「太陽光発電で売電できなくなる」と書かれたブログ記事を見つけ、「本当に売電できなくなるの?」と不安に感じている人も多いことでしょう。
ブログやSNSでは「太陽光発電に未来はない」といった書き込みも見られ、今後の運用に疑問を抱かずにはいられませんよね。
本記事では、太陽光発電は売電できなくなるのか?といった内容について、踏み込んで見ていきましょう。
太陽光発電が売電できなくなる?
太陽光発電で電気を発電しても、電力会社に買取されなくなるという噂があります。
しかし、実際に売電できなくなった事例はありません。
固定価格買取制度が始まった2012年当初は、卒FIT後にも売電が継続できるかが不明確だったので不安の声が広まって噂になったと推測するのが有力です。
卒FITした11年目以降の太陽光発電の活用方法を解説していきます。
まずは売電できなくなるという噂の詳細を説明します。
2019年からFITが終了する人たちが出た
2012年7月に固定価格買取制度が開始する前に、2009年から2012年まで太陽光の余剰電力買取制度がありました。
余剰電力買取制度でも電力の買取期間は10年間のため、2019年からFITが終了する人たちが出てきています。
買取期間が終了した後に何も手続きを行わなければ、新しい単価を適用して売電が継続されます。
売電できなくなるという噂に根拠はない
2019年以降に売電ができなくなるという噂があったようですが、2024年11月現在でも卒FITした人も売電はできます。
2009年当時に太陽光発電を導入した人の固定単価は48円で、2022年の10kW未満が固定単価17円と比べると2.5倍以上の単価でした。
卒FIT後の電力の買取価格は電力会社によって違いますが、7円~11円の間くらいで設定されています。
固定単価48円がいきなり一桁台の単価に下がるのは想像が付きにくく不明点も多かったので、「売電ができなくなるのではないか」という憶測が広まったのが噂の真相と言えるでしょう。
太陽光発電の卒FIT後(10年後)の運用に関しては、下記記事も参考にしてください。
卒FITの時期を把握する方法
太陽光発電で固定価格での買取制度の適用がいつまでなのかを確認する方法は、複数あります。
考えられるのは、次のような方法です。
- 電力会社による通知
- 購入時期から算出
それぞれどのように確認したら卒FITの時期を把握できるのかを解説していきます。
電力会社による通知
卒FITの時期が近付くと、電力会社からお知らせが届きます。
固定価格での買取が終了する日の4ヶ月~6ヶ月前に通知されるのが一般的です。
また、売電を開始した際の契約書や電気料金の検針票でも確認できます。
購入時期から算出
太陽光発電システムを設置して売電を開始した時期から、卒FITの時期を自分で計算できます。
電力会社との契約書や検針票で売電を開始した日を確認すれば、10年になる時期がすぐに分かります。
通知方法は要確認
FIT満了の通知方法は、電力会社によって違っています。
書面の郵送または登録しているメールアドレスに通知されるのが一般的です。
自分が契約している電力会社からどの方法で通知されるのか、卒FITを迎える前に確認しておくとお知らせを見逃さずに済むでしょう。
太陽光発電の売電価格は下落している
固定価格買取制度での太陽光発電の電力の買取価格は、毎年下がっています。
制度が始まった2012年当時は、再生可能エネルギーを広く普及させることが課題だったためFIT単価が高く設定されました。
その後、太陽光発電の普及が進むのを見越して段階的にFIT単価を下げていくと最初から決まっていたので買取価格は値下がりしているのです。
引用:みんなの太陽光発電
この章では、FIT単価の推移と、単価が下がっていく理由の詳細について解説していきます。
売電単価は半額以下に落ちている
固定価格買取制度による太陽光発電のFIT単価は、毎年金額が下がることになっています。
容量10kW未満の家庭向けの太陽光発電設備の2012年のFIT単価は、42円。2023年度は、16円です。
11年間で毎年2円~3円程度単価が下がってきて、半分以下の金額になりました。
下記の記事では、東京電力の売電価格を紹介しています。併せて参考にしてください。
下落理由は設備コストが下がったから
FIT単価が下がっているのは、太陽光発電設備の購入価格や工事にかかる費用が下がっているからです。
なぜコストが下がったのかというと、太陽光発電の普及が進み設備の供給が増えたのでメーカーが量産できるようになり販売価格が抑えられるようになったことが理由です。
実際に、住宅用の太陽光発電の設置費用を含めた初期費用は2012年には1kWあたり46.5万円でしたが、2021年では28万円になっていると資源エネルギー庁が公表しています。
太陽光パネル価格1kW・4.5kWの価格相場は下記の記事でも紹介しているので、併せて参考にしてください。
市場の動向を見ながらFIT単価は下がっていますが、初期費用も抑えられているので売電収入で得られる利益には大きな差がないようになっています。
太陽光発電事業は将来どうなる?未来はない?
太陽光発電が今後どのようになっていくか予測をまとめました。
考えられる方向性は、次のとおりです。
- 投資対象として需要がある
- 設置コストはより安価になる
- 売電より自家消費が推奨される
今後の太陽光発電事業について詳細を説明していきます。
投資対象として需要がある
産業用の太陽光発電なら、投資対象になります。
固定価格買取制度が始まった2012年と比較すると、FIT単価は半分以下になっていますが、比例して初期費用のコストも下がっているので、初期費用を回収した後に売電収入で得る利益に大きな差がありません。
FIT単価が低くなっていてもトータルで得られる利益には差がないので、太陽光発電には引き続き投資対象としての需要があると言えます。
設置コストはより安価になる
太陽光発電の初期費用のコストは、今後も下がっていくと予想されています。
なぜなら、固定価格買取制度が始まった2012年以降太陽光発電のコストは、毎年下がり続けてきているからです。
原材料費が高騰しすぎることがない限りは大幅な値上げの可能性は低く、太陽光発電の設置コストはより安価になっていくでしょう。
売電より自家消費が推奨される
卒FIT後は、太陽光発電で売電収入を得るよりも自家消費が増えていくと予想されます。
理由としては、住宅用の太陽光発電は余剰電力のみが買取の対象で、FIT終了後に1桁台の単価で売電を継続するよりも自家消費を選択したほうが電気代節約のメリットがあるからです。
また、停電が起きても困らないように太陽光発電を導入して備えたいという考えも広まっています。
固定価格買取制度が終了したら?11年目以降の選択肢
固定価格買取制度で売電を開始して10年後にFITが終了した後の太陽光発電活用の選択肢を紹介します。
住宅用の太陽光発電の活用で考えられる選択肢は、次に挙げるとおりです。
- 売電を継続する
- 新電力会社へ売電を行う
- エコキュートを設置する
- 太陽光発電システムを買取業者へ売却する
それぞれ、どのように活用していくのか詳細を説明していきます。
売電を継続する
大手の電力会社への売電を継続することは、卒FIT後の太陽光発電の活用方法の一つになります。
なぜなら、卒FIT後に電気の買取価格が下がるとはいえ、大手の電力会社が廃業する可能性は極めて低く、急に売電ができなくなるといった心配が少ないからです。
売電を継続する場合の買取価格は平均して1桁台ですが、契約する電力会社で金額が違うので卒FIT後の価格を確認したうえで売電を継続するかの検討をおすすめします。
新電力会社へ売電を行う
卒FIT後に、新電力会社への売電に切り替えるのも11年目以降の太陽光発電の活用方法です。
新電力とは、2016年の電力自由化から電力事業に参入した事業者を指します。
大手電力会社と比べると売電単価が高い傾向にあります。
電力会社 | FIT終了後の買取価格 |
---|---|
東京電力 | 8.5円/kWh |
一条でんき(新電力) | 11.0円/kWh |
新電力では、蓄電池を導入していたら買取価格の単価が12円になるケースもあるので、利用しやすい新電力を探してみると良いでしょう。
なお、新電力について調べていると「やばい」といった口コミが出てくるケースがありますが、その噂の真相については「新電力はやばい会社ばかり?」の記事にて紹介しています。
自家消費に切り替える
太陽光パネルで発電した電気を売電せずに自家消費に切り替える方法もあります。
住宅用の太陽光発電で売電できるのは余剰電力のみのため、電気料金が高騰している状況では自家消費のほうがお得です。
蓄電池も導入すれば日中に貯めた電気を夜間に利用できるようになり、より電気代が節約できます。
エコキュートを設置する
太陽光発電でFIT単価での売電が終了した11年目以降にエコキュートを設置するのもおすすめです。
エコキュートとは、空気を利用して熱を作りお湯を沸かす家庭用の給湯器で、毎日夜間にお湯を沸かしてくれます。
昼間に太陽光で発電した電気を蓄電池に貯めておいて、夜間に蓄電池の電気を使ってエコキュートでお湯を作れば電気代が減るだけでなく環境にもやさしい電気を利用できます。
ただし、エコキュートのお湯を使い切ったら次にお湯が作られるまで水しか使えないので適切な容量を選ぶことが大切です。
「エコキュートはやめとけ」といった声もあるので、参考にするといいでしょう。
太陽光発電システムを買取業者へ売却する
産業用の太陽光発電の場合は、設備と土地を業者に売却する方法もあります。
住宅用の太陽光発電の場合は屋根から設備を取り外して売却したり、住宅ごと売却したりすることもあります。
既に売電をしている太陽光発電設備は、利回りの計算がしやすいなどのメリットがあるので中古物件の買い手が見つかりやすいです。
太陽光発電を自家消費にするメリット
この章では、太陽光発電を自家消費に切り替えるメリットについてまとめています。
自家消費にするメリットには、次のようなことがあります。
- 環境保護につながる
- 電気料金の節約になる
- 災害時の備えになる
- 補助金が利用できる
それぞれの詳細を解説していきますので、自家消費に切り替える際の参考にしてください。
環境保護につながる
太陽光パネルで発電するときに二酸化炭素を排出しないので、太陽光発電で電気を自家消費することは環境保護になります。
火力発電で発電をする際には、必ず二酸化炭素が発生します。
二酸化炭素は、地球温暖化の原因になっている温室効果ガスの一つです。
日本だけではなく世界中で二酸化炭素の排出量削減の課題に取り組んでいる状況ですので、太陽光発電の電気を利用することは環境保護につながっていると言えます。
電気料金の節約になる
太陽光パネルで発電した電気を自家消費すれば、電力会社から購入する電気量が減るので電気料金を節約できます。
現在の日本の電力の主力である火力発電は、電気を作るために必要な燃料のほとんどを輸入で賄っています。
世界情勢の影響を受けて燃料調達費が高騰すると私たちの電気代も値上がりするので、太陽光発電の電気を自家消費に回せば家計の負担を減らせるのです。
太陽光発電の自家消費への切り替えは、電気代節約という大きなメリットがあります。
災害時の備えになる
太陽光発電を住宅に導入していれば、地震や台風などの自然災害で停電が起きた場合に備えられます。
自立運転機能があるパワコンを導入する、または蓄電池と太陽光発電をセットで利用すれば停電で電力が供給されない場合でも電気を使うことができます。
停電中でもIHヒーターで調理ができたり、スマートフォンの充電ができたりするので安心です。
補助金が利用できる
太陽光発電の導入には、地方自治体の補助金を利用できます。
補助金が交付される条件や金額、申請期間などは自治体によって様々ですので利用したい補助金について公示されている情報詳細の熟読が必要です。
補助金は申請期間が2週間程度と短いことが多いため、決められた期間内に申請できるように前もって準備することをおすすめします。
自家消費にするデメリット
太陽光発電を自家消費に切り替える際にはデメリットがあることも忘れてはいけません。
考えられるデメリットは、次に挙げるとおりです。
- 費用がかかる
- 天気の良い昼間しか発電できない
どのようなことに注意が必要なのか、詳細を説明していきます。
費用がかかる
太陽光発電は、導入後にメンテナンス費用が発生します。
2017年に施行された改正FIT法で住宅用の太陽光発電にも定期的なメンテナンスが義務付けられました。
推奨されているメンテナンスの頻度は、導入から1年経過後に1回と4年に1回です。
メンテナンスは業者に依頼するので、費用が発生することがデメリットに感じる人もいるかもしれません。
しかし、定期的にメンテナンスを行えば機器の不調に早く気が付くことができ、手遅れになる前に対策ができるので機器を良い状態に保って効率よく発電を続けられます。
天気の良い昼間しか発電できない
太陽光発電は太陽の光が発電のエネルギー源になっているため、晴れた日の日中のみ発電します。
雨や雪、曇りなど日照時間が少ない天気の日は、日中でもあまり発電できません。
太陽光発電の電気を自家消費する場合、晴れの日が少ない梅雨の時期などに発電量が少なくなるのでデメリットに感じるかもしれません。
太陽光発電で10年後に損をしないポイント
10年間の固定価格買取制度での売電終了後、太陽光発電で後悔しないための方法があります。
太陽光発電導入の10年後に損をしない方法は、蓄電池を導入することです。
なぜ蓄電池を導入すれば損をしないのかを解説していきます。
蓄電池の導入がおすすめ
卒FIT後は、蓄電池を導入して太陽光発電との併用がおすすめです。
蓄電池は充電した電気を貯めておける電池のことです。
太陽光で発電した電気を蓄電池に貯めておけば、夜間でも太陽光発電の電気を利用できて電気代の節約になります。
自然災害などで停電が起きた場合も、蓄電池があれば電化製品を使えるというメリットがあります。
蓄電池を導入することがFIT期間終了後の太陽光発電で損をしないポイントです。
蓄電池は自家消費を加速できる
太陽光発電のみを導入している場合、電力を自家消費できるのはパネルが発電する晴れた日の日中のみです。
しかし、蓄電池もあれば晴れた日でなくても、夜間でも太陽光発電の電気を自家消費できるようになります。
蓄電池の導入は、太陽光発電の自家消費を加速させると言えます。
太陽光発電を安く導入するには補助金を利用しよう
引用:ソーラーパートナーズ
太陽光発電の導入には、国や自治体から交付される補助金を利用できる可能性があります。
国からの補助金では、太陽光発電単体への補助金は終了しています。
しかし、蓄電池とセットなどの条件付きの補助金が2022年度には交付されていました。
2022年度に東京都が交付した「太陽光発電設備の設置に対する東京都の助成事業」の事例を紹介します。
対象 | 補助金額 |
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新築住宅 | 12万円/kW(上限36万円) |
既存住宅 | 15万円/kW(上限45万円) |
東京都以外の地域でも補助金が交付されていますので、お住まいの地域の自治体のホームページをこまめにチェックしてみてください。
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太陽光発電が売電できなくなることはないが自家消費推奨
固定価格買取制度での電力の買取期間が終了した後も、電力会社への電力の売電は継続できます。
しかし、FIT単価ではなくなるので買取価格の単価は急激に1桁台に下がります。
初期費用の回収ができていれば、売電収入が大きく下がっても家計への影響は少ないでしょう。
地球環境への優しさや近年増加している自然災害への備えも含めて、太陽光発電と蓄電池をセットにしての自家消費がおすすめです。