入や設置が必要になります。また、停電時には自分で発電した電力を使用できるため、備蓄電池やインバーターなどの設備も必要です。
卒FIT後の電力利用については、全国的に取り組まれており、自治体でも普及を推進しています。自分で利用することで、電気代の節約や停電時の備えにもなります。
太陽光発電の導入が初めての方は、導入にあたって比較検討をじっくり行い、太陽光発電をつけてよかったと思えるようにしましょう。