ドイツは太陽光発電導入の政策に失敗したし、そもそも太陽光発電は問題点が多いから、太陽光発電はやめたほうがいいわよね?
太陽光発電の問題点の中には、誤った情報が拡散されているケースもあるの。わかりやすく解説していくから、事前に正しい情報をチェックして導入の検討や判断に役立てましょう!
太陽光発電の今後の課題9選
世界最大のサハラ砂漠を有するエジプトは、2035年までに再生可能エネルギーの比率を42%に引き上げることを目標にしており、国を挙げて太陽光発電の導入に力を注いでいます。
異常気象の原因の一つとされる地球温暖化や、世界情勢の影響を受け高騰を続ける電気代を鑑み、太陽光発電の導入を検討する人が増える一方で、日本では設置数の急激な増加による太陽光発電の様々な問題点が指摘されています。
電力需要と供給バランスの乱れ
電気を使う量(需要)と電気を作る量(供給)は同等でなければいけません。理由は、両者のバランスが崩れると電気の周波数に乱れが生じて停電の原因となるからです。
需要>供給 | 周波数が低下 |
---|---|
需要<供給 | 周波数が上昇 |
周波数の大幅な変動により電子機器に影響が出ると、最悪の場合、発電所が運転停止となり大規模停電を引き起こします。
しかし、2012年のFIT制度(固定価格買取制度)開始以降、太陽光発電所の数が一気に増えたことで、需要を供給が上回ると予想されるエリアが出てきました。
需要を供給が上回ると想定される場合に電力会社はまず火力発電の出力制御(抑制)を行い、揚水発電、バイオマス発電、太陽光発電の順で続きます。出力制御になると送電を停止されるため、売電を行うことはできません。
FIT(固定価格買取制度)単価の下落
年度 | 10kW未満 | 10kW以上250kW未満 |
---|---|---|
2012年 | 42円 | 40円+税 |
2023年 | 16円 | 9~10円 |
FIT制度では住宅用太陽光発電は10年間、産業用太陽光発電は20年間、設備設置年度の売電価格で電力を買い取ってもらえますが、ご覧のとおりFIT制度の売電価格は年々下がっています。
2023年では、2012年に比べて3分の1程度の目安となっています。
全量売電に関するFIT制度の改正
従来のFIT制度では10kW以上の太陽光発電では発電した電力は全量買取が適用されていましたが、改正により2020年度以降の10~50kW未満の太陽光発電には「地域活用要件」が設定され、電力の自家消費率が30%以上であることを条件に余剰買取へと変更されています。
30%を下回ると認定が取り消される可能性があるので注意してください。
また、災害時に太陽光発電を非常用電源として利用できように、自立運転機能が備わったパワーコンディショナーの導入などが必要になります。
太陽光パネルの大量の破棄・不法投棄
太陽光パネルの一般的な寿命は20~30年で、FIT開始当時に設置した太陽光発電は2030年頃にはパネルの寿命を迎え始めます。
環境庁によるシミュレーションでも、2030~2040年にかけて太陽光パネルの排出見込み量が跳ね上がる予想が発表されました。
借地を利用した太陽光発電は原状復帰が義務付けられており、空き地だった土地は空き地に戻す必要があるため、パネルの破棄や不法投棄は起こらないと見られていますが、問題は事業者が自身の土地を利用して太陽光発電を行っていた場合。
廃棄処理にかかる費用を抑えるために、太陽光発電設備を放置したり、山奥に不法投棄をする恐れがあると懸念されています。
太陽光発電の設置では、事業計画認定の許可を得るために廃棄にかかる費用の積立を計画に盛り込むことが必須ですが、計画のみに終わり積立を行っていない事業者が多いのが実情です。
大規模な発電所建設による土砂崩れ
一般的な目安として、産業用太陽光発電に必要な面積は以下のとおり。
システム容量 | 必要な面積 |
---|---|
10kW | 100㎡以上 |
100kW | 1,000~1,500㎡以上 |
1,000kW | 15,000㎡(3ha)以上 |
参照:環境庁
メガソーラーは広大な設置場所が必要となるため、平地に比べて安価な山林の土地を求める業者が多く、山林でもより安価な安全性の低い場所に手を出すこともあるようです。
山林で地滑りや土砂崩れが起こるのは、森林伐採により木の根が保っていた保水機能が失われてしまうことも一因。
利益優先の無計画な太陽光発電所の乱立が、近隣住民の安全を脅かしています。
環境庁の資料では、林地の斜面における事業用太陽光発電の設置で問題が起こりやすいことが示されています。
災害時の2次被害発生の危険性
台風や洪水などの災害により、太陽光発電が2次被害をもたらす例は以下のとおりです。
- 強風によって太陽光パネルが吹き飛び、近隣の建物や他人の所有物を壊した
- 太陽光パネルに降り積もった大量の雪が滑り落ち、近隣の建物や他人の所有物を壊した
- 水没した太陽光発電に接近・接触し、感電した
太陽光発電所による景観破壊
経済産業省の調査結果によると、大規模な太陽光発電所の設置による地域トラブルとして最も多く、さらに今後も発生が増えると懸念されているのは景観と分かりました。
自然が多い地域では美しい景観は観光客を呼び込む大事な資源であり、同時に住民にとっては誇りと言えるでしょう。
こうした豊かな自然の中に突如として人工建造物である太陽光発電が設置されることは、耐えがたいストレスと感じる人が少なくありません。
近隣住民とのトラブル
太陽光発電を設置した自宅から反射光が近隣の住宅に差しこんでしまうと、トラブルに発展する可能性があります。
また、パワーコンディショナーからは、電磁波やモスキート音が出ます。健康被害を懸念した近隣住民から苦情がくるリスクもあります。
施工不良による雨漏り被害
住宅用太陽光発電の太陽光パネルには屋根置き型が多く選ばれていますが、屋根置き型は屋根の上にパネルの架台を設置するので穴を空けることになります。そのため、雨漏りが起こる可能性が0ではありません。
ただし、適切な場所に穴を空け、しっかりと防水処理が施されていれば雨漏りを起こすことは稀です。
雨漏りが起こる主な原因は、相場よりも極端に工事費用を安く設定している施工会社による施工不良が多いです。
太陽光発電の課題の解決策
太陽光発電の問題に対しては様々な方法が試案され、実践されています。
太陽光発電の問題点の解決に向けて、今現在行われている取り組みは以下のとおりです。
国や自治体による補助金制度を充実化させる
2023年現在の国からの補助金には「ZEH住宅」や「LCCM住宅」の支援がありますが、対象となるのは基本的にはこれから新築住宅を建てる人のみ。
また、経済産業省が管轄するsii(一般社団法人環境共創イニシアチブ)では、DER補助金が公募があります。国からの補助金については、経済産業省資源エネルギー庁の各種支援制度を参照にしてください。
自治体の補助金制度は各自治体のホームページで確認できますが、太陽光発電設置を多く手がけている販売業者や施工業者では補助金制度に詳しい人もいるので、相談するのもおすすめです。
今後は補助金やFIT制度に頼らない太陽光発電の利用を目指すことも重要でしょう。その指標として挙げられるのが「グリッドパリティ」になります。
「グリッドパリティ」とは、太陽光発電(再生可能エネルギー)による発電コストが従来の電力コストと同等もしくは安くなることを表すもの。2014年9月にNEDOが発表した定義は以下のとおりです。
グリッドパリティの段階 | 目標の目安 | 目標の電力コスト |
---|---|---|
第一段階 | 家庭用電力(従量電灯)価格並み | 23円/kWh |
第二段階 | 業務用電力(高圧以上)価格並み | 14円/kWh |
第三段階 | 汎用電源(基幹電源)価格並み | 7円/kWh |
第一段階の家庭用電力においては2013年に達成されており、家庭用の太陽光発電であれば売電に頼らなくても自家消費による電気代削減で採算がとれる可能性が高いです。
業務用電力のグリッドパリティが達成されれば、太陽光発電市場の普及に政策や補助金の有無が必要なくなり、太陽光発電の設置が行いやすくなるでしょう。
メーカーの技術力を進歩させる
太陽光パネルを製造している各メーカーは、変換効率の向上を目標に研究・開発を進めています。
モジュール(※)の変換効率とは、簡単に言うと太陽光からの発電量を数値化したもので、数字が大きいほど多くの電力を生むことができます。
現時点で市販されている太陽光パネルの平均変換効率は15~20%。理論上では変換効率は30%が限界値とされていますが、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)では、2025年までに変換効率25%達成、2050年までには変換効率40%の達成を目標としています。
また、2017年には、神戸大学が変換効率50%の新型太陽電池構造を発表。製品化に向けた期待が寄せられています。
電力の自家消費を推奨する
太陽光発電の導入目的はここ数年で大きく変わり始め、これまでの「売電によって利益を得る」から「発電した電力を自家消費し、電力会社からの買電を抑えることで電気料金の負担を減らして節約に生かす対策」へとシフトされています。
太陽光発電に蓄電池をプラスして備えれば、太陽光発電で得た電力をさらに効率よく使うことができますし、災害時の非常用電源として利用ができます。
また、蓄電池がなくても、EVコンセントとEV(電気自動車)があれば蓄電池の代用として利用することも可能。日中に太陽光発電で得た電力を夜間に無駄なく使えるおすすめの方法です。
実際にEVを採用した方のブログをご紹介しましょう。
太陽光発電採用しました
リサイクル・リユースのシステムを確立させる
長く使用したソーラーパネルは、内部破損がなければ発電量は下がるものの、そのまま使うことができます。安い中古品として購入したい人と繋ぐ仕組みができれば、無駄な廃棄を減らすことができるでしょう。
また、太陽光パネルから取り出された金属やガラスは、新しい太陽光パネルに再利用することができます。
JPEA(太陽光発電協会)では適正処理(リサイクル)可能な業者を一覧で公表しており、こうした取り組みは全国各地で広がっていくものと見られています。
太陽光設備の放置や不法投棄を防ぐために、環境庁は使用済みの太陽光発電設備のリサイクル等推進に向けたガイドラインを作成しました。
太陽光パネルのリサイクルを義務化する、新しい法律の制定に動いています。
環境破壊を防ぐために中古発電市場を活性化させる
新たに大規模な太陽光発電所を建設すると、どうしても森林伐採などの問題が発生します。
そこで、環境破壊を防ぎながら太陽光発電を行う手段として、中古の太陽光発電の活用が注目されています。
中古の太陽光発電の投資で得られる主なメリットは、以下のとおり。
- 過去の発電量や売電収益を参考できる
- FITの売電価格が高い年度に認定されていれば、新規で太陽光発電を設置するよりも売電価格が高くなる
- 新設の太陽光発電は稼働までに1年かかるケースもあるが、中古発電所なら名義変更が終われば最短1ヵ月程度で売電収入を得ることができる
知識不足による誤った認識を訂正する
太陽光発電のシステムとして最も目につくのが太陽光パネルです。住宅用は屋根の上で載っているため、「隣の家が太陽光を始めたから、電磁波の影響が自分にもあるのではないか?」と心配する人もいますが、太陽光パネルからは電磁波は発生していません。
太陽光発電システムで電磁波を発生させるのはパワーコンディショナーになります。それでは、パワーコンディショナーは人に影響を与えるほど大量の電磁波を発生させているのでしょうか。
答えはNOです。
日本では「電気説部に関する技術基準を定める省令」により、200マイクロテスラ(μT)を基準に規制がかけられています。
パワーコンディショナーの電磁波は産業用の大きなタイプでも11.92マイクロテスラ(μT)。このデータは財団法人電気安全環境研究所(JET)の電磁界情報センターが、「太陽光発電システムから発生する静磁界と低周波磁界の測定結果」として発表したものになり、国際非電離放射防護委員会(ICNIRP)のガイドラインと同じもの。
ちなみに、JETが公表した住宅用パワーコンディショナーの電磁波は、最大で4.26µTです。
家電の種類 | 測定距離 | 電磁波の強度 |
---|---|---|
IH調理器 | 5~10cm | 27マイクロテスラ |
扇風機 | 0~20㎝ | 339~16.9マイクロテスラ |
ヘアドライヤー | 3㎝ | 2~50マイクロテスラ |
掃除機 | 20㎝ | 2~20マイクロテスラ |
冷蔵庫 | 30㎝ | 0.1~0.3マイクロテスラ |
身近に使っている電化製品の中には、パワーコンディショナーよりも電磁波の強度が大きいものもありますが、電磁波によって健康被害を被ったという話は聞きません。よって、太陽光発電による電磁波の健康被害は限りなく少ないと考えてよいでしょう。
また、太陽光パネルには有害物質が含まれていて、それらが流出することで健康被害が起こる可能性を指摘する人もいます。
太陽光パネルに含まれている主な有害物質は、以下のとおり。
- セレン
- カドミウム
- 鉛
災害等によって破損した場合は、自分で処理せず施工会社もしくは販売業者、各自治体の廃棄物処理係に連絡をしましょう。
自分で処理をしようとして誤って触れてしまったり、対応を誤ってしまうと大きな被害を発生させる原因になります。
しかし、太陽光パネルの適切な取り扱いを心得ておけば、有害物質がむやみやたらに流出することはありません。
実績十分の信頼できる業者を見つける
太陽光発電の導入は急いで一つの業者で決めるのではなく、十分な時間をかけながら無料の一括見積もりサイトを利用して複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
複数の業者を比較することで、相場に比べて費用がやたら高い(もしくは低い)悪徳業者が目に見えやすくなります。
また、太陽光発電の設置実績が多い施工業者は、太陽光に関する知識も豊富に持っています。太陽光発電は設置して終わりではなく、長期的に運用するもの。
相性が良く、信頼できる業者を見つけることが失敗を防ぐ大きな鍵になります。
太陽光発電における問題点
太陽光発電が抱える課題を無視して導入に踏み切ってしまえば、必ず後悔することになります。
太陽光発電を導入するときは、課題に対して十分な検討を行うことが大切です。
高額な導入コスト
太陽光発電は設置費用が高額のため、誰でも気軽に始めることはできません。
さらなる普及を目指すには導入コストの削減が必須ですが、実は太陽光発電の設置費用は年々下がっています。
年度 | システム容量1kWあたりの設置費用 |
---|---|
2012年 | 46.5万円 |
2023年 | 25.9万円 |
参照:経済産業省
また、研究によって明るい兆しも見え始めています。
2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授が発表した「ペロブスカイト太陽電池」は、材料を基板に塗るだけで太陽光パネルとして使用することができ、別名「塗る耐用電池」とも言われています。
現時点では実用化に至っていないものの、実用化されれば導入コストの大幅な削減効果が期待できるでしょう。
メンテナンスや機器の交換時に発生する管理コスト
太陽光発電の法定耐用年数は17年ですが、一般的な耐用年数は次のとおりとなっています。
設備名 | 耐用年数 |
---|---|
太陽光パネル | 20~30年 |
パワーコンディショナー | 10~15年 |
また、各メーカーの一般的な保証期間は次のとおり。
設備名 | 保証年数 |
---|---|
太陽光パネル | 20~25年 |
パワーコンディショナー | 10年 |
保証期間終了後に故障すると実費での修理となり、交換になると料金が高額となるため、管理コストを減らすには定期的な点検は不可欠です。
近年はこうしたユーザー側の意識の変化に合わせ、保証期間を有償で延長できるプランや万全のアフターサービスを提供するメーカーや施工業者が増えています。
発電が天候や気象条件に左右されてしまう技術面の問題
太陽光発電は、太陽の照射量によって発電量が大きく変わります。
自然を相手にしているためなかなか計算と同じにはならず、石油やLNGなどの化石燃料を使用して作られる電気に比べて不安定ですが、太陽光発電設備の技術の向上によって問題がクリアできる可能性はあります。
変換効率の高い太陽光パネルの開発や、蓄電池の導入は最たる例と言えるでしょう。
また、近年はため池の上に太陽光発電を設置するため池ソーラーが注目されています。屋根や地表に設置された太陽光発電は、夏場の高温時には発電効率が下がってしまいますが、ため池は水によって温度が下がるので発電効率が高い傾向にあります。
導入してから廃棄までの出口戦略を明確にする
太陽光発電における出口戦略には、大きく分けて以下の4つがあります。
- 卒FIT後に自由契約による売電の継続
- 卒FIT後は自家消費へシフトする
- FIT期間中もしくは卒FIT後に中古発電所として売却する
- FIT期間中もしくは卒FIT後の太陽光発電設備の撤去
1~2はFIT期間が終わっても太陽光発電を稼働させることになりますが、3~4は稼働にかかる費用は発生しなくなります。
1~2はメンテナンスに対してより重点的な計画が必要となりますし、3~4は短期間での撤去費用の積立をしっかりと行う必要があるでしょう。
出口戦略を明確にしておくことは、損失を最小限に抑えるためには欠かせません。
太陽光発電を普及させるには課題の解決が必須
社会的意義から太陽光発電の導入を行う企業が増えており、電力の自給自足に向けた動きは今後さらに大きくなるものと予想されています。
脱炭素社会の実現には、二酸化炭素の排出量を削減できる太陽光発電の活用が不可欠です。
また、災害大国日本において、蓄電池やEVとの併用で災害時の非常用電源として利用できるのは安心を得られる方法の一つと言えるでしょう。
「太陽光発電にして後悔した」「太陽光発電が普及しない理由」など、デメリットの情報が表立っていますが、太陽光発電が抱える問題点をしっかりと洗い出し、一つずつ解決していくことがさらなる普及には必要です。