太陽光を無駄なく電力に変換するためには、ソーラーパネルの角度調整は欠かせない事前計画の一つです。
しかし、季節ごとに太陽の位置は変わるため、最適な角度もまた変化するのです。
本記事では、そんなソーラーパネル設置時の最適な角度について解説します。
- 季節変動に応じた角度調整は可能なのか?
- 地域別の最適な設置角度は?
といった内容も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
ソーラーパネルの角度は季節によって最適な数字が変わる?
ソーラーパネルは、太陽光を利用した発電システム。当然ながら、より多くの太陽光を集めたほうが発電効率は良くなります。
一般的には、太陽光がソーラーパネルに対して直角に射すように設置すると最も効率が良い角度とされていますが、実は「この角度が一番良い」と一概にはいえません。
例えば一年で昼が最も長く夜が最も短い夏至の時期は、南中高度(太陽が真南に来たときの地面との角度)は最も高くなり、反対に一年で最も昼が短く夜が長い冬至では、南中高度は最も低くなります。
つまり夏と冬では太陽の位置は大きく変わるため、ソーラーパネルは本来なら季節ごとに角度を変えて設置するべきといえるでしょう。
なお、南中高度は緯度によっても異なり、南北に長い日本では最南端と最北端では次のような違いがあります。
区分 | 場所 | 緯度 |
---|---|---|
最南端 | 東京都沖ノ鳥島 | 20°25′31″ |
最北端 | 北海道択捉島 | 45°33′26″ |
参照:国土交通省国土地理院
追尾型システムや角度を変えられる架台もある
追尾型太陽光発電システムはその名のとおり、太陽の動きに合わせてソーラーパネルの向きが変わる仕組みのこと。太陽は東から昇って西に沈むため、追尾型太陽光発電システムが搭載されたソーラーパネルは日の出は東を向き、日没は西を向いています。
そのため、より多くの太陽光がソーラーパネルに当たるので、固定架台のソーラーパネルと比べて、年間の発電量が1.2~1.7倍も増加したとの実験結果も。
東西追尾のみの一軸型と東西南北を追尾する二軸型の2タイプがあり、当然ながら南北も網羅したニ軸型のほうが、余すことなく太陽光を集められるので、より効率良く発電ができます。
ただし、追尾型太陽光発電システムは全自動で行われるため、調整の手間はかかりませんが価格は割高。
一方で、ソーラーパネルの設置角度を手動で変更できる架台も販売されており、こちらは季節に応じて年4回ほど自分で変える手間があるものの、価格は追尾型太陽光発電システムに比べて抑えられます。
一般家庭で太陽光パネルの角度は変更できる?
追尾型太陽光発電システムは、電子制御システムやベアリングなど通常のソーラーパネルにはない部分が付帯しているため、屋根のような傾斜のある場所ではなく、調整や点検がしやすい平地に設置するのが望ましいとされます。ソーラーパネルの設置角度を手動で変更できる架台も同様です。
住宅用太陽光発電の多くは屋根に設置するため、追尾型太陽光発電システムなどを導入するのは現実的とはいえません。実際に、屋根に設置できる製品を販売しているメーカーは見当たりません。
ただし、庭などの平地に設置するのではあれば、住宅用太陽光発電であっても設置できる可能性はあります。太陽光発電の販売店や施工会社に尋ねてみると良いでしょう。
ソーラーパネルの設置角度調整の目安を地域別に紹介
日本では、ソーラーパネルのは南向きに30度の角度で設置するのが良いとされています。これは、30度がベストな角度というよりも、季節によって最適な角度が変化するなかで、年間を通じて最も安定的に太陽光を集められる角度が30度であると考えるのが良いでしょう。
日照量が最も多くなる夏(夏至)に合わせるのであれば、ソーラーパネルの角度は45度のような斜めよりも0~10度に傾けるのが最も効率が良くなります。しかしそれでは夏以外の季節に十分な発電が行えなくなるため、平均をとる形で設置するのです。
また、ソーラーパネルの最適な角度は季節だけで決められるものではありません。日本は南北に長く、天候や気象条件が地域によって違うため、地域に合わせた角度も存在します。雪が多く降る地域では雪を落とす必要があるので、屋根を急勾配にする必要があるからです。
それでは、地域別にソーラーパネルの設置に最も適した角度はどのくらいなのか見てみましょう。ソーラーパネルを設置する屋根勾配も併せてご紹介します。
北海道
北海道(札幌市)の場合、最適角は34.8度です。
屋根の対応勾配は7寸勾配(約34.8度)になります。
宮城県
宮城県(仙台市)の最適角は34.5度です。
屋根の対応勾配は7寸勾配(約34.8度)になります。
東京都
東京都(八王子市)の最適角は33.0度です。
屋根の対応勾配は6寸勾配(約33.0度)になります。
大阪府
大阪府(大阪市)の最適角は29.2度です。
屋根の対応勾配は5.5寸勾配(約28.8度)になります。
鹿児島県
鹿児島県(鹿児島市)の最適角は27.7度です。
屋根の対応勾配は5寸勾配(約26.6度)になります。
沖縄県
沖縄県(那覇市)の最適角は17.6度です。
屋根の対応勾配は3寸勾配(約16.7度)になります。
太陽光パネルの傾斜角度のベストを調べる方法
ソーラーパネルは季節だけではなく、地域によって最適角度が変わりますが、地域と一口にいっても北海道では札幌市と釧路市には300kmの距離があります。北海道在住の人には気候が全く違う地域と認識できますが、北海道以外に住んでいる人にはその認識は薄いようです。
東京を始点とした場合の300km先は、宮城県仙台市や石川県金沢市に到達する距離。とても同じ気候や天気の地域とはいえず、太陽光発電にも影響を与えてしまうのは明白ではないでしょうか。実際にソーラーパネルの最適傾斜角を計算してみると、札幌市は38度なのに対し、釧路市は47度と違いがありました。(どちらも年間の平均最適傾斜角)
そのため、ソーラーパネルの最適な角度は、ソーラーパネルを設置する地域に近い数字を知る必要があります。
より具体的に最適な角度を知るには、以下の方法があるので試してみましょう。
NEDO日射量データベース閲覧システムにアクセスする
地域の詳細なソーラーパネルの最適な角度は、NEDO日射量データベース閲覧システムが利用できます。
利用にあたりダウンロードの必要はなく、ブラウザにアクセスして閲覧できます。
MONSOLA-20のタブを開く
右上に「METPV-20」「MONSOLA-20」「日照量マップ」の3つのタブがありますが、MONSOLA-20をクリックします。
こちらが、年間月別日射量データベースとなります。
住所検索で調べたい地域を入力する
左下の住所検索をクリックします。
ソーラーパネルの最適な角度が知りたい地域を入力して、検索をクリックしてください。
住所にピンが表示されますので、ピンが表示されているセルをクリックします。
または、中央の日本地図を拡大して、知りたい地域をクリックしても構いません。
地域が指定できたら、この地点のグラフを表示をクリックしてください。
日射量グラフが表示されます。
表示データを角度指定にする
左上の「表示データ選択」の角度指定をクリックします。
表示種類を最適傾斜角にする
「角度指定データの表示種類」の中の最適傾斜角をクリックしてください。
これで各月、平均、季節の3パターン別に、地域の最適な角度が分かります。
太陽光発電に最適な家の条件
太陽光発電は導入当時に比べて年々システム本体の価格が下がってきているとはいえ、まだまだ高い買い物であるのは変わらず、気軽に設置できるものではありません。
また、設置すれば必ず発電して余剰電力を売電できるとも限らないため、設置後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、自宅が太陽光発電に向いている条件に当てはまるのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。
日射量が多い地域にある
太陽光発電は太陽光を利用した発電システムのため、当然ながら日射量の多い地域ほど発電量が多くなります。
一般的に、南下するほど気温が高く、日射量が多いイメージがあるため、「最も日射量が多いのは沖縄」ではないかと思う人は多いでしょう。しかし、沖縄は政府統計の総合窓口(e-stat)によると36位(2021年調査)。低い順位に驚いたのではないでしょうか。
理由として、沖縄には梅雨があること、加えて海に囲まれた地形のため曇りや台風の日が多く、日照時間が短いことなどが挙げられます。
一方で、日本で最も北に位置する北海道は25位と高い順位。特に東部は晴天が多く、雪が少ないため、太陽光発電に適した地域となります。これも聞いて初めて知る事実であり、驚かれる人は多いでしょう。
周囲に日陰がない
日射量が多くても、周囲を高い木々で囲まれていたり、目の前の高層ビルやマンションが日差しを遮ってしまう環境であれば、ソーラーパネルに太陽光は当たりません。
日射量は平均的でも、高い木々やビルがなければ太陽光が安定してソーラーパネルに当たるので、太陽光発電に向いているといえるでしょう。重要なのは地域の日射量だけではなく、実際に自宅の屋根に太陽光が当たっているのか、ということになります。
気温が安定しており高温になりにくい
太陽光発電に関する誤った認識の一つに気温があります。
夏になると連日、真夏日や猛暑日を記録するような暑い地域のほうが発電効率が良いと思われていますが、ソーラーパネルの発電効率が最も良いのは25℃です。25℃を超えると発電量は低下するため、気温が高い地域だから発電量も多いとはなりません。
さらに25℃は気温ではなく、ソーラーパネルの表面の温度を指します。太陽光が集まるソーラーパネルの表面は実際の気温よりも高くなっている可能性は高く、30℃を超える暑さになると70~80度にまで上昇します。
灼熱の日差しが降り注ぐ真夏は、発電効率は最大値から30%も下落するといわれており、高温はむしろ太陽光発電においてはマイナス。
それよりも、春や秋など比較的気温が落ち着いている時期や、夏でも25℃程度が最高気温となる地域のほうが太陽光発電に適しています。
屋根が北向きではない
ソーラーパネルの設置に適しているのは南向きの屋根です。
北向きの屋根にソーラーパネルを設置しても、太陽光が当たらないのでほとんど発電しません。
施工業者に依頼しても南向きを勧められますが、実績の乏しい業者や、発電効率が悪いことを知っていながらも契約のために北向きの屋根に設置する悪徳業者もいるので、十分に注意してください。
屋根の形状と太陽光パネルの関係
住宅用太陽光発電は、多くの場合、屋根に設置するため、屋根の形状が発電効率に深く関わっています。
日射量や気温などが太陽光発電に適していても、屋根の形状によっては設置を見合わせたほうが良いケースもあるので、自宅の屋根が太陽光発電に向いているのか確認しましょう。
太陽光パネルを設置しやすい屋根
太陽光パネルの設置に向いている屋根 | 特徴 |
---|---|
切妻屋根 | 屋根の最頂部から地上に向かって二面の屋根が下りている |
平屋根 | 屋根が平坦 |
片流れ | 1枚の長方形ないし正方形の屋根が地上に向かって下りている |
本を開いて伏せたような形状をしている切妻屋根は、日本の住宅で最も多く使われており、一般的には「三角屋根」とよばれているもの。面積が広く、ソーラーパネルの設置に適しています。南向きに一面を設置するのが一般的ですが、南向きの屋根がない場合は、東向きと西向きに一面ずつ設置するのが良いでしょう。
平屋根は切妻屋根のように屋根の向きが決まっていないので、南の方角に向けてソーラーパネルを設置できます。ただし、屋根に傾斜がないため、傾斜を付けた架台を使用する必要があります。
片流れ屋根は面積が広いのでソーラーパネルの設置に向いています。南向きが最も適していますが、東向き・西向きでも良いでしょう。
太陽光パネルの設置に一定のリスクがある屋根
寄棟屋根は台形2枚と三角形2枚の屋根を合わせたもので、世界で多く見られる屋根の形状になります。
東西南北に屋根があるので、南向き・東向き・西向きの屋根にソーラーパネルを設置が可能ですが、それぞれの屋根の面積が狭いと、設置枚数が少なくなり発電量が期待できません。
サイズや形状の異なるパネルを組み合わせて、効率的に設置する必要があるため、価格がやや高くなってしまう可能性があります。
ソーラーパネルの角度は季節ごとに最適な数字は変わる
太陽光を効率良く発電させるには、ソーラーパネルの方位角が重要です。季節に応じてソーラーパネルの角度を変えるのが最も良い方法になります。
しかし、住宅用太陽光発電では追尾型太陽光発電システムや、手動で角度を変えられる架台の設置はどれも現実的ではありません。
そのため、固定架台でも最大の効果が得られるように、地域ごとの日射量を調べ、年間の平均値となる最適傾斜角を知る必要があります。
また、ソーラーパネルを設置する角度や地域以外にも、周囲の環境、屋根の形状などの条件と自宅が合っているのかしっかりと照らし合わせて検討するのが需要。疑問や不安を一つずつ消していけば、太陽光発電導入後に後悔するリスクを減らせます。