太陽光発電の系統連系ってなんのこと?
専門用語で難しそうだから分かりやすく教えて欲しい…。
太陽光発電における系統連系を分かりやすく解説
太陽光発電設備の導入を検討する際、基礎知識を身に付けるために調べていると「系統連系」という単語をよく目にしますが、専門用語のようで難しく感じてしまう人もいることでしょう。
ここでは、太陽光発電における系統連系について分かりやすく解説していきます。
系統連系とは
太陽光発電は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換するためのシステムです。太陽光パネルによって太陽光を受け取り、直流電力を生成します。しかし、発電された電力を家庭や工場などで利用するためには、交流電力に変換しなければなりません。
そのためには、太陽光発電所の発電された電力を電力網(系統)に接続し、電力会社や周辺の顧客が使用できるようにする必要があり、これを系統連系と呼びます。
つまり系統連系は太陽光発電システムと電力網との接続方法のことで、大きく分けて二つの方式があります。
方式 | 説明 |
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直列連系 | 太陽光発電システムが、一般的な電力網と同じ周波数で交流電力を発生するように設計されている場合、直列連系方式が採用されます。太陽光発電システムは、電力網と同じ周波数と位相で交流電力を発生し、電力網に直接送電されます。 |
逆変換方式 | 逆変換方式は、太陽光発電システムが直流電力を生成し、それを交流電力に変換するインバーターが必要な場合に採用されます。逆変換方式では、太陽光発電システムが発生する直流電力をインバーターで交流電力に変換し、その電力を電力網に送電します。 |
どちらの方式でも、太陽光発電システムが電力網に接続されるため、発電量が電力需要に応じて変動する場合でも、電力網は一定の電力供給が維持されるように調整されます。また、逆に電力網からの電力需要が減少した場合には、太陽光発電システムからの電力供給も減少するようになっています。
なお、蓄電池を系統連系も密接に関連しており、それぞれを接続することで、発電した電気を蓄えておき、需要が高まった際に放電することが可能です。これにより、需要がピークを迎えた際にも安定した電力供給が可能です。
そのほか、系統連系の容量は、送電線路や変電所の設備の性能や、周辺地域の電力需要などによって決定されます。容量が小さい場合は、送電できる電力の出力量が限られるため、需要が急増した際には、供給力不足に陥り、停電などの問題が生じる可能性があります。一方、容量が大きすぎる場合は、設備や維持管理に多大なコストがかかるため、個人・産業用どちらであっても適切な容量の設定が重要であるといえるでしょう。
売電しないなら独立型
太陽光発電システムを導入する場合、売電するつもりがなく自家消費を目的とする場合には、独立型(オフグリッド型)の太陽光発電システムが適しています。
独立型太陽光発電システムは、電力網に接続されず、バッテリーに蓄電された電力を使用するため、自給自足型の電源として機能します。これにより、電力網の停電や災害時にも、安定した電力供給が可能になるのです。
また、売電をしない場合には系統連系が必要ないため、系統連系を行わない独立型太陽光発電システムの方が初期投資コストが低くなります。
ただし、独立型太陽光発電システムは、バッテリーの寿命や交換時のコスト、発電量と消費量のバランス調整など管理が必要となる面もあるため、導入する際には専門家に相談すると良いでしょう。
系統連系と独立型の違い
太陽光発電には、系統連系と独立型があります。
系統連系の特徴として、電力会社の電力網に接続して、発電した電力を売電することが挙げられます。また、太陽光発電システムが発電した電力が不足した場合には、電力会社から電力を購入することができるため、24時間安定した電力供給が可能です。このようなメリットがある反面、太陽光発電システムの設置コストが高くなり、設置場所の制約があるといったデメリットもあります。
一方の独立型の特徴は、電力網に接続せず、発電した電力を自宅で消費できることです。太陽光発電システムが発電した電力をバッテリーに蓄電し、自宅で消費することができるため、自給自足型の電源として機能します。系統連系と比較して初期投資コストが低く、設置場所に制約がないことも大きな違いでしょう。
それぞれの違いやメリット・デメリットを簡単にまとめると次のとおりです。
系統連系 | 独立型 | |
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メリット |
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デメリット |
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逆潮流とは
逆潮流とは、太陽光発電システムから配電網に送られた電力が、配電網から太陽光発電システムに戻ることを指します。これは、太陽光発電システムが太陽光よりも高い電圧を発生する場合や、配電網の電圧が低圧となった場合に起こることがあります。
逆潮流が発生すると、配電網に問題を引き起こす可能性があり、太陽光発電システムには逆潮流制御機能が備わっているのが一般的です。逆潮流制御機能は、インバーターに搭載されており、配電網から逆流する電力を検出し、適切な制御を行うことで逆潮流なしで運用することが可能です。
具体的には、逆潮流制御機能は配電網の電圧や周波数を検出し、太陽光発電システムの発電量を制御する役割があり、逆潮流を抑制します。また、逆潮流制御機能は、通信機能を備えており、配電網側の管理者や監視者と通信して、逆潮流の状況や制御状況を共有することも可能です。
総じて、逆潮流は配電網に問題を引き起こす可能性があるため、太陽光発電システムには逆潮流制御機能が必要です。逆潮流制御機能によって、配電網との安定な接続を確保することができます。
高圧連係のリスクや注意点
太陽光発電における高圧連携とは、太陽光発電システムが配電網の高圧側に接続される仕組みのことです。
高圧連携は、太陽光発電システムの発電量を大きくすることができるため、多くの太陽光発電事業者が利用しています。しかし、高圧連携には電圧の種類によって「高圧」「超高圧」「特別高圧」といった区分あるほか、いくつかのリスクや注意点があります。
電力システムに影響がある
高圧連携によって太陽光発電システムから配電網に大量の電力が流れるため、電力システムの安定性に影響を与える可能性があります。特に周波数や電圧の変動が起こりやすい夜間や曇りの日など、太陽光発電システムからの電力が急激に増加する場合は、周辺の電力システムに深刻な影響を与えることがあるため注意が必要であるといえるでしょう。
規格・規定の遵守が必要
高圧連携には、配電網との接続に関する法規制があるため、接続に必要な手続きや規格・規定の遵守が必要です。
安全保守が必要
高圧連携の際には、安全性を確保するための適切な保護装置の設置や、太陽光発電システムの適切な監視・管理などの対策をしなければなりません。
発電コストも考慮しなければならない
高圧連携によって発生する電力の輸送には、輸送損失が発生するため、発電コストが上昇する可能性があります。また、高圧連携の場合は、高圧側の配電網に接続するためのコストがかかるため、初期投資が大きくなる場合があります。
このように、太陽光発電における高圧連携は発電量を増やすことができる一方で、電力システムの安定性に影響を与える可能性や法規制に遵守する必要があるといった注意点があります。そのため、高圧連携をする場合は、これらのリスクや注意点を十分に把握し、安全かつ効率的な運用を行う必要があるといえるでしょう。
逆潮流のリスクや注意点
太陽光発電において逆潮流とは、太陽光発電システムが発電した電力を送電線に逆流させることを指します。逆潮流が発生すると、以下のようなリスクや注意点があります。
リスク・注意点 | 説明 |
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安全性の問題 | 逆潮流が発生すると、送電線に電力が戻ってくるため、送電線に接続された電気機器が損傷する可能性があります。また、逆潮流が大量に流れると、火災や感電の危険性もあります。 |
電力会社とのトラブル | 逆潮流が発生すると、太陽光発電システムから送電線に電力が戻ってくるため、電力会社が管理する送電線に電力が逆流することになります。これは、電力会社にとっては負荷バランスの乱れや送電線の過負荷につながるため、トラブルの原因になる可能性があります。 |
太陽光発電システムの損失 | 逆潮流が発生すると、太陽光発電システムから送電線に電力が戻ってしまうため、太陽光発電システムの発電量が低下する可能性があります。また、逆潮流が大量に流れると、太陽光発電システムの機器が損傷する可能性もあります。 |
逆潮流を防ぐ技術として、逆潮流制御機能を備えたインバーターを使用したり、送電線に逆潮流防止のためのリアクトルを設置することが一般的です。太陽光発電システムを設置する前には、電力会社との連絡や手続きを行い、逆潮流に関する注意点を確認することが重要です。
また、電力制御においては送電網の中心的な部分である変電所内に設置されたキュービクルという装置もあり、送電線路や変電設備の電圧や電流を計測し、異常が検出された場合には、自動的に制御や保護の処理を行います。キュービクルは、送電線路の分岐や合流などの制御を行い、送電網全体の運用を最適化するための情報を提供してくれるものであることも覚えておきましょう。
太陽光発電で系統連系を行う準備
太陽光発電設備によって作られた電力を販売する売電を行うためには、系統連系が必要です。
ここでは、太陽光発電で系統連系を行う準備について解説していきます。
申請手続き
系統連系するためには、電力会社の送配電網に接続する必要があるため、電力会社へ申請手続きである「電力受給契約申請」を行い許可を得なければなりません。
こちらの申請手続きは、あくまで設備同士の接続許可を得るものであり、受電や売電手続きではないため注意しましょう。
機器
系統連系型の太陽光発電で使用する機器としては、直流の電流を交流の電流に変換しなければならないため、インバーターの一種であるパワーコンディショナーが必要です。
電流の変換以外に、パワーコンディショナーは余剰電力が発生した際に自動的に電力会社の系統に電流を流す機能や、高調波電流の発生を防ぐ機能が搭載されているのが一般的です。
そのほか、電力量を確認する電力計をはじめ、売電するために必要な機器を把握しておくと導入もスムーズに行えるでしょう。
費用
系統接続にあたる費用負担は、以下のものが挙げられます。
費用 | 内容 |
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建設費用 | 太陽光発電システムを電力会社の送電線に接続するには、変電所や電力会社の設備に接続するためのインバーターなどが必要になります。これらの設備の建設費用は、太陽光発電システムを設置する事業者が負担することになります。 |
運用費用 | 系統接続後は、太陽光発電システムから発電された電力を電力会社の送電線に流すことができます。しかし、太陽光発電システムが送電線に逆流することを防ぐための逆潮流制御機能や、電力会社との通信などが必要になる場合があります。これらの運用費用は、太陽光発電システムを設置する施工事業者が負担することになります。 |
保証金 | 太陽光発電システムを電力会社の送電線に接続する場合、電力会社は系統接続に伴う電力の品質や安定性を保証するために、保証金を事業者に請求する場合があります。保証金は、系統接続の規模や電力会社によって異なります。 |
以上が太陽光発電における、系統接続にあたる費用負担の一般的な例です。ただし、具体的な費用負担は、地域や電力会社によって異なるため、詳細については事業者が電力会社に問い合わせるようにしましょう。
太陽光発電における系統連系の流れ
太陽光発電における系統連系の流れは、次のとおりです。
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STEP1系統連系の相談こちらは任意ですが、不明点や不安がある人は事前に確認することで安心して手続きを進めることができるため、気軽に相談してみましょう。
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STEP2電力会社へ検討の申込み電力受給契約申請を行い、電力会社の送配電網に接続する許可を得ます。
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STEP3電力会社から回答申請に対して電力会社から許可を得ます。
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STEP4契約の申込み・保証金の支払い電力需給契約を行います。
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STEP5工事設計の検討発電者と電力会社で工事設計を検討します。
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STEP6契約の成立工事費を負担することについても契約を締結します。
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STEP7国への認定の申請合わせて工事費を支払います。
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STEP8工事実施設計に基づき工事が実施されます。実施時期については協議が必要です。
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STEP9特定契約の成立事業計画認定通知書が受理され、受給開始日が協議の結果決定したら特定契約が成立します。
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STEP10売電を開始すべての手続きが完了したら売電が開始されます。
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太陽光における系統連系でよくある質問
系統連系について解説してきましたが、概要や流れを把握していても実際に行うと多くの疑問が湧いてくるものです。
ここでは、太陽光発電における系統連系でよくある質問についてQ&A形式で解説していきます。
系統連系の日は立会いしないとダメ?
仕事をはじめスケジュール調整が難しい人の中には、連携日に立ち合いしなければならないか疑問に感じている人もいることでしょう。
系統連系の日は、電力会社の電力系統に発電設備を接続するのみであるため、立ち合いは不要です。
ただし、設置工事の際には立ち合いが必要となるため、余裕を持ってスケジュール調整を行うようにしましょう。
いつから売電が可能?待ち時間はどれくらい?
売電を行うためには系統連系が必要ですが、申請をしたからといってすぐに開始できるわけではありません。
通常の系統連系であれば4ヵ月、高圧連系であれば9ヵ月以上かかることもあります。つまり、太陽光発電設備自体の準備ができていても、手続きが完了しないために売電できない期間が発生してしまうということです。
こちらの待ち時間を参考に、逆算して計画を立てるようにしましょう。
太陽光の系統連系は売電するなら必須
系統連系とは、太陽光発電システムと電力網との接続方法であり、こちらを行わなければ太陽光発電で作られた電気を売却する売電を行うことができません。
系統連系を行うためには申請手続きが必要であり、契約の申し込みや工事計画など多くのステップや条件をクリアする必要があります。そのため、申請したらからといってすぐに売電が行えるわけではないため注意が必要です。
「太陽光発電システムの準備はできているのに売電できない」といった事態に陥らないよう、これから売電収益目的で太陽光発電設備の導入を検討している人は、ぜひ本記事を参考にして円滑な手続きができるように準備していきましょう。