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太陽光パネル設置基準のJIS規格とは?屋根に設置できるかどうかは「離隔距離」で決まる!

太陽光パネルの設置基準とは? 設置

太陽光パネル設置の際、屋根の高さや最大風速をはじめとする様々な設置条件が出てきますが、これらは何を基準に決定されるのでしょうか。

実は「JIS規格」と呼ばれる規定により、太陽光発電設備設置基準が一部更新され、建築主や太陽光発電の設置者は、新たなガイドラインに従うことが求められます。

本記事では、そんな太陽光パネルの設置基準について詳しく解説していきます。

最新のJIS規格のポイントと、実際の設置基準の適用例を見ていきましょう。

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太陽光パネルの設置基準におけるJIS規格とは?

太陽光パネルの設置基準におけるJIS規格とは?

太陽光パネルは屋外に設置するため、台風や落雷、水害などの自然災害時に、破損や事故を起こしやすい製品では安全性が保たれません。

そのため、太陽光パネルにはJIS規格が定められています。

JIS規格とは?

JIS規格は、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略で、産業標準化法に基づいて定められている産業製品に関する日本独自の国家規格。自動車や電化製品を始め、ノート、トイレットペーパー、家具など身近にあるあらゆる製品についています。

JIS規格は規格を定めるもの

JIS規格は製品の安全性を認めているだけではありません。「規格」の名前のとおり、製品のサイズなどを標準化することで、メーカーによって製品にバラつきが出るのを防いでいます。

例えばパソコンのキーボードは、ひらがなや記号などの配列がJIS規格で決められています。これにより、キーボードの買い替えなどで以前とは違うメーカーの製品を使用しても、使い勝手に問題は起こりません。もしキーボードにJIS規格がなく、各メーカーがそれぞれにひらがなを配列していたら、慣れるまで苦労するのは安易に想像できるでしょう。

太陽光パネルの場合、パネルがJIS規格に適合しているだけではなく、パネルを屋根に取り付けるための施工工事にもJIS規格が定められています。

太陽光パネルの設置基準の具体例を紹介

太陽光パネルの設置基準の具体例を紹介

財団法人新エネルギー財団住宅用太陽光発電システム施工品質向上委員会は、「住宅用太陽光発電システム設計・施工指針及び同指針補足」を作成し、太陽光発電の設置に適した条件を公表しています。

ここでは、特に重要とされる設置基準について詳しく解説します。

築年数

4kWの住宅用の太陽光発電の場合、1枚15㎏の標準的な太陽光パネルであれば20枚程度の設置が必要です。15㎏×20枚で屋根には300㎏の重量がかかりますが、屋根が重くなると重心が高くなるため耐震性が低下します。

新築の住宅であれば、最新の耐震基準をクリアしているため、太陽光パネルの設置に問題がない場合がほとんど。しかし、築年数が古い住宅では、太陽光パネルの設置によって屋根が損壊したり、地震時に倒壊する恐れがあります。

それでは、太陽光パネルの設置に問題がないとされる築年数とは、一体どのくらいなのでしょうか。

そこで基準となるのが建築基準法です。現在、適用されているのは1981年6月1日より施行されている「新耐震基準」。これは、震度6強~7の揺れでも家屋が倒壊や崩壊しない水準とされるものです。実際に、一般社団法人日本耐震診断協会によると、1995年に起きた阪神・淡路大震災では、被災した木造家屋の98%が1981年以前の「旧耐震基準」で建てられた家屋でした。

また、法律改正後の「新耐震基準」で建てられた住宅であってもいくつか問題点があるとして、建築基準法は2000年にさらに改正されてます。「2000年基準」や「新・新耐震基準」と呼ばれており、2000年6月1日以降に建築確認申請が行われた建物(木造のみ)に適用されています。

このようなことから、1982年以前に建てられた住宅では現行の建築基準法を満たしておらず、太陽光パネルの設置による倒壊や損壊の危険性は高いと言わざるを得ません。

一方で、1982年以降の「新耐震基準」や2000年以降の「2000年基準」を満たしていれば絶対安心なのかといえばそうとも言い切れないのが現状です。2016年4月14日に起きた熊本地震では震度7が2日続けて発生する異例の事態となり、「新耐震基準」や「2000年基準」を満たしていた住宅でも被害に遭ったからです。

そのため、太陽光パネルの設置に築年数は一つの大きな基準となるものの、熊本地震のような大地震が起これば築年数に限らず、倒壊の損壊の危険は0ではありません。自宅の耐震性に不安を感じる場合は、専門家に耐震強度を確認してもらうのが良いでしょう。

なお、屋根以外の場所(庭などの平地)に太陽光パネルを設置する場合は、建物の倒壊の恐れはないので自宅の築年数を気にする必要はありません。

積雪量

屋根に太陽光パネルを設置する住宅用太陽光発電では、冬の期間は積雪量によって発電量が大きく左右されます。また、太陽光パネルの重み+雪の重みで屋根や住宅が損壊する可能性も。

そのため、太陽光発電を販売しているメーカーは設置基準を設けており、中でも「垂直積雪量」は設置基準の大きな判断材料とされます。

「垂直積雪量」とは、建築基準法における積雪に関する基準で、国土交通省の資料によると、国土交通大臣が定める基準に基づいて特定行政庁が規則で定める数値になります。たとえば、北海道であれば札幌市南区の「垂直積雪量」は190㎝。

これに対し、太陽光発電を販売しているメーカーは、独自に以下のような基準としています。

メーカー 垂直積雪量
シャープ 200㎝未満
サンテック 150㎝未満
パナソニック 100㎝未満
東芝 99㎝未満

北海道札幌市南区の場合、「垂直積雪量」をギリギリ満たしているのはシャープのみ。サンテックやパナソニックの太陽光パネルは設置基準外ということになります。

なお、多雪地帯の設置基準には「垂直積雪量」だけではなく、「屋根の傾斜角」や「屋根材の種類」などもあるため、「垂直積雪量」が基準内であっても「屋根材の種類」によっては設置基準外となる場合もあります。

地域の最大風速

太陽光パネルの耐風圧は「JIS C 8990」(JIS規格)により、耐風圧荷重が2,400Paと定められています。風速に換算すると毎秒62メートルに耐えうる設計です。台風の上陸が多い沖縄や鹿児島などの南の地域では、過去50年間に風速62メートルを超える暴風は観測されていません。

また、太陽光パネル自体の耐風圧だけではなく、取り付け工事においても強度が「JIS C 8955」との基準があります。これは、地域によって基準風速が決まっており、その範囲内であれば設置が可能というもの。

基準風速とは国土交通省が地域によって定めた値で、過去の台風の記録に基づいて50年に1度の大型台風が上陸したことを想定し、30m/s~46m/sの範囲内で決められています。たとえば、東京都23区は34m/s、沖縄全域は46m/sです。

屋根の高さ

メーカーが定めている屋根の高さの設置基準には、以下のようなものがあります。一例として参考にしてください。

  • 太陽光パネルの設置高さ(屋根の一番高いところ)が13m以下の場合、屋根の外周より200㎜を除く範囲

一般的な2階建ての住宅の場合、屋根の一番高いところでも7~9mが平均のため、例に挙げたメーカーであれば設置の高さが基準外にはなりません。

ただし、急勾配の屋根であれば10mを超えるケースも少なくないため、メーカーの設置基準によっては設置不可となる可能性があります。

モジュール設置範囲

太陽光パネルは、屋根一面に敷き詰めて設置ができません。「最低隔離寸法」によって、外周から離す距離が決まっているからです。「最低隔離寸法」は、太陽光パネルを設置する屋根の高さに応じて、各メーカーが設置基準を設けています。

また、屋根に天窓などの障害物がある場合、太陽光パネル(モジュール)の設置では障害物などからも距離をとる必要があるので注意してください。

パナソニック製の太陽光パネルは、障害物からの距離を原則300㎜と定めています。これを「離隔距離」といいます。「離隔距離」は安全性の観点から認識しておくべき事項のため、次の章でより詳細にご紹介しましょう。

太陽光パネルを屋根に設置できるかどうかは「離隔距離」で決まる

太陽光パネルの屋根における離隔距離とは

天窓や煙突が付いている屋根を見ると、天窓や煙突の周囲には太陽光パネルは設置されていません。これは、太陽光パネルには「離隔距離」が設置条件に設けられているからです。

それでは、「離隔距離」とは一体どのようなものなのでしょうか。

離隔距離の意味

「離隔距離」とは、複数の対象物の間に置かれる一定の距離という意味です。

主に電気設備や火気設備で使用される用語で、「人」対「物」ではなく、「物」対「物」の距離が対象。

電気設備がある場所では、低圧と高圧のケーブルの混触が原因で火災が起こる恐れがあるため、距離をとる必要があります。

太陽光パネルの搭載量・設置可能範囲をシミュレーション

太陽光パネルの搭載量(枚数)や設置可能範囲は、以下の計算方法で算出できます。

例を挙げてご紹介します。

建物寸法が7,500㎜×5,000㎜の場合、まずは縦・横の寸法に屋根勾配に応じた係数をかけてください。勾配と係数は次の表を参考にしてください。

屋根勾配 係数
3寸 1.044
4寸 1.077
4.5寸 1.097
5寸 1.118
6寸 1.166

4寸屋根であれば、7,500㎜×1.077=8,077㎜、5,000㎜×1.077=5,382㎜。

ここから、屋根に設置できる太陽光パネルの枚数を割り出してみました。太陽光パネルのサイズはメーカーによって異なるため、サイズの違う2社のメーカーを掲載しているので参考にしてください。

なお、離隔距離は300㎜とし、上下左右それぞれに設けています。

メーカー サイズ設置可能枚数1枚あたりの発電量
シャープ(NQ-254BM) 1,265㎜×1,055㎜ 20枚 254W
パナソニック(VBM375EJ01N) 1,765㎜×1,048㎜ 12枚 375W

シャープの太陽光パネルは、1枚254Wの発電量なので20枚で5kWの出力が見込めます。パナソニックはシャープに比べてサイズが大きいため設置できる枚数は少ないですが、1枚の発電量が大きく、合計で4.5kWの出力になると分かりました。

太陽光パネルの設置に適した条件

太陽光パネルの設置に適した条件

太陽光発電は、ソーラーパネルに太陽光が当たらないと発電しません。

そのため、住んでいる地域や屋根に対する環境などによっては、設置しても思うような発電量を得られない可能性があります。

一般的に、太陽光パネルの設置に向いているのは以下の条件となります。

  • 積雪量が少ない
  • 日当たりが良い
  • 塩害や水害リスクが少ない

上記の条件をひとつでも満たしていない場合には、太陽光発電はやめたほうがいいと言えるでしょう。

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太陽光パネルの各メーカーにおける設置基準

太陽光パネルの各メーカーにおける設置基準

メーカーの設置基準に満たない条件で、太陽光パネルを設置した場合、想定された発電量よりも少ない発電量しか得られない可能性があります。

また、保証対象外となり、故障や交換などは実費になるケースも。

こうしたトラブルは、販売や施工を行う業者が太陽光発電に関する知識が乏しい場合もありますが、大半は「条件に合わないことを分かっているのに、売上がほしいゆえに無理に契約を行う」悪徳業者です。

被害に遭わないためには信頼できる業者を選ぶだけではなく、自分も知識をつけ、主要メーカーの設置基準を把握して不安や疑問を事前に解消しておく必要があるでしょう。

パナソニック

項目 設置基準
積雪量
  • 100㎝未満
基準風速
  • 46m/s以下(屋根置き)
  • 38m/s以下(野地ピタ)
高さ(地上高)
  • 13m以下(屋根置き)
  • 11m以下(野地ピタ)
モジュール設置範囲
  • 軒・棟・ケラバ・隅棟より200mm以上(屋根置き)
  • 建物高さ、風速により異なる 棟・ケラバ・隅棟より400mm以上(野地ピタ)
塩害
  • 海水が直接かからない場所に設置であれば可(品番によって異なるため、詳細はこちらを参照)
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シャープ

項目 設置基準
積雪量
  • 200㎝未満
基準風速
  • 40m/s以下
    (40m/s以上は要確認)
高さ(地上高)
  • 13m以下
モジュール設置範囲
  • 棟・ケラバから300㎜以上、及び軒から400㎜以上
塩害
  • 海水が直接かからない場所に設置であれば可
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ソーラーフロンティア

項目 設置基準
積雪量
  • 139㎝以下
基準風速
  • 38m/s以下
高さ(地上高)
  • 10m以下
モジュール設置範囲  

  • 棟から200㎜以上、ケラバ・軒から400㎜以上、隅棟から100㎜以上(スレート材)
  • 棟から300㎜以上、ケラバ・軒から400㎜以上、隅棟から100㎜以上(瓦)
塩害
  • 500m以上(潮風が直接あたる場所には設置不可)
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東芝

項目 設置基準
積雪量
  • 99㎝未満
基準風速
  • 40m/s以下
高さ(地上高)
  • 13m以下
モジュール設置範囲
  • 棟から160~470mm以上、ケラバから250mm以上、軒から250~1170mm以上
塩害
  • 海岸から300m以上
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太陽光パネルの設置基準に関係したよくある質問

太陽光パネルの設置基準に関係したよくある質問

太陽光発電の設置は、国や自治体への申請や許可を得ずに行っても良いのでしょうか。

また、自宅に太陽光発電を設置した後で、設置不可の地域なので取り外してくださいといわれたら、初期費用が無駄になってしまいます。

トラブルを未然に防ぐには、契約の前にこうした疑問を解決しておくのが良いでしょう。

太陽光発電の設置には許可がいる?

産業用太陽光発電(10kW以上)や、農地を転用して太陽光発電を設置する場合などの場合、自治体などによっては許可が必要となります。

また、令和5年3月20日より、出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備については、経済産業省に届出義務があります。同様に、これまでは500kW以上2,000kW未満の太陽光発電所が対象であった「使用前自己確認」が、10kW以上2,000kW未満に拡大されているため、大規模な発電所を設置している場合は注意してください。

近年はSDGsの取り組みとして、企業が太陽光パネルを屋上設置し、自家発電によって電気を賄う例が増えてきました。この場合、架台の下を屋内的な用途として使用せず、メンテナンス以外に人が立ち入らないという条件を満たせば確認申請は不要となります。

なお、自宅の屋根や庭に設置する住宅用太陽光発電は、設置に許可は必要ありません。

太陽光発電を設置できない場所は?

これらは農地法によって使用目的に制限があり、たとえ自分の土地であっても勝手に太陽光発電を設置してはいけません。ただし、地目変更を行えば設置は可能です。

また、京都府亀岡市など、自治体によっては景観保全などの理由で、独自に設置を制限しているところも。太陽光発電を設置する場所が禁止エリアに該当していないか、確認してください。

産業用太陽光発電については、傾斜地設置型・営農型・水上設置型などの特殊な設置形態において、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)よりガイドラインが公表されているので参照にしてください。

軒先ギリギリまで設置できる?

軒先ギリギリまでの太陽光パネルの設置については、メーカーによって見解や対応が分かれており、設置できるメーカーもありますが、NGとしているメーカーもあります。

太陽光パネルの設置基準は複数ある

太陽光パネルの設置基準は複数ある

高騰し続ける電気代に辟易し、電力確保の自衛策として太陽光発電の導入を検討している人は増えています。

住宅用太陽光発電の場合、多くは屋根に太陽光パネルを設置しますが、太陽光パネルにはメーカーごとに設置基準があります。どんな屋根でも、そしてどんな場所でも必ず太陽光パネルが設置できるとは限りません。

施工会社によっては設置不可にも関わらず、「大丈夫ですよ」と強引に契約を勧めてくるケースもあります。悪徳業者に騙されることのないよう、設置基準や設置場所について時間をかけてしっかり学んでおきましょう。

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