農地で太陽光発電をやりたいんだけど、なにか問題ってあるかな?
農地は住宅に太陽光パネルを設置する場合よりも、かなりトリブルが起こりやすいから注意してほしいな。
太陽光発電を農地に設置する前に起こるトラブル
太陽光発電を農地に設置する場合には、工事などの建設面よりも、近隣住民などの対人部分で頭を悩ませることが多くなっています。
具体的には、下記のようなトラブルが発生します。
- 周辺住民からの反対意見
- 農地を購入する場合は手続きが複雑で長期にわたる
- 売買契約後に白紙に戻される可能性もある
- そもそも太陽光発電に利用できない可能性がある
それぞれの問題を詳しく掘り下げて見ていきましょう。
周辺住民からの反対意見
太陽光発電の周辺住民からの反対意見は、多岐にわたります。
地方で隔離された地域であればあるほど、新しいことを初めることに頭ごなしに反対する人が必ず一定数存在します。
たとえ個人が建設する小規模な太陽光発電であっても、下記のような意見がよく挙がります。
農地に太陽光発電設備を設置するには、こういった反対意見に真摯に向き合い、きちんと理解してもらう必要があります。
農地を購入する場合は手続きが複雑で長期にわたる
農地を購入して太陽光発電を初める場合は、手続きが複雑でかなり長期に渡る可能性が高いです。
まず購入したい土地の位置を特定し、所有者を確認しなければなりません。
次に、購入者と所有者の双方が購入契約を締結するために土地の所有者にアポイントを取り、売却を促す必要があります。売却に賛成してくれるようなら、購入請求書を作成し、所有者に提出します。
請求書が承認されると、購入者は土地登記所に通報し、所有権を変更するための手続きを行う必要があります。土地登記所が承認した後、購入者は購入金を納入します。
ここまでの全ての手続きが完了して初めてあなたは土地の所有者となるわけですが、双方の都合により、最初の売り手へのアポイントから売却完了まで数ヶ月かかることもザラにあります。
その間に売り手の売却の意思が変わることも多々ありますので、どれだけスムーズに売買が完了するかも重視しなければいけません。
売買契約後に白紙に戻される可能性もある
土地の売買契約後であっても、売却話が白紙に戻る危険性は常にあります。
土地の取引には、買い手と売り手の二人が関与しています。どちらか一方が売買契約を破棄するか、売買契約条件を満たさない場合、契約を白紙に戻す可能性があるのです。
そのため、土地の売買契約を結ぶ際は、それぞれの状況をよく確認して、危険性を抑えるよう努める必要があります。
そもそも太陽光発電に利用できない可能性がある
山間部や水路の近くの砂利地などの一部の土地では、太陽光発電を利用することが物理的に難しい場合があります。
また、森林や自然保護地帯などの建設が禁止されている場所でも、太陽光発電を利用することができません。
太陽光発電を農地に設置した後に起こるトラブル
農地に太陽光発電の設置が行える環境にあったとしても、設置後に下記のようなトラブルが発生する可能性もゼロではありません。
- 太陽光パネルの反射光による光害
- 太陽光発電システムによる事故
- 近隣農地が日照不足になる
いずれも事前に知っておけばきちんと対策を行った上で太陽光発電の設置が行なえますので、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
太陽光パネルの反射光による光害
太陽光パネルは、光を反射して周囲を照らしてしまいます。
設置場所やパネルの角度によっては、反射光が建物や家の中に入って室内を照らしてしまうこともあるでしょう。近隣住民にとっては大きなストレスとなります。
そういった光害を防ぐためには、太陽光パネルの反射光を抑えるための対策が必要です。
例えば反射光を抑えるために、反射防止コーティングを太陽光パネルに施すなどが考えられます。また、反射光を防ぐために遮蔽物を設置するなどの対策も有効でしょう。
太陽光発電システムによる事故
太陽光発電設備には、当然ながら電気が流れていますし、設備機器の中には鋭利なものや尖ったものもあるので、子供が侵入して遊んでしまうと大変な事故になる可能性もあります。
必ず柵やフェンスを作り、事故を防止する必要があります。
また、設置したソーラーパネルが台風によって吹き飛ばされ、近隣住民の住宅に衝突する可能性もあります。実際にそういった被害は各地で発生しているため、そういった被害の可能性を減らす対策も必要です。
近隣農地が日照不足になる
平坦な土地であれば可能性は低いものの、近隣の土地の光を太陽光パネルによって遮蔽してしまう可能性もゼロではありません。
ソーラーパネルを正しく設置して適切な高さを確保することで、問題を解決することができますので、こちらはそこまで大きな問題にはならないでしょう。
ただし、高低差のある土地の場合には、下の土地に太陽光がほとんど届かなくなるケースもあるため、しっかりと影については確認する必要があります。
農地で太陽光発電を行う方法
農地で太陽光発電を行う場合には、下記の2つによって必要な申請などが異なります。
- 農地で太陽光発電のみを行う
- 農地で太陽光発電も行いながら農業も行う
農地の形状によっては、農業との併用は難しい可能性もありますが、ここも事前に決めておくと良いでしょう。
農地転用をして太陽光発電のみを行う
今後農業は行わず、完全に太陽光発電のみでその土地を活用する場合には、農地転用という手続きが必要になります。この手続きは任意ではなく、「農地転用法」という法律によって定められている、必ず行う必要がある手続きです。
農地転用法では、農地の転用を実施する際に、農業環境を維持し、農業活動をさらに活性化するための手段を取ることが義務づけられています。また、農地転用法では、農地転用後の再開発に伴う環境への影響を把握するための環境評価なども義務づけられています。
農地の一時転用をして農業と太陽光発電を両立する
太陽光発電も設置しながら、農業も同時に同じ土地で行う場合は、農地の一時転用という手続きが必要になります。任意ではなく、必ず申請が必要な手続きです。
ソーラーシェアリングと呼ばれるこの方法は、農地の上空部分に太陽光パネルが設置されることになるので、それなりの支柱が必要となります。
結果的に近隣の農地に影を落としやすくもなるため、そのあたりも考慮しなければいけません。
自分で太陽光発電を設置する以外の農地の活用方法
農地をすでに所有していて利用の用途に困っている場合には、下記のいずれかの選択肢がおすすめです。
- 不動産会社に農地を売却
- 太陽光発電事業者に農地を売却
不要資産を持っていても固定資産税や、余計なリスクが増えるだけですので、自分で太陽光発電を設置する以外の選択肢にも目を向けてみましょう。
不動産会社に農地を売却
農地を売却したい場合、不動産会社を通じて売却することが最も簡単で便利な方法です。
まずは自分の農地を扱う不動産会社を探す必要があります。インターネットで、自治体や近隣の不動産会社を検索してみましょう。友人や家族からのアドバイスを得ることも有効です。
不動産会社と契約を結ぶ前に、農地の地価や販売可能性などを十分に調査し、不動産会社に提案してください。不動産会社は購入者を探してくれますが、売却価格の決定や手続きなどは、自分で行う必要があります。
太陽光発電事業者に農地を売却
自分で太陽光発電を農地に立てなくても、太陽光発電事業者に土地を買い取ってもらう選択肢もあります。
太陽光発電事業者に交渉が可能であれば、ただの農地として売却するケースと比較して、非常に高い価格を提示することが可能です。
自分で農地に太陽光発電の設備を設置しないなら、太陽光発電事業者に売るのが良さそうだね。
そうね。売却金額も高めだから、損するということはないんじゃないかな。
農地を太陽光発電事業者に売却するメリット
農地をただの農地として売るのではなく、太陽光発電用の土地として太陽光発電事業者に売却することで、下記のようなメリットが得られます。
- 地方の価値の低い土地でも売却できる
- 相場よりも高く買い取ってもらえる
それぞれ売り手にとっては非常に嬉しいお話ですよね。
地方の価値の低い土地でも売却できる
本来であれば誰も買い手が付かないような価値の低い土地であっても、太陽光発電が設置でき、継続的に収益が見込める土地ということで、売却の可能性が大きく高まります。
辺鄙な土地であればあるほど人的リスクも少なくなりますので、様々な土地の売り手として、様々な訴求を行えるでしょう。
などなど、本来はデメリットだったことが、太陽光発電用の土地となるとメリットとなることが多々あります。
相場よりも高く買い取ってもらえる
農地として売却するよりも、太陽光発電用の土地として売却したほうが、圧倒的に高い価格で売却が可能です。
太陽光発電は農業と異なり、一度設置してしまえば、後は年に数回のメンテナンスのみで運用が可能です。
耐用年数も長く高寿命なので、将来的に設置者は長らく収益を上げることが可能。その分投資コストも高く検討されています。
農地を太陽光発電事業者に売却する流れ
農地を太陽光発電事業者に売却する場合、下記のような流れで進むこととなります。
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STEP1複数の太陽光発電事業者に査定をしてもらう
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STEP2査定後の買取価格を確認する
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STEP3売却先を決定する
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STEP4売買契約を締結する
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STEP5太陽光発電事業者が事業申請を行なって許可を受ける
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STEP6売買代金を決済して農地を引き渡す
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それなりに長いステップが必要ですので、ひとつずつの工程を知っておくと良いでしょう。
複数の太陽光発電事業者に査定をしてもらう
農地を太陽光発電事業者に売却する際には、必ず複数の事業者に見積もりを取りましょう。
一社だけだと、その見積もりが正当なものかどうかの判断がつきません。
中には、専門知識がないのを良いことに、足元を見た価格を提示してくる事業者もゼロではありません。
査定後の買取価格を確認する
農地の査定結果が出たら、各社の買取価格を比較してみましょう。価格が高いことはもちろんですが、査定までのスタッフの対応もしっかりと比較事項に入れましょう。
過去の説明内容と矛盾が生じるような業者は排除して、信頼のおける業者を選別することが大切です。
売却先を決定する
買取業者の比較検討をした結果、最も信頼が置け、買取価格にも納得がいく業者を決定しましょう。
決定した業者以外にも候補に残った業者があると思いますが、それらの業者には「一旦考えさせてください」と一言入れて、寝かせておくのがベストです。
今回選択した売却先と話を進めても、場合によっては話が頓挫する可能性もゼロではないためです。
そうなったときに、別の業者に断りを入れてしまっていると、再度売却話を持ってったときに不利になってしまいます。
売買契約を締結する
買取業者との内容のすり合わせを終えたら、売買締結を行いましょう。
なお、売買締結が完了したあからと言って、この時点で土地の引き渡しや精算が行われるわけではありません。
基本的にこの時点では、買い手から手付金が支払われる形となります。
太陽光発電事業者が事業申請を行なって許可を受ける
買い手側である太陽光発電事業者が経済産業省や電力会社などに、様々な申請を行います。
最低でも数ヶ月はかかりますので、気長に待つ期間となります。
売り手側は進捗具合が全く分かりませんので、定期的に連絡を入れてもらうことを約束事にしておくと良いでしょう。
基本的には、この事業申請が通過した後に、残金を決済して取引が完了する形となります。
売買代金を決済して農地を引き渡す
事業申請が無事に通過したら、いよいよ土地の引き渡しを行います。
残金の支払いと土地の引き渡しを同日に行い、取引が完了となります。
実際に土地の所有権が完了した登記は後日行政書士から送られてくることになりますが、取引はこれで完了です。
太陽光発電用地として土地を売買する注意点
太陽光発電事業者に太陽光発電用地として土地を買い取ってもらうとしても、下記の点は売り手側でも最低限確認しておく必要があります。
- 太陽光発電向きの農地か確認する
- 農地転用が可能な土地か確認する
- 信頼できる太陽光発電事業者か見極める
- 売買契約書類をしっかり確認する
- 売買契約書に特約を追加しておく
全て買い手側に任せきりにすると、結果的にとんでもない損失を被る可能性もあるため、自分で動く部分は動くようにすると良いでしょう。
太陽光発電向きの農地か確認する
太陽光発電事業者に買取査定に出す前に、可能であれば下記の点を見直してみましょう。
- そもそも太陽光発電を設置できるか?
- 日照時間は充分に確保できるか?
- 近隣住民の同意は得られているか?
そもそも太陽光発電を設置できないような環境であれば、買取査定に出すという選択肢から見直す必要があるでしょう。
農地転用が可能な土地か確認する
農地転用が行えなければ太陽光発電の設置も行えないため、事前に農業委員会に農地転用が可能か、確認をとっておきましょう。
太陽光発電事業者に査定に出す前に確認しておくことで、お話もスムーズに進むはずです。
信頼できる太陽光発電事業者か見極める
担当者との相性はもちろんのこと、販売先が太陽光発電事業者であることを証明する書類を提出していただくことも重要です。
太陽光発電事業者の事業内容を把握し、きちんと実態があり、信頼に足る企業か確認しましょう。
売買契約書類をしっかり確認する
売買契約書類には、取引条件、解約条件およびその他の規定も含まれています。確認しなかった場合、売り手であるあなたが損失を被る可能性がありますので、事業者から提示された契約書類を慎重に読み、理解することが重要です。
売却金額が高額になる場合は、弁護士などの専門家に相談したり、プロの評価を受けたりすることを検討すると良いでしょう。
売買契約書に特約を追加しておく
太陽光発電用地として売却する土地の売買契約書には、停止条件付売買が加えられてることが一般的です。
買い手企業が作成した売買契約書は、当然ながら買い手に有利な内容になっている可能性が高いです。
対等な立場の売り手も条件を追加することができますので、特約として「取引が中途解除されたとしても手付金は返金不可」などの条項を付けておくと良いでしょう。
農地での太陽光発電は色々な方向に気をつけよう
太陽光発電を農地で行うには、気を付けなければトラブルに発展する項目が多々あります。
近隣住民との対人面はもちろんのこと、物理的に設置を行う太陽光発電システム自体の問題も視野に入れる必要があります。
細かい部分のお話をすると、設置前には土地の状況を検証し、配線の工事や土壌の劣化を避けるための対策を講じるなどして、設置と運用に関する注意事項を把握しておく必要もあるでしょう。
こういった問題をひとつずつ解消しながら、農地を有効活用してみてください。