バイオマス発電のメリットやデメリットは、どんなものがあるのかな?
バイオマス発電ならではの課題や将来性も気になるね!
バイオマス発電のバイオマスとは?
バイオマス発電とは、バイオマスを使って発電をすることです。それでは、「バイオマスとは何なのでしょうか?
バイオマスとは、再度利用することが可能な、動物や植物から生まれた有機性の資源のことです。
具体的には主に下記のものが、バイオマスと呼ばれます。
- 木材
- 海藻
- 生ゴミ
- 紙
- 動物の死骸
- 糞尿
- プランクトン
廃棄物系バイオマス(廃棄されるものとして発生するもの)
名称 | 詳細 |
---|---|
畜産資源 | 家畜から出る排泄物など(糞尿) |
食品資源 | 食品の加工時に出るもの、生ごみ、動植物性残さ(残りカス) |
産業資源 | パルプ廃液など |
林業資源 | 建築用木材の製材で発生する残材、建築廃材など |
下水資源 | 下水処理時に出たもの |
資源作物バイオマス(資源としての利用を考えて栽培されたもの)
名称 | 詳細 |
---|---|
糖質資源 | さとうきび、てんさい |
でんぷん資源 | 米、いも類、とうもろこし |
油脂資源 | 菜種、大豆、落花生など |
未利用バイオマス(資源として利用されずに廃棄されるもの)
名称 | 詳細 |
---|---|
林産資源 | 林業で間伐材などとして出るもの |
農産資源 | 稲わら、もみ殻、麦わら |
バイオマス発電のメリット
バイオマス発電では、FIT制度の恩恵や安定性など、たくさんのメリットがあります。
それぞれ詳しく解説して見ていきましょう。
FIT制度の対象になっている
バイオマス発電は日本政府が推進しているので、FIT制度(いわゆる固定価格買取制度)の対象になっています。
燃料や発電方式によって買取してもらえる価格が違うので、1kwhあたりの調達価格の一覧表を確認してみましょう。
調達区分 | メタン発酵ガス化バイオマス | 未利用木材 | 一般木材 | 廃棄物系バイオマス | リサイクル木材 |
---|---|---|---|---|---|
税込価格 | 40.95円 | 33.60円 | 25.20円 | 17.85円 | 13.65円 |
税抜価格 | 39円 | 32円 | 24円 | 17円 | 13円 |
調達期間 | 20年 | 20年 | 20年 | 20年 | 20年 |
既存の発電設備を活用できる
バイオマス発電は、火力発電の一種です。
そのため、バイオマス発電をこれから始めようとなっても、新たに発電所を建設する必要はありません。
例えばどこかに現在使われていない火力発電所があれば、そこをそのままバイオマス発電所として使えます。
既存の発電設備を活用できるメリットは、下記のとおりです。
- 新たに発電所を作る必要がない
- 少ない設備投資だけで発電を開始することができる
安定的に発電できる
バイオマス発電は、天気に左右されずに安定的に発電できることが大きなメリットです。
発電方法 | 天気 |
---|---|
太陽光発電・風力発電 | 左右される(天気が悪いと発電されない) |
バイオマス発電 | 左右されない(天気は関係ない) |
バイオマス発電では、燃料さえあれば安定的に発電できます。
電気の使用料に応じて燃やす燃料の量を調整して発電量を調整できるのは、再生可能エネルギーの中でもあまりない特徴です。
未利用資源や廃棄物を燃料にできる
バイオマス発電では、使われない資源や廃棄されるものを燃料にして発電ができるので無駄がなく効率的です。
例えば家を建てるときに使われる高級木材を育てるためには、枝の間引きをして木の数を調整し、木材が成長するために必要な栄養が十分に行き渡るように育てる必要があります。
そうして手塩にかけて樹木を育てたとしても、中には十分に成長しておらず、建築用には適さない木材も一定数出てきます。そういった建築木材としては利用価値のない資源や、世の中で一般的にはゴミとして廃棄される廃材がバイオマス発電では貴重な燃料になります。
ゴミをただ捨てるのではなく、そこから電気を発電し役立てることができるので非常に効率的です。
燃料資源を国内の林業から供給できる
バイオマス発電に必要な燃料を海外から輸入するのではなく、国内で供給することができればかなりコストを抑えて発電できます。
実際問題として、国産の木材にはまだ余力があります。しかし、 日本は現在、少子高齢化による後継者不足により林業は衰退し、それに伴って山林は荒廃しているという問題が発生しています。
一方、バイオマス発電は国内で生産される木材を燃料として利用できるので、バイオマス発電のために資源を海外から輸入しなくて良いので、とても効率的に電力を生み出すことが可能です。
例えば新築で注文住宅を建てる際、どの木材を使うかで建築価格が大きく変わります。
下記の表を見れば、なぜ日本の国産木材が使われずに余っているかが分かります。
仕入れ先 | 木材の価格 | 木材の種類 | 建築価格 |
---|---|---|---|
日本国内 | 高い | 杉、ヒノキ、栗、ケヤキ、白樺、ブナ | 建築価格が高額になる |
海外から輸入 | 安い | パイン、ベイスギ、ベイマツ、バーチ、メープル、オーク | 建築価格を安く抑えて、オプションに予算を回せる |
注文住宅を建てる際にはどうしてもキッチンや洗面所、お風呂などたくさんのオプション費用がかかります。
打ち合わせをしていると、「できるだけ広く大きな家を作りたい」と言う希望もあるので、建築費を抑えたいと言う気持ちになります。
そうなると、どうしても国産の木材を使うよりも海外から輸入した安い木材を使って家作りを進めることが多くなります。
限られた予算の中で家作りを進めるために、妥協できる部分は妥協していかなければならないという実情があるのが現状です。
その結果、「安い海外の木材>国内で採れた木材」といったニーズの方程式が出来上がります。
発電時に発生する熱を有効活用できる
バイオマス発電は火力発電なので、電気と熱を生み出します。
この発電時に生まれる熱には、下記のような利用方法があります。
- お湯を沸かす
- 温度調節をして植物栽培に生かす
どちらも資源不足に悩む人類にとって価値ある内容のため、熱という資源を活用できることは大きなメリットだと言えます。
カーボンニュートラルである
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする活動です。 排出せざるをえなかった分については、同じ量を「吸収」または「除去」することで、差し引きゼロを目指します。
二酸化炭素は温室効果ガスの一種で、地球温暖化の原因として世界中で問題視されています。
そのため、バイオマス発電による、大気中に二酸化炭素を残さないカーボンニュートラルの状態は地球温暖化対策になるため、世界中が取り組むべき課題として望まれているのです。
CO₂の発生が実質ゼロになる
バイオマス発電で電力を生み出すと、CO₂の増減が実質ゼロになります。
バイオマス発電で資源を燃やすときにはCO₂が発生しますが、そのCO₂は資源となった植物が成長する間に吸収したものです。
つまり実質的にはCO₂の発生量は、±0ということになります。
地球温暖化対策に繋がる
バイオマス発電で木材などの廃材を利用して発電をすることは、地球温暖化対策に貢献をしています。
木材は二酸化炭素を吸収して光合成をすることによって成長しており、それを使って発電をすることはエコであることに加え、化石燃料を使って発電しないので結果的に地球上に排出されるはずだった二酸化炭素の量を減らすことにつながるためです。
山村地域の活性化に繋がる
バイオマス発電では、燃料として木材を使用します。
日本全国の山の中には、たくさんの使われていない間伐材が眠っていると言われています。
資源は豊富にも関わらず、その資源の使用があまり進んでいないことには理由があります。
- 少子高齢化に伴う林業の後継者不足
- 若者の林業離れが進んでいる
- 山で出た間伐材を山から運び出すには費用と人手が必要
上記の理由で、多くの間伐材は山の中に放置されています。
しかし、山の中に放置されている間伐材を発電所まで運ぶ費用や時間を考えると、なかなかそれらの間伐材をバイオマス発電に生かすことは難しい現状があります。
そこで必要になってくるのが、山村地域の人々の協力と連携です。
発電所と山村地域が連携して木材の調達から発電までラインを形成することで、山村地域の活性化にもつながります。間伐材の収集や運搬、加工、燃料として利用するまでをスムーズに行えるようにするためには、多くの人手が必要です。
地域環境の改善に繋がる
バイオマス発電は家畜から出る排泄物や生ゴミなどの悪臭が出る廃棄物を資源として電気を発電することができるので、地域環境の改善にも貢献できます。
例えば畜産が盛んな地域ではたくさんの糞尿や廃棄物が毎日出ますが、それらの処分に頭を悩ませている畜産家なども多いはずです。
それを一手に引き受けて発電所が燃やして発電をすることができれば、最終的には畜産で必要な電気を、糞尿を燃やして発電した電気でまかなうこともできます。
また、日々の生活で家庭から排出される生ゴミや悪臭が出る廃棄物を処分するコストも抑えることができるので、とても効率的なサイクル(=循環)が出来上がります。
バイオマス発電のデメリット
バイオマス発電はメリットが大きい発電方法ですが、デメリットが全くないというわけではありません。
木材資源の奪い合いに繋がる
木質バイオマス発電では木材を燃料として燃やすので、ほかの目的には使えない(=不要な)木材が使われるべきです。
しかし、電力の固定価格買い取り制度の設定価格が高すぎるために、本来ならほかに使われるべき木材であっても、事業者がバイオマス燃料として燃やしてしまうことが懸念されています。
結果として、発電以外の下記の様な用途で使われるべき木材をめぐって、取り合いが起こってしまう可能性が高いのです。
例えばバイオマス発電の燃料の奪い合いにより、下記のような資材が不足する可能性があります。
- 建築
- 家具
- 製紙
- 燃料(まき、木炭)
発電するためとは言え、別の用途で利用価値のある木材を燃料として燃やしてしまうのは勿体無いですよね。
資源を調達できる地域が分散している
バイオマス発電で使うバイオマスは、日本国内で調達できる資源です。
しかし、バイオマスは日本全国に点在していて、全てを発電所まで持ってくるのは一苦労です。
つまり下記のようなデメリットがあります。
- バイオマス燃料の収集・運搬・管理が必要
- 資源のある地域が分散している
- 人件費や運搬費用が大きくなりやすい
食糧不足に繋がる
バイオマス発電は世界の食糧不足の原因になるという指摘もあります。バイオマス発電の1つの方法として、トウモロコシやサトウキビなどの食料を燃料として燃やすことで発電できます。
たくさん燃やしてたくさんのお湯を沸かしたりタービンを回さないといけないので、燃料として使用する際には、たくさんの食糧が必要です。
発電にかかる高いコスト
木材を燃やすバイオマス発電は、ただ木材を持ってきて燃やせば良い訳ではないので、その前の準備に多くのコストがかかります。発電の前にどんな作業を実施しているのかご説明します。
木質バイオマス発電では、主に下記の様な工程が必要です。
- 木材を効率よく燃焼させるために乾燥させる
- 小さくチップ化したりペレット化したりする
- 木材を山から搬出する
- チップに加工して発電所まで輸送する
- バイオマス発電所で燃料として燃やす
このように、木材自体の値段以外の様々な部分でコストがかかります。
変換効率が悪い
バイオマス発電は、ほかの発電方法と比べて変換効率が悪いと言われます。
木質バイオマスのエネルギー変換効率は、熱を取り出して利用しただけの場合や、熱と電力の両方を供給する熱電併給の場合、75%程度です。
バイオマス発電の課題
バイオマス発電を今後展開していくにあたって、世間が懸念している事項を見ていきましょう。
国内で燃料資源を確保しきれていない
森林国家である日本ですが、林業の衰退やコストが高いことで、結局国内の山に眠っている木材資源を発電所まで供給することは難しく、供給量も少ない傾向にあります。
そのため、日本のバイオマス発電では、海外からの木質系バイオマス燃料の輸入に依存しているのが現実です。
コストと収益のバランスがとりづらい
バイオマス発電は、発電時にかかる費用と発電で得られる収益を考えたときに、なかなか黒字になりません。
例えば木材からチップを作って燃やして発電するケースと、化石燃料を利用した発電ケースを比べると、化石燃料の方がコスパが良いです。
そもそもバイオマス発電は国が進めるFIT制度ありきの事業であり、固定の価格で電力を一定期間買取してもらえるからこそ収益が発生するわけなので、その期間が終了する20年後にはそもそも事業として成り立たない可能性もあります。
そのため、FIT制度に依存せずに地域社会に貢献し必要とされる事業を追求する必要があります。
地域でバイオマス発電に必要な木質系バイオマスや畜産系バイオマスなどの燃料を調達し発電に必要なコストをできるだけ抑えることで、結果的に収益性を上げるというバランス調整ができます。
バイオマス発電の普及率
太陽光発電や風力発電はよく目にしますが、バイオマス発電は日本国内ではほとんど見かける機会がありませんよね。実際にどのくらいの普及率なのか、見ていきましょう。
国内エネルギーにおけるバイオマス発電の割合
火力発電や風力発電などさまざまな発電方法がある中で、バイオマス発電は約3%程の割合です。
環境エネルギー政策研究所が公表した資料で、資源エネルギー庁の公表する電力調査統計などをもとに作成したものによると、2019年時点で日本での発電の現状は下記の図のようになっています。
日本のバイオマス発電の新規導入量
バイオマス発電の新規投入量は年々増加していて、2020年度末には新機能導入量が既に250万kWを超えています。
今後も増加していく見込みであり、政府も強力に後押しをしています。
年度 | 新規導入容量(kw) |
---|---|
2017年 | 120万kw |
2018年 | 150万kw |
2019年 | 210万kw |
2020年 | 260万kw |
世界各国とのバイオマス発電導入量の比較
世界中でバイオマス発電が導入されています。その中で特にバイオマス発電をたくさん導入しているのは、「中国とアメリカ」です。
国際機関の分析によると、日本の再エネ導入量は世界で第6位であり、このうちバイオマス発電に限ると、世界で第7位となっています。
引用:資源エネルギー庁|持続可能な木質バイオマス発電について
日本国内のバイオマス発電の導入事例
日本国内では、どんなバイオマス発電所があるのでしょうか?
実際の導入事例をご紹介したいと思います。
別海バイオガス発電所
どこにあるか | 北海道野付郡別海町 |
運営会社 | 別海バイオガス発電株式会社 |
バイオマス燃料 | 家畜の糞尿 |
燃料の調達方法 | 地元の畜産農家 |
特徴 |
|
糸魚川バイオマス発電所
どこにあるか | 新潟県糸魚川市上刈 |
運営会社 | サミット明星パワー株式会社 |
バイオマス燃料 | 木質チップと石炭の混合燃料 |
燃料の調達方法 | 同じ敷地内にあり、隣接する明星セメントの糸魚川工場から出る木質燃料 |
特徴 |
|
吾妻木質バイオマス発電所
どこにあるか | 群馬県吾妻郡東吾妻町 |
運営会社 | 株式会社吾妻バイオパワー |
バイオマス燃料 | 木質チップのみ |
燃料の調達方法 | 建築廃材や、間伐材、剪定枝などを調達 |
特徴 | 廃木材・剪定枝など、木質チップ専焼の発電所 |
バイオマス発電の将来性
バイオマス発電は将来性のある事業ですが、そのコストの高さや発電効率の低さから日本国内で主力の発電方法にはなりません。
しかし、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの中では、抜群の安定性を誇ります。
木質チップや畜産バイオマスなど燃料さえ調達できれば発電することができ、その発電量をコントロールできるメリットを活かして、天気に左右されずに発電量を調整するという役割を果たすことができます。
2019年ではバイオマス発電の割合は2.7%でしたが、日本政府の目標値としては2030年に3.7から4.6%まで増加させることです。
日本政府も目標値を上げていることからも、今後も日本の電力の供給において縁の下の力持ちのような存在として支えていく存在になると思われます。
バイオマス発電の大いなる可能性
バイオマス発電には、大きな将来性があります。
バイオマス発電は発電以外にもメリットが多いため、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。
特徴 | 詳細 |
---|---|
天気に左右されない | 太陽光発電や風力発電と比べ、天気の影響がなく、安定して電力を供給できる。 |
地域経済の活性化に貢献できる |
|
コスト解消が今後の見通しを明るくする鍵
バイオマス発電では、コストの問題が一番大きいです。
いかにバイオマス発電をするための燃料である木質チップや、畜産バイオマスなどの燃料を安く低コストで調達できるかが鍵になります。
最近では技術が発展し、「どんな木でも燃やせるプラント」なるものも出てきているようです。
これまではバイオマスを燃やすプラントでは燃料に制限があり、使いたい木材があったとしても、それに対応できないケースが多かったのです。
ただ、今後は、「どんな木材でも燃やすことができる」といった革新的な技術が確立されればコスト問題も解消できるので、結果として地球環境だけでなく国内の地域経済にとっても理想の発電方法として、バイオマス発電がますます発展していくと思います。
バイオマス発電の基礎知識を簡単に解説
バイオマス発電について、更に理解を深める内容をまとめました。
それぞれ簡単にまとめましたので、ひとつずつ確認して見聞を深めましょう。
バイオマス発電の種類
まず前提として覚えておいていただきたいのが、バイオマス発電は火力発電の一種です。
先ほどご説明したバイオマス燃料を燃やすことで発生する水蒸気やガスを使って、発電所内のタービンを回して発電します。
バイオマス発電は、3種類の方式に分かれています。
名称 | 概要 | 使用する燃料 |
---|---|---|
直接燃焼方式 | 木材などを燃やして水を沸騰させて、発生した水蒸気でタービンを回して発電する方式。
もっともスタンダードな方法。 |
|
熱分解ガス化方式 | 木材などを高温で熱したときに発生するガスを燃料にして、ガスタービンを回して発電する方法。直接燃焼よりも無駄が少ない。 |
|
生物化学的ガス化方式 | 下水汚泥や家畜の糞尿などの発酵しやすいものを利用してメタンガスを発生させ、ガスタービンを回して発電する方法。 |
|
バイオマス発電で発電する仕組み
バイオマス発電は、下記の流れで電力を発電します。
- バイオマスを燃やす
- 熱やガスを取り出す
- それらを使ってタービンを回して「電気」や「熱」を作り出す
通常の火力発電ではガスや化石燃料を燃やして発電をしますが、そうするとたくさんの二酸化炭素が発生します。
それに比べて、バイオマスは燃焼しても発生する二酸化炭素の量はとても少ないので、同じ火力発電でも自然に与える悪影響が少なく、地球環境にやさしい発電方法となっています。
バイオマス発電の歴史
ではバイオマス発電っていったい、いつ頃から始まったのでしょうか?
ここではその歴史について触れたいと思います。 時系列にまとめてみました。
年代 | バイオマス発電の歴史 |
---|---|
1960-1970年代 | アメリカで林業で発生した大量の廃材を利用して発電開始 |
1973年 | オイルショックにより化石燃料に依存した経済からの脱却を目指す動きが活発化して、バイオマス発電が注目される |
1980-1990年代 | 地球温暖化問題が加速し、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーの導入がすすむ |
2000年ころ | ヨーロッパを中心に、バイオマス発電がさらに加速 |
2002年 | 日本でも、バイオマスの活用推進に関する具体的取組や行動計画を「バイオマス・ニッポン総合戦略」として平成14年12月に閣議決定。 |
2006年 | 上記の戦略の見直しと改訂がされる |
2012年7月から | 「固定価格買取制度(FIT制度)」の対象となったことで、安定的に運転できる再生可能エネルギーとしてさらに導入が進む。 |
元々はアメリカで、「林業や建築で発生する廃材や不要になったものを燃やして発電すれば良いんじゃないか?」という発想からバイオマス発電は始まりました。
ただ、その後はオイルショックや地球温暖化問題などに直面したことがきっかけで、世界的に化石燃料に依存した地球環境に悪い発電方法が見直され始めました。
その後は徐々に、太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーを使った発電が主流になりつつあります。
日本国内でもそれらの情勢を踏まえて、「固定価格買取制度」などを導入したことで収支計画ができるようになったことでバイオマス発電を事業として行えるようになりました。
バイオマス発電発電の燃焼方式
バイオマス発電が燃料を燃やす方法にも複数あります。それぞれ特徴がありますので、詳しく見ていきましょう。
直接燃焼方式
燃料 | 木材 |
発電方法 | 水を沸騰させて水蒸気でタービンを回す |
特徴 |
|
熱分解ガス化方式
燃料 | 木材 |
発電方法 | 木材を熱処理して発生したガスでタービンを回す |
特徴 |
|
生物化学的ガス化方式
燃料 | 下水汚泥、家畜の糞尿 |
発電方法 | 燃料を発酵させてメタンガスを作りタービンを回す |
特徴 |
|
バイオマス発電の燃料の種類
バイオマス発電をするためには、化石燃料以外の生物由来の資源を調達する必要があります。
具体的にどんなものがバイオマス発電の燃料として使われているのか、ご紹介いたします。
木材
- 間伐材
- 建築廃材
- 山で木を切った際に捨てられていた枝や
- 小さな木端材
などの木材が燃料となります。
燃料となる木材は天日干しで乾燥をさせて、その後チップやペレットなどの形に加工をして、燃やした時に安定して燃える状態にしてから燃料として利用するケースが一般的です。
木材と石炭の混合燃料
主に石炭を使って発電をする、火力発電所で採用されている方法です。
石炭での発電はCO2の排出量が多いので環境に悪いと指摘が入ったことにより、最近では火力発電所で燃料を木質のバイオマスに置き換えていく動きが活発化しています。
現時点で発熱量の1/4程度までは実証されているので、今後ますます石炭からバイオマスへの置き換えが進んでいくことが予想されます。
下水汚泥・家畜糞尿・生ごみ
- 下水を処理する際に出てくる汚泥
- 家畜が毎日出す糞尿
- 家庭から毎日出る生ゴミなどの廃棄物
などの、本来であれば廃棄物となるものが燃料となります。
単純に廃棄するにも莫大なコストがかかるので、廃棄と同時に熱やガスを発生させ発電をすることができるという一石二鳥の燃料です。
発酵させるとメタンガスが発生するので、そのメタンガスを使ってタービンを回して発電をします。
廃油
毎日飲食店やレストランなどで唐揚げや天ぷらなどを揚げる際には、多くの廃油が出ます。その量は1日で数百トンとも言われており、ひとつの環境問題にもなっています。
それらの廃油を集めて精製し、バイオマス発電の燃料として燃やすことで電力を生み出すことが可能です。
パームヤシ殻(PKS)
パーム椰子の実からパーム油を取ったあとに残るのがヤシの殻です。
殻にも脂分が残っているので、平均的な木材と比較してよく燃えます。 国産の木材はバイオマス資源として供給が不足しているため、アジア地域から安定的に輸入することができるパームヤシの殻は注目を集めています。
バイオマス発電は問題点もあるが可能性に溢れた発電方法
バイオマス発電には、コストの問題や効率の問題など多くの課題があります。
一方で、燃料の調達さえ上手くいけば、可能性にあふれた夢のある発電方法でもあります。
現在世界中で問題になっている異常気象や台風、ハリケーンなど、天気は予想ができません。太陽光発電・風力発電・水力発電などの再生可能エネルギーは低コストで安全に運用できることがメリットである一方で、天気に大きく左右されてしまいます。
このバイオマス発電は燃料を燃やして発電するものなので、天気に左右されず安定的に電力を供給することができますし、調整電力という役割で、今後もなくなることはないと考えれます。
技術の発展とともに、バイオマス発電も今後更に普及していく可能性が高いでしょう。