太陽光パネルってリサイクルが義務化されたの?
破棄問題が世界的に問題になっているから、太陽光パネルのリサイクル義務化が話題に上がることも多くなったよね!
太陽光パネルのリサイクルは義務化される?
太陽光パネル(ソーラーパネル)は環境に優しく、家計の助けにもつながる素晴らしい発電システムですが、廃棄が困難という側面も持ち合わせています。
廃棄を行わずリサイクルして活用する流れが日本でも進んでおりますので、その実情を見ていきましょう。
リサイクル義務化の背景
太陽光パネルのリサイクルが義務化された背景には、パネルの寿命が尽きた場合の廃棄による環境汚染の懸念があります。太陽光パネルには、有害物質が含まれており、放置されたり、不法投棄されると環境に悪影響を与えます。
処分方法によっては、太陽光パネルから猛毒が溢れ出す可能性もゼロではないのです。
環境省は太陽光パネルの出荷量から算出した廃棄量は、太陽光パネルの寿命が25年の場合、2040年前後に年間80万トン程度になると予想。
しかし、パネルのリサイクルは難しい課題があります。
太陽光パネルは、ガラス、金属、有害物質などの素材で構成されており、分離してリサイクルする必要があります。また、大量の廃棄物が発生するため、適正な処分方法を確立する必要性も求められます。
そのため、大手企業や関連銘柄などの企業が、リサイクル技術の開発やリユース事業に取り組んでいると同時に、環境省やnedoも、リサイクル率の向上や技術の普及を促進するための取り組みを進めています。
義務化が施工されるのは2030年代後半
環境省は、2021年5月に太陽光パネルのリサイクル義務化の検討を始めました。
この義務化は、2030年代後半を目標に適切な処理制度を整備することが狙いです。
具体的には、建設リサイクル法の改正により太陽光パネルを対象品目に追加し、解体業者を中心に再資源化を求める案を中心に制度設計を進めます。
環境省では、太陽光パネルに絞り込んだ新法制定も視野に入れ、2024年の通常国会に法案が提出される予定です。
廃棄費用積立の義務化は既に始まっている
太陽光パネルの廃棄費用積立の義務化は、実は日本で既に始まっています。
太陽光発電は1990年代後半から日本での普及が始まり、2011年の東日本大震災をきっかけに注目が一気に高まりました。2012年には国内導入件数が100万件を突破し、FIT制度の導入により、太陽光発電の普及は一気に加速。
IEAの2021年の年間太陽光発電設備導入量データによると、日本は世界5位で6.5GWとなっています。
順位 | 国 | 年間導入量 |
---|---|---|
1位 | 中国 | 54.9GW |
2位 | アメリカ | 26.9GW |
3位 | EU(欧州連合) | 26.5GW |
4位 | インド | 13GW |
5位 | 日本 | 6.5GW |
6位 | ブラジル | 5.5GW |
7位 | オーストラリア | 4.6GW |
8位 | 韓国 | 4.2GW |
9位 | メキシコ | 1.8GW |
※2021年の年間導入量ランキング(累積導入量ではありません)
太陽光発電がこのように爆発的に普及する中で、寿命が終わった後の廃棄が問題となりました。役目を終えた太陽光パネルは適切なリサイクルや処理が必要ですが、技術的に難しく、うまくリサイクルできないケースもあります。
そうなった際に太陽光パネルが放置・不法投棄されないように、太陽光パネルの廃棄費用積立が義務化されるようになりました。
福岡県が全国のモデルケースとなる回収システムを立案
福岡県が太陽光パネルのリサイクルについて、全国のモデルケース「廃棄太陽光パネルスマート回収システム」を立案しました。福岡県は太陽光発電の導入容量が全国4位であり、そのピーク排出を2036年と設定し、その年間排出量は1万トンを超えると予想されています。
太陽光パネル廃棄に関する懸念
太陽光パネルのリサイクルが重要視される理由は、単純に破棄を推奨できない下記のような背景があるためです。
- 相次ぐ不法投棄で太陽光パネルの墓場ができる
- 不適切な処理による有害物質の流出
- 廃棄量ピーク時の最終処分場のひっ迫
それぞれ見ていきましょう。
相次ぐ不法投棄で太陽光パネルの墓場ができる
太陽光発電によって得られる電気は、再生可能エネルギーとして注目されています。
しかし、そういった環境に優しい一面とは対象的に、処分時に発生する光陽光パネルの有害物質が問題視されています。
有害物質を含む太陽光パネルを適切に処理するためには多大なコストがかかるため、事業者が所有する土地で太陽光パネル事業が終了した場合、パネルが有価物として扱われず、適切な処理が行われずに放置されたり、不法投棄されている実情もあります。
このような問題に対処するには、事業者が売電によって得た収入の一部を廃棄費用としてあらかじめ積み立てておくことが有効です。
太陽光発電の導入前に、太陽光パネル1枚あたりの処分費用を知っておくことも大切でしょう。
不適切な処理による有害物質の流出
太陽光パネルには、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれているものの、有害物質の情報が廃棄物処理業者に伝わっていないことが原因で、適切な処分が行われていないケースも珍しくありません。
その結果、有害物質が流出し、地球環境に影響を及ぼしている側面があるのも事実。
この問題を解決するためには、太陽光パネルに含まれる有害物質の種類に応じた適切な処分が必要です。具体的には、管理型最終処分場での埋め立てが望ましいとされています。
一方で、有害物質の拡散が心配される背景には、太陽光パネルを設置する事業者が有害物質の含有を知らなかった、あるいは認識はしていたが確認していなかったケースがあることも指摘されています。
また、太陽光パネルメーカーが積極的に情報開示をおこなっていないケースもあります。
このような問題を解決するためには、太陽光パネルのリサイクルが重要です。太陽光パネルリサイクルにより有害物質を適切に処分し、再生可能エネルギーとして再利用することができます。
廃棄量ピーク時の最終処分場のひっ迫
使用済み太陽光パネルは、産業廃棄物の最終処分量全体の6%にも達するため、最終処分場のひっ迫が懸念されています。
この問題の解決策として、処分ではなくリサイクルが注目されており、低コストでリサイクルを実現する効率的な実施が求められています。
日本でも太陽光パネルを製造する工場や設置する上場企業に対して、リサイクルの必要性を啓蒙し、積極的な取り組みを促されている状況です。
想定される太陽光パネルの廃棄量
太陽光パネルの排気量は、今後右肩上がりで増加すると予測されています。
具体的な数値で説明すると、2018年の太陽光パネルの廃棄量に比べ、2030年には約200倍、2039年には約275倍にも増加すると予測されています。これは太陽光パネルの需要が増える中で、設置された太陽光パネルが老朽化したり、作業不具合や天災などの影響で早期に廃棄されることも考慮された数値。
環境省の試算によると、2020年の使用済太陽電池モジュールの排出量は2,808トンで、2030年には28,788トン、2039年には775,085トンになるとされています。
775,085トンと言うと太陽光パネル約3,875万枚分に相当し、地球を1周半するほどの距離になる計算です。
太陽光パネル廃棄に関する課題
太陽光パネルの破棄問題に関しては、市場全体で解決へ向かう必要があります。
具体的にどのような課題が挙がっているのか、1つずつ見ていきましょう。
廃棄までのプロセスを事業者ごとに明確化する
太陽光パネルのリサイクルが推奨される中で、現在は一般的な破棄までの適切なルートが整備されていません。一部の専門業者がリサイクルを行っていますが、まだ市場が形成されているとは言い難い状況です。
太陽光発電システムは、太陽光パネル、パワーコンディショナー、架台、配線、逆変換器、電気設備などから構成されていますが、それぞれの部品毎に適切な処理方法は異なります。
それらの処分プロセスの仕組みを国が主導のもと、スピード感を持って行うべきでしょう。
有害物質の処理方法に関する情報共有
太陽光パネルを設置する事業者は、有害物質の含有量について把握し、環境や人の健康に悪影響を及ぼす可能性をできる限りなくすために、適切な処分方法を知る必要があります。
また、太陽光パネルメーカーも、積極的に有害物質の情報を開示することが求められています。
今後に備えてリサイクル・リユースへの意識づけ
今後太陽光パネルの処分量が増加することが目に見えている中で、現状既に太陽光パネルの最終処分場がひっ迫しているため、早急にリユース・リサイクルを促進する必要があります。
効率的なリサイクル・リユースの方法はまだまだ研究段階にありますが、その意識づけを行っていくこと自体に意味があると言えるでしょう。
太陽光パネルをリサイクルするメリット
太陽光パネルを最資源としてリサイクル活用ことには、様々なメリットがあります。
- ほぼ100%リサイクル可能
- 素材資源の回収と再利用
- 発電が可能ならリユース品として中古販売
- 進化したリサイクルの自動化
それぞれの恩恵を確認していきましょう。
ほぼ100%リサイクル可能
太陽光パネルのリサイクルは、素材を再利用することにより、ほぼ100%リサイクルが可能です。
廃棄品を各素材に分別・精製し、再び素材として販売できるようにすることで実現します。
素材資源の回収と再利用
太陽光パネルのリサイクル工程で、ガラス、アルミニウム、銅などの素材ごとに分別し、それぞれ再利用可能な状態に戻すことで資源を節約し、廃棄物の削減に貢献するとともに、素材資源の回収と再利用につながります。
発電が可能ならリユース品として中古販売
太陽光パネルに発電能力が残っているなら、発電能力が下がったとしてもリユース中古品として販売することも不可能ではありません。
中古品として販売されることにより、買い手は新品に比べて安価に入手できるメリットがあります。
また、太陽光パネルのリユースにより、環境に負荷をかけることなく、資源の有効活用につながります。
ただし、太陽光パネルに内部破損がある場合や発電能力がほとんどない場合は、中古品として販売することは難しいでしょう。
進化したリサイクルの自動化
太陽光パネルのリサイクルを自動化するために、現在は様々な技術が開発されています。
例えば自動分別システムを使用すれば、太陽光パネルをリサイクル装置に投入するだけで、アルミ枠、ガラス、金属、バックシートなどを自動的に選別できます。また、太陽電池の種類に応じて、湿式や乾式のクラッシャーを使用して、パネルを粉砕し、比重差や風力、振動などで選別することも可能です。
これらの方法を使用して自動化が進めば、リサイクルプロセスがより迅速かつ効率的に行われますので、人為的なミスや事故を減らしながら太陽光パネルのリサイクル環境が整うでしょう。
世界の太陽光パネルのリサイクル事情
太陽光パネルのリサイクル事情について、世界的にはまだ取り組みが進んでいるとは言い難い状況です。
しかし、一部の国や企業がリサイクルに取り組み始めており、その取り組みに関する情報があります。
例えば太陽光発電先進国のドイツでは、2018年に211,142トンの太陽光パネルが設置され、そのうち7,865トンが回収されています。回収されたパネルは、ドイツ国内ソーラー会社のReiling社などの企業によってリサイクルされています。
ドイツも日本と同じように、将来的には太陽光パネルの廃棄量が増加すると予測されています。
日本の太陽光パネルのリサイクル事情
太陽光パネルのリサイクルは世界的に求められる課題ですが、日本も独自に様々な技術開発に力を入れています。
面白い技術もありますので、ひとつずつ見ていきましょう。
リサイクルシステムの効率化
日本においては、太陽光パネルのリサイクルに関する法律が整備され、メーカーや販売業者は一定の回収目標を設定し、回収されたパネルは専門のリサイクル業者によって処理されます。
しかし、太陽光パネルの回収率が低いことや、リサイクル技術の面で、まだまだ課題は多いと言えるでしょう。
太陽光パネルを衣料品に変身
太陽光パネル検査機器メーカー「株式会社システム・ジェイディー」は、太陽光パネルのリサイクル事業の一環として、太陽光パネルを衣料品に変身させるリサイクル技術を台湾のリサイクル企業や商社と協力して開発しました。
この技術は太陽光パネルや半導体の廃棄で発生するシリコンを、ケイ素繊維として再利用することで実現しており、ケイ素繊維とは、スポーツウェアやダウンジャケットなどの衣料品に再利用できる繊維のこと。
太陽光パネルが耐熱性や保湿性に優れた衣類素材に生まれ変わるのです。
太陽光発電のリサイクル社会は必ず来る
今後、太陽光パネルの廃棄量は増加すると予測されており、リサイクル事業の発展がより一層求められます。
太陽光パネルは再利用が可能な資源であり、リサイクルによって再び利用できる部品や材料を回収することができます。
しかし、多くの人がそのことを知らずに、処分費用を払って破棄したり、悪質な利用者は不法投棄を行っている現状があります。これは環境にとって悪影響を及ぼす大きな問題。
世界的にもSDGsの環境保護の考えが一般化する中で、太陽光パネルのリサイクル社会は近い将来に日本でも必ず来ると言えるでしょう。